あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑

no.45 獣医師

インタビュー
インタビュー
「ペットの生命を守りたい」 動物の無言のサインと飼い主の言葉、
そして自分の腕と経験を頼りに日々動物の命を救うべく、
診察にあけくれる動物のお医者さん=獣医師。

坂田敏次さん(31才・獣医師になって7年目)も子供のころからの夢を叶え獣医師として大阪府高槻市の戸田動物病院で働いています。出勤後すぐ入院中の動物の世話をし、午前の診療、昼の手術を経て夕方からまた診療、時には深夜の緊急手術が飛び込み、動物から離れることはありません。
動物が好きならできそうな獣医師の仕事ですが、最も大切なのは飼い主とのコミュニケーションを通じて、信頼関係を築いた上でペットの診察を行うことです。
空前のペットブームの中、ますますその重要性を増す獣医師の仕事。その魅力を日々悩み学び成長していく坂田さんの姿を通して描きます。

ペット、飼い主との三角関係の中で、時に笑い、時に悲しみ、そして真剣に治療に取り組む。

■ 獣医師とは? ■ 獣医師になるには?■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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 全国で獣医業に従事しているのは2万6千人(免許を持っている人はおよそ3万人)。獣医師というと町の「動物のお医者さん」を思い浮かべますが、そういった人たちは全体の半分弱。近いところでは動物園や水族館にも獣医師はいます。
 狂牛病や鳥インフルエンザなどここ数年話題に上がる家畜の病気を予防するために研究しているのも獣医師。食肉や牛乳、魚介類など私たちの口に入る食物の衛生面での安全を確保しているのも獣医師。動物用・人体用の薬を開発するための実験動物を管理しているのも獣医師・・・。活動分野は多岐に渡ります。
◇全国の状況・今の状況  今回番組で取り上げたのはイヌ・ネコなどの「小動物」を診る診療所。全国におよそ9000ヶ所あります。
 そういった診療所だけをみれば、近年女性獣医師の数が急激に増え、数年前に女性が男性より多くなったほど。よりセンシティブなネコの診察や細かい縫合が必要な手術は女性の方が向いているとも言われています。

 一方で、ペットブームによって病院は増えたものの、都市部では競争も激しく、経営が苦しい病院が多いのも現状です。
 開業医として、町で動物病院を経営するには、他の病院とは差別化したサービスや飼い主への丁寧な対応などが必要とされ、独自の経営センスも問われます。さらに必要なのが飼い主=人間への心遣い。これからさらに核家族化や高齢化が進むと、ペットに依存する人々が増えてきます。その中で動物の治療だけでなく、人々の心のケアもできる獣医師が求められています。

獣医系大学卒業者(平成15年度・1065人)の就業状況
イヌ・ネコなどを診る町の動物病院 ・・・47%
公務員(公衆衛生・農林畜産関係) ・・・16%
進学 ・・・8.5%
製薬食品関係の会社 ・・・7%
などとなっている。

◇どんな人が向いてるの?

(町の動物病院で働く獣医師について)

1)  とにかく動物が好きな人・・・当然です
2)  人と話すのが好きな人・・・ペットには必ず飼い主がいます。いかにコミュニケーションをとり、いかに動物の診察を円滑に、飼い主の気持ちに答えられる形で出来るかがこの仕事のポイントです
3)  相手の気持ちを考えられる人・・・ペットが病んでいる時の飼い主がどんな心境なのか、亡くなった時どう対処すればいいのか、常に飼い主の心情を考えながら業務をすすめなければなりません
4)  体力のある人・・・動物中心の生活。深夜から朝まで手術でそのまま診察ということもありえます。体力がなければやっていけません
5)  向上心のある人・・・例え診ていた動物が亡くなったり、飼い主にひどく攻められたりしてもクヨクヨしたりネガティブになったりせず、そのことを糧に「次」を考えられる人でないとこの仕事は務まりません


