江戸時代から受け継がれてきた“寄席文字”は、落語家の名前や演目を書くときなどに使われる太くて大きい文字。客席が埋まるようにと、紙一杯に書く縁起のいい文字だ。橘吉也さん(27)は、そんな寄席文字の職人。文字に限らず、文字の背景のデザインや挿絵も手がけている。
幼い頃、地元の祭りで半てんやちょうちんに書かれた太くてかっこいい文字に一目ぼれした。大学に入ったものの、やっぱり伝統の文字の世界に入りたいと中退。6年の修業を経て、去年職人として一歩踏み出した。憧れの文字も書けるようになり、江戸・明治・大正の文化についての資料をかき集め、伝統的な図柄の意味なども暗記。ありとあらゆる「伝統」の知識を身につけた・・・が、師匠の橘右之吉さんからは「伝統にこだわらず新しいスタイルを求めよ」と言われている。でも「伝統」の世界で新しさってどうすれば見つかるのだろう・・・。
そんな吉也さんに、この冬、大きな仕事が舞い込んだ。それは兄の経営する飲食店の看板の制作。ありったけの知識を投入したデザインを仕上げた吉也さん。しかし師匠に見せたところ、「まったく粋じゃない」とダメだし。頭を抱えた吉也さんは、一体どんなデザインにたどりつくのか?

1週間スケジュール

  • しごと
  • くらし
MON TUE WED THU FRI SAT SUN

7:00

8:00

9:00

10:00

11:00

12:00

13:00

14:00

15:00

16:00

17:00

18:00

19:00

20:00

21:00

22:00

23:00

24:00

1:00

2:00

3:00

睡眠

起床&仕事準備

自宅で作業

休憩

自宅で作業

夕食&風呂

自由時間

睡眠

睡眠

起床&仕事準備

自宅で作業

休憩

移動

神社で
看板等作成

夕食&風呂

自由時間

睡眠

睡眠

起床&仕事準備

自宅で作業

お客さんと打ち合わせ

休憩

移動

神社で看板等作成

夕食&風呂

自由時間

睡眠

睡眠

起床&仕事準備

自宅で作業

休憩

自宅で作業

夕食&風呂

自宅で作業

睡眠

睡眠

起床&仕事準備

松戸の事務所へ移動

休憩

事務所で作業

夕食&風呂

事務所で作業

睡眠

睡眠

起床&仕事準備

師匠の事務所へ移動

稽古

休憩

稽古

松戸の事務所へ移動

事務所で作業

夕食&風呂

自由時間

睡眠

睡眠

起床&準備

茨城へ移動

地元のお祭りに参加

移動

地元の仲間との集まり

帰宅

睡眠

13:30

常陸国総社宮での作業

しごと

トピック1

週の2日ほど、地元・石岡市の常陸国総社宮で仕事。祭事用の看板やポスターを描いている。神社には修業時代からお世話になっており、吉也さんにとっては大切な仕事。

×

12:00

昼食は落語を聴きながら

くらし

トピック2

昼食は落語を聴きながらとることが多い。大好きな古今亭志ん朝さんの落語を聴くと、午後の仕事もはかどるとか。

×

13:00

松戸の仕事部屋で作業

しごと

トピック3

仕事部屋として借りている一軒家は千葉県松戸市にある。この場所に借りた理由は、師匠のいる東京と地元・石岡市との中間点だから。立て込むと徹夜で作業も。

×

11:00

師匠のもとで稽古

しごと

トピック4

毎週土曜日は、東京にいる師匠のもとで稽古。寄席で使う“めくり”やポスターの製作、師匠の仕事の手伝いなどをしながら、師匠の技を受け継ごうと精進中。

×

11:00

茨城各地のお祭りに参加

くらし

トピック5

吉也さんは根っからのお祭り男。地元だけではなく、声がかかれば県内各地へ飛んでいき、お祭りに参加している。小学校に入る前から習い始めたお囃子の笛は、かなりの腕前。

×

15:30

地元の仲間たちとの集まり

くらし

トピック6

吉也さんは、地元の仲間と一緒に、常陸国総社宮の門に飾る提灯をボランティアで作り、奉納している。

×

今回のU-29へメッセージ

松坂 桃李さん

番組ナレーター

松坂 桃李

遺伝子レベルで伝統的なものが好き、という吉也さん。これまでの「U-29」の主人公たちは、アツくなれるものに出会うまで迷ったり、苦労したりするタイプの方が多かったので、そのブレのなさが新鮮でした。好きなものがはっきりしている分、6年もの修業に耐えるための原動力は十二分にあったようですね。でも、その“好きなもの”が既存のものであり、尊敬の念を持っているがゆえに、新しいものがなかなか生み出せないという難しさが出てくる。伝統の技術を受け継いだ上で、今度はパイオニアになって、新しいもの、時代に受け入れてもらえるものを生み出すのは、並大抵のことではないと思います。この道50年以上の師匠は「言われた通りにやっているようではダメ」とおっしゃっていましたが、僕には「センスを磨きなさい」という意味に感じました。それは自分の中のアイディアの引き出しを見つける作業なのではないかと思います。ギリギリの緊張感の中でなければ見つからない引き出しもあると思うので、どんどん責任を伴う難しい仕事をして経験を積んでいくしかないのかもしれないですね。僕たち役者の仕事と、そこは似ていると思いました。
「野郎の本箱」と師匠には言われていましたが、吉也さんの知識は、なかなかすごい!今度は、その知識を自分のものにして、いい塩梅で出せるようになるといいですね!

ディレクターMEMO

中尾 浩太郎

水戸放送局
ディレクター3年目

中尾 浩太郎

 「中尾さん、きょうグイグイ来ますね~」。吉也さんへのインタビューの最中、言葉につまると吉也さんがよく口にした言葉です。番組のテーマは、伝統文化が大好きな吉也さんが、どう自分なりの“新しさ”を見つけだしていくのか。ロケ期間中、折を見ては、彼の本音を聞きだそうと、あらゆる角度から吉也さんに質問していました。その過程の中で吉也さんがつぶやいたのが、番組にも出てきた「新しさって何でしょうね」という言葉でした。またあるときには「こうして取材を受けて初めて、自分のやっていることについて深く考えたかもしれない」とも。今回のロケは、吉也さんと取材者である私が一緒になって、師匠・右之吉さんから求められている課題の答えを見つけ出す挑戦だったのかもしれません。
 「野郎の本箱になるな」「余計なものをそぎ落としてこそ本物になる」「一番伝えたいことは何かを常に考えろ」師匠の言葉は、ディレクターである私にもグサッと突き刺さりました。番組に吉也さんの魅力を伝えたいと、なんでもかんでもエピソードを盛り込みたくなる度に、師匠の言葉が渋い声で脳内再生されました!
 職人もディレクターも同じ“モノを生み出す”仕事。根底にある哲学は、相通じるものがあるのだと実感しました。吉也さんも私もまだまだ駆け出し。これからもお互いに切磋琢磨していきましょう!!

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