求められるのは数秒の間でリアルよりもリアルを感じさせる表現 疾走感・躍動感ある番組のアタマとしてもり立てる一助になれればと思っています。映像デザイナー・ディレクター 柴田寛之

追跡を支えるプロフェッショナル
「追跡!AtoZ」を支える人たちの想いを紹介していきます。
「追跡サポーター 02」は、番組のオープニングを制作した柴田寛之さんです。
現場の臨場感や取材の緊張感を伝えるために、20秒のオープニングにどんな思いを表現したのか?

要望は、「もっと、どろくさいまでの現場感!」そして、疾走感、躍動感。

ジョージ・クルーニーの動画がAtoZの居室で再生される。

オープニングをどうするか、一回目の打合せ。方向性を検討するために私が持ち込んだ、「オーシャンズ11」の予告編。様々な事例を見てもらいながらオープニングはどうあるべきか?議論は始まった。 9月25日のOAまで2週間と迫ったころでした。

皆さんから出てきた要望は、「もっと、どろくさいまでの現場感!」を出したいとのこと。
そして、疾走感、躍動感。スタジオを飛び出し現場を駆け回る鎌田さんを中心にした追跡者の姿をストレートに詰め込みたいというものでした。
ただ、鎌田さんにクルーニーばりの演技をしてもらっても嘘っぽくなり、真実を追及してゆく番組の趣旨を考えると適切ではない、かといって取材そのものの映像では生々しく、本編との差別化がしにくい。求められるのは数秒の間でリアルよりもリアルを感じさせる表現でした。

様々な意見が飛び交った後、全員一致で共感できたのが、スチルカメラ、つまり一瞬を切取った写真のほうが生々しさや嘘っぽさを感じさせずに、しかもリアルな雰囲気に対して多くを語っている印象を受けるというものでした。

コンセプトをより明確に伝える画の構成とリズム感

そこから話し合いは一気に加速。

取材、取材現場、取材者を徹底的に写真で抑えコマアニメのように繋ぐという手法でいくこととなり、その場で写真家の山崎エリナさんに電話、急な3日後の撮影依頼にも関わらず、運よくOKして頂け、2日後に撮影打合せ、どんな絵にしたいかという絵コンテを見てもらいながら、何とかイメージを共有してもらいたいとコンセプトを伝えました。
あとはままよ…

しかし山崎さんお見事でした。短い時間の打ち合わせだったにも関わらず、コンセプトをしっかりとらえて頂き、現場の臨場感や取材の緊張感が伝わってくる写真群を送って頂き感動しました。
取材する鎌田さんの表情、特に目ヂカラがリアルで素晴らしく、クルーニーを超えてました。

どれも素晴らしい写真で20秒のオープニングに詰め込むのは心苦しい感もありましたが、コンセプトをより明確に伝える画の構成とリズム感から厳選、加工させて頂きました。
11月のリニューアル第一弾に向け、オープニングもさらに進化中ではありますが、疾走感・躍動感ある番組のアタマとしてもり立てる一助になれればと思っています。

追跡サポーター 02 映像デザイナー・ディレクター 柴田寛之

三重県出身。映像デザイナー・ディレクター。明治学院大学、桑沢デザイン研究所、イメージフォーラム映像研究所卒業。(株)NHKアートを経て、2001年よりフリーランス。
2003年、屋号を現在のnextname graphicsとする。NHKでは「長野オリンピック」「ニュース7」「NHKアーカイブス」「新日本紀行ふたたび」「日めくり万葉集」のオープニング・グラフィックデザイン制作等、様々な番組に参加させて頂いています。



真剣にどれだけ向き合っているかを伝えたい!! それには現場の目を撮るしかないと思い、無我夢中でその目を追いかけシャッターを切りました。写真家 山崎エリナ

追跡を支えるプロフェッショナル
「追跡!AtoZ」を支える人たちの想いを紹介していきます。
番組のタイトル映像で使われている「走る鎌田キャップ」の写真を撮影された、山崎エリナさんです。
国内外に熱狂的なファンを持つ新進気鋭の写真家は、「追跡!AtoZ」の世界をどう切り取ったのか?

