あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.64 ホテルマン

インタビュー
インタビュー
「サービスに終わりはない!」 様々なお客様を迎えるホテル。
非日常的な空間と一流のサービスが売り物です。
今回の主人公は、北海道虻田(あぶた)町の高級リゾートホテルで働く、水村和弘さん(28歳)。テレビドラマ「ホテル」に憧れ、お姉さんの結婚式でホテルマンのかっこよさを目の当たりにし、この仕事に決めました。
ホテルに勤めて4年目、荷物を運ぶベルボーイやフロント業務を経験し、今年の4月から「コンシェルジュ」という職に就いています。「コンシェルジュ」とは、お客様のありとあらゆる要望に応えるサービスのスペシャリスト。食事の相談から誕生日など記念日のサプライズプレゼントの相談まで、どんなことでもOK。常に、さらに上のサービスを目指します。
コンシェルジュとなって半年の水村さんの仕事を通して、笑顔でお客様に満足と喜びを与える舞台役者、ホテルマンの仕事を紹介します。

常にお客から見られるホテルマンは、まさに舞台役者!“おもてなしの心”で魅了します。

■ ホテルマンとは? ■ ホテルマンになるには?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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 ホテルは建物や部屋など「ハード」が立派なだけでは一流のホテルとは言えません。働くホテルマンたちの「ハート」が一流でなくてはなりません。
 ホテルマンは、ホテルを舞台にお客へ究極のサービスを行うプロの集団です。
 「お客さまは何を求めていらっしゃるのだろうか?」などを、常にお客の表情を観察し、その佇まいから読み取ってゆくのが一流のホテルマンなのです。マニュアルは存在しますが、あくまで最低限で基本的なことばかり。マニュアルを超えたところにサービスの本質があるのです。
 お客の個性は十人十色で、求めるサービスも一人一人違います。それに十分に応えるには、何よりも、「ホスピタリティ(おもてなしの心)」が大切なのです。サービスは奥が深くて、「これでいい」という終わりはない!だからこそ、ホテルマンにとってお客様が満足するサービスを提供することはとても難しいことであり、それがホテルマンのやりがいなのです。
 「すべてはお客様の満足のために」という至上命題の下、ホテルには様々な職種があって、主に5つの部門に分かれて働いています。

1) 宿泊部門
お客様をお迎えする--フロント・ドアマン・ベルパーソン・コンシェルジュ・ハウスキーパー
2) 料飲部門
おいしさを演出する--シェフ・ウェイター・ソムリエ・パティシエ・バーテンダー
3) 宴会部門
華やかな空間を創造--ウェディングプランナー・レセプショニスト
4) 企画・営業部門
人の出会いを生み出す--企画・営業・マーケティング・広報
5) 管理部門
ホテルの運営を裏で支える--経理・人事・購買・施設管理

◇全国の状況・今の状況  全国にホテルは、8811軒あります。(2005年3月厚生労働省調べ)
 ホテルは、東京オリンピック以降、昭和40年代から建設ラッシュが始まりました。その当時、雇用された団塊の世代のホテルマンが退職し、今後人材が不足してゆくことなどから中途採用や新規採用が増えることが予想されています。また近年、新規の外資系大型ホテルチェーンが東京へ進出してきており、雇用は若干ながら増える傾向にあります。
 お客の動向としては、海外旅行などでリゾートホテルへ宿泊する人も増え、ホテルのサービスに対するお客の目も年々肥えてきており、ホテルに求めるサービスの質も高くなってきています。
 また、ホテル経営の業態は2極分化しています。高級志向のラグジュアリーなリゾートホテル・シティホテルが多くなる一方、エコノミーで宿泊のみに特化したビジネスホテルも増えてきています。
◇どんな人が向いてるの?  ホテルマンに向いている人は、「ホスピタリティー」の心を持っている人です。お客さまを思いやりの心を持って温かくお迎えする。他人の気持ちが良くわかり、「目配り」「気配り」「心配り」ができる人がホテル業界に向いているようです。
 また、笑顔が自然体で、つらい時であっても笑顔でいられ、お客に安心感を与えられる人材も求められています。
 さらに、スタッフ同士の連絡やチームワークも大切です。予約の時に伺ったお客の情報が変更になった場合、全スタッフが変更された情報を共有していないとトラブルが起こる可能性があるからです。
 また、コミュニケーション力も大切です。訪れるお客は、老若男女と年齢層も様々、どんな話題にもついてゆけるようにしなくてはなりません。そのため、常日頃から時事問題から最近の流行などいろいろなことに精通していることが求められます。さらに、外資系のホテルに志望する場合は、海外からのお客様が多いため語学力も必要となってきます。
 どの職業もそうですが、身体が資本です。ホテルマンは接客業、風邪をひいてお客様の前で咳をするなどもってのほか、睡眠不足も大敵で、あくびも当然、御法度です。目の下に隈を作って不健康そうな対応されるとお客も気分が悪くなってしまいます。ホテルマンにとって体調管理も大きな仕事なのです。
 後は、記憶力。お客の顔と名前・趣味などを覚えられることもとても重要です。ある伝説のドアマンは、1万人の顔と名前を一致させられると言います。お迎えする際、「○○様、いらっしゃいませ」と名前で呼ばれたら何とうれしいことでしょう。それこそが、ホテルマンのホスピタリティーなのです。
■ ホテルマンになるには? ■ ホテルマンとは?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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◇どうすればホテルマンに?  ホテルマンになるため特に資格などは要りません。
 ホテルでは、高校・専門学校・短大・大学卒業など様々な経歴の人が勤めています。就職活動では、入社試験があり、ホテルによって書類選考があるほか、筆記試験、面接があります。ホテル業界はお客と対面する仕事なので面接が必ずあり、人間性が重視されています。また、中途採用も多く(経験者優遇)他のホテルから移ってくる人も多いのが特徴です。サービスの基本を身につけておけば、どのホテルでも一定のサービスが提供できるからです。
 このようにホテル業界では、即戦力を求める傾向が強まっています。
◇ステップアップの道すじ  ホテルマンになったら、まずは、3ヵ月〜半年ほど研修を行うホテルが多いようです。ハウスキーパー(部屋を整える役)やレストランでの接客、ベルパーソン(お客の荷物を持ち館内を案内する役)などで基本的なホテルのサービスの心を学びます。研修後、それぞれ各職種へと配属になります。