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■ 獣医師になるには? ■ 獣医師とは? ■ 収入・待遇は?■ 仕事の味

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1)  獣医学部のある大学(全国に16。国立10・公立1・私立5)に入学し、卒業見込みになるか、卒業する。 どの大学も偏差値が高めで大学によっては倍率が30倍以上の所もあります。大学に入ってからも勉強で非常に忙しく、高学年になるほど専門化していきます。
2)  獣医師国家試験(毎年3月)
国家試験は学説に関する試験と実地に関する試験があり、毎年1回3月に2日間で行われる。合格率はおよそ85%。
3)  合格したら農林水産省に資格申請
4)  獣医師医免許取得!獣医師に!
◇ステップアップの道すじ  動物病院に勤務する場合、一般的には町の動物病院でその病院の院長による面接を受け、採用が決まります。その後、勤務医として働き、経験・技術を積み、人脈を作り、金銭的に可能ならその時点で病院をやめて開業する場合が多いです。開業には一般的に数千万円の資金が必要といわれます。
 しかし、最近は町の動物病院で働く獣医師のおよそ半数が女性になり、開業医にならず、子育てなどをしながら勤務医として10年も20年も勤める人が増えてきました。昔は開業医になって一人前といわれていましたが、現在は必ずしもそうとはいえないようです。
 また、日本で5年〜15年働いた後アメリカに留学し、日本より進んだ獣医学を学び、再び日本に戻って獣医師として働くという人も増えています。
 勤務医であれ開業医であれ留学の経験であれ、とにかく獣医師は日常も含め全てが勉強の連続です。特に、全国で獣医師が有志で作った団体がおのおので主催する勉強会には、地域の多くの獣医師が参加。病院では学びきれないことを診察終了後、深夜まで学びます。

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■ 収入・待遇は? ■ 獣医師とは?■ 獣医師になるには?■ 仕事の味

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◇収入  個人経営の動物病院の場合、勤務医で初任給約20万〜25万円+手当
◇獣医師(坂田さん)のある一日  一日ほとんどを動物病院ですごす獣医さん。生活は動物中心に回ります。

ある一日

◇生活サイクルと休日(坂田さん)  休みは基本的に土曜の午後と日曜日。それ以外の日は病院の混み具合によって決まります。時には夜通し手術をすることもあります。
 ただ、関西では特に、動物専用の夜間病院が発達しており、緊急の場合基本的にはそちらに運ばれるようになったため、深夜に緊急でペットが担ぎ込まれ手術をすることは減ったそうです。
 動物病院が最も忙しいのは、フィラリアや狂犬病の検査、予防注射のある三月〜五月にかけてです。

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■ 仕事の味 ■ 獣医師とは?■ 獣医師になるには?■ 収入・待遇は?

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◇おいしさ  大好きな動物と常に一緒。
 怪我や病気のペットが治療の末、元気になったときは当然嬉しい。たとえ結果としてペットが亡くなるようなことがあっても、獣医師が飼い主との間で信頼関係を築いた上でしっかり治療をした末のことであれば、飼い主さんも納得してくれ、最終的には「ありがとう」と言ってくれるそうです。
 そして、飼い主さんが、その悲しみを乗り越えて、新たなペットを飼い、自分の動物病院に又、診察に来てくれた時がもっとも嬉しい瞬間といいます。
◇苦さ  動物中心に動く生活。睡眠・休憩を思った通りにはとれません。また、どうしても動物に感情移入するため、亡くなった時はやはり辛いです。
 そして自分の子供、孫のようにペットを扱う飼い主の中には獣医師に対して異常につっかかってくる人もいるそうです。そういった人と、疲労困憊している時につきあうのは非常に辛いものです。
 しかし、ペットをつれてくる飼い主あっての動物病院。その苦さに耐えて、日々の業務に打ち込まなければなりません。

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NHK日本放送協会