追跡する真剣な眼差しを1秒も逃さないように狙った。いや、1秒たりとも逃したくなかった。こんな衝動ははじめてでした。

追跡!A to Zのタイトル写真を撮影するため、3日間取材に同行することになりました。初日、「おはようございます!!」と、追跡ワゴンに乗り込んだところから、鎌田さんをはじめ、スタッフの意気込みをビリビリと感じました。
鎌田さんの真剣な眼差しとスタッフの妥協しない貪欲さ、そこに心を動かされて、躍動感ある写真を一緒に走って無意識に切り撮っていました。

追跡する真剣な眼差しを1秒も逃さないように狙った。いや、1秒たりとも逃したくなかった。こんな衝動ははじめてでした。
いつもは心動かされた瞬間をたった1枚だけ切り撮るのが私のスタンス。でも今回は心動かす瞬間が重なって、連続してシャッターを切っていました。
自分の頭の中でこんなシーンを撮ればこの番組の魅力を数秒で伝えられるのではないか、と映画のコマを繋ぐように構成していたように思います。
走り抜けるシーンがあれば、この角度から足元の躍動感の連続、次は走り抜けるときの必死な顔、そして後姿に流れる景色・・・走る、走る。
ひとつのドキュメンタリー映画を作るかのように頭の中で描き出していました。

問題に立ち向かう厳しい視線の裏側には温かいものがあるのだと、覗くファインダーから伝わってきた。

初日の撮影は鎌田さんが走り続け、カメラマン、音声マンも汗を飛ばして走りました。気が付けば、夜に変っていました。ギラギラとした目と後姿を私はひたすら撮り続けました。
撮影も終盤に差し掛かった時、鎌田さんの「終わった後、美味しいビールが飲みたいよなぁ~」という、一言が張り詰めた空気を和ませ、みんなで微笑みあった。

2日目、あるお年寄りの取材。一日目とは一転、お年寄りの前では眼差しが優しくなっていた。涙するスタッフも・・・
問題に立ち向かう厳しい視線の裏側には温かいものがあるのだと、覗くファインダーから伝わってきた。一心同体になって、わたしもカメラを向けました。

3日目、ラストは鎌田さんのひたむきな目を撮ろうと決めた。作った表情ではなく、素のままの鎌田さんを捉えることによって、追跡!A to Zを伝えられるのだと確信しました。
普通ならインタビューしている全体の風景、トークしているシーンを撮影するのかもしれないが、その場の状況を伝えるのではなく、そこにいる人間がどのように関わろうとしているか、真剣にどれだけ向き合っているかを伝えたい!!それには現場の目を撮るしかないと思い、無我夢中でその目を追いかけシャッターを切りました。

「いいものを作る」ではなく、「思いをひとつにして、伝える」

この追跡!A to Zで学んだことは「いいものを作る」ではなく、「思いをひとつにして、伝える」と、いうことでした。
伝える、そして理解してもらうことはとても難しいことですが、「伝えたい」という思いは人を動かす大切なものだと思います。

数秒流れるオープニング&ラストのタイトル写真の映像、その数秒から追跡!A to Zの何かを伝えることができていれば幸いです。
鎌田さん、小林アナ、スタッフの皆さま、タイトル映像に携わった皆さまにも感謝です。

追跡サポーター 01 写真家 山崎エリナ

兵庫県神戸市出身・1995年阪神淡路大震災を経験後、その年の9月に渡仏。
パリを拠点に3年間の写真活動に専念する。
スペイン、モロッコ、ブルガリア、シリア、イスラエル、エジプト、トルコ、ギリシア、ブラジル、アイスランド、東欧など35カ国以上を旅して撮影。エッセイを執筆。
帰国後、写真集出版、雑誌、広告などで活躍。最近は映像、音楽(作詞・作曲・ボーカル)、ショートストーリーと表現の場を広げている。
海外での評価も高く、映画監督の巨匠アンジェイワイダ氏、国内外の著名人のファンも多数。
写真集に「ただいま おかえり」(小学館)、写真集5冊目となるエッセイ写真集「アンブラッセ~恋人たちのパリ~」(ポプラ社)も好評発売中。