ステップ1 研修(半年くらい)
レストランやコーヒーショップで接客体験。
ベルパーソンやハウスキーピングなども体験する事も多い
ステップ2 配属
宿泊部門か料飲部門に配属されるケースが多い。
宿泊部門では主に、ドアマン・ベルパーソン・予約係・フロントに配属。
料飲部門では、レストラン(調理・接客)・ウェディング・宴会に配属。およそ4年〜5年ほど様々な部門を異動してホテルマンとして経験を積んでゆきます。
ステップ3 配属
そして、これまで培った専門的知識をさらに深め、サービスの技能を持ったホテル職人<スペシャリスト>(シェフ・バーテンダー・ソムリエ・ドアマン・コンシェルジュ)へと進むのか?経営全般に携わるため営業・企画<ゼネラリスト>などバックヤードの部署へ異動するのか?の選択を迫られます。
さらに経営的なことを学び経験を積むと各担当マネージャーへと昇格してゆき、最後はホテル経営の頂点、総支配人となるのです。

また、ホテル業界は、同業他社への転職が多いのも特徴です。もちろん一つのホテルに留まって勤め上げる人が大部分ですが、ホテルマンとしてある程度経験を積んでから、新規に開業するホテルで新たに実力を発揮するために職場を変える人や、ホテルマンとしてスキルアップするため海外の一流ホテルに武者修行に出かける人も増えています。

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■ 収入・待遇は? ■ ホテルマンとは?■ ホテルマンになるには?■ 仕事の味

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◇収入のめやす 収入のめやす
大卒          17万5334円
専門・短大卒(2年制) 16万3334円
※ 水村さんが働くホテルの場合
◇ホテルマンのある一日

水村さんの一日(11月)
ある一日

担当する業務によって(ベルパーソンやフロント)、シフト勤務(早番・遅番・泊まりなど)場合があります。
◇生活サイクルと休日  基本的に週休2日ですが、土日はお客の入りが多いため中々休みを取ることはできません。また、ホテルの仕事は、年末年始・お盆など、人が一斉に休みを取る時が、最も忙しくなります。
 水村さんは、ホテルマンの仕事は健康第一で、体調が悪くてはいいサービスはできないと言います。休日は、身体を休めることが第1ですが、休日の2日のうち1日は、自己研鑽のため評判のレストランに出かけたり、観光名所にも出向くことにしているそうです。ガイドブックやインターネットには書かれていない情報を自分の目で確かめ、自分の体験を通し、お客様へ語り信頼を得るためです。

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■ 仕事の味 ■ ホテルマンとは?■ ホテルマンになるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  ホテルマンは、人と接する仕事ですので、当然ながら人から好印象を持たれる人が多いようです。働いているうちに自然と立ち居振る舞いが洗練されてゆき、基本的なマナーも身に付けることができます。
 さらに、美しい日本語、きちんとした敬語も話せるようになります。また、世界一流のVIPなどお客様をご案内することで、色んな事を学べる仕事です。
 人に尽くすことが好きで、人から喜ばれ感謝される事が自分の喜びと感じることのできる人にとってはこの上ない仕事になるのではないでしょうか?お客様の「ありがとう」の一言がなにより仕事の原動力になります。そして、人を笑顔にしてあげることによって、自分も笑顔になれる仕事。そして、お客様の笑顔を創造する仕事であるのです。
◇苦さ  ホテルで働く人は「苦情は宝物」といいます。時に、お客から予期せぬ苦情(コンプレイン)が出されることがあります。クレームを解決させるのは、お金や物ではありません。「誠意」です。あくまで解決させるのは人間同士の心の通い合い、苦情の対応に真摯に取り組む姿勢があって初めて、身にしみて苦情の本質が理解できるのです。若いホテルマンにとってはつらい経験ではありますが、その困難を乗り切ることで人生の糧になる場合も多くあります。
 水村さんも新人時代にお客様の荷物を他のお客様の荷物と積み間違えて、240キロ離れた場所まで受け取りに行ったこともあるそうです。以来、荷物の確認をするのはもちろん、荷物はお客様の財産でるという意識が芽生え、さらには「お客様が連れてきたこども」のように大切に扱うようになったそうです。

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NHK日本放送協会