これまでの放送

2009年 11月21日 土曜 午後10時〜10時43分

なぜ増える?“ゴミ屋敷”トラブル

これまでの放送一覧

今年10月、都内の住宅で火災が発生した。家を埋め尽くしていた莫大なゴミにロウソクの火が引火したとみられている。一人暮らしの住人は死亡。焼け跡には、亡くなった住人が20年にわたりため続けてきた10トンをこえるゴミが残された。捨てるのはもったいないとあらゆるものをため込んできたという。いわゆる“ゴミ屋敷”だったこの家。悪臭と害虫は長年、近所の人たちを悩ませてきた。ゴミを撤去することは容易ではない。「これはゴミではない」と主張されれば、私有地にある「財産」となってしまうためだ。近所の人たちも行政もどうすることも出来ない状態が続いていた。
今、全国でこうしたゴミ屋敷を巡るトラブルが多発している。いったいその背景には何があるのか。

まず、訪れたのは埼玉県の「ゴミ屋敷」。家の周囲には道路ぎりぎりまでゴミが積み上げられ、何度も崩れ落ちては近所の人たちを困らせてきた。家の主は去年、ゴミで歩道をふさいだとして逮捕され、厳重な注意を受けた。しかし、その後も変化は見られない。
鹿児島県では80代の男性が一人で暮らす家が10年前から大量のゴミであふれるようになった。男性は「ここにあるのはゴミではなく、まだ使えるものだから集めてきた」と言う。ゴミを勝手に持ち帰る行為は条例などで規制されているが、それを取り締まることは現実的には難しい。町内会では男性を説得し、これまでに二度、町内総出で撤去作業を行ったが、わずか数か月で元通りになってしまい、もはやお手上げ状態だという。

取材を進めると、新たな“ゴミ屋敷”の存在が浮かび上がってきた。マンションや団地など、閉ざされた空間の中で人知れず増え続ける“見えないゴミ屋敷”=“ゴミマンション”だ。部屋の中には、数年にわたって蓄積されたゴミが床一面に堆積し、歩くことも出来ない。6畳程度のワンルームから3~4トンのゴミが運び出されることも珍しくないという。
一体どんな人が、なぜゴミをため込んでしまうのか-。

「仕事で疲れてしまって、家では無気力になってしまう。」
(メーカー技術者 30歳)

「夫婦仲が悪くなったことがすごいストレスだった。家自体に愛着がなくなって、掃除が面倒になっちゃった。」
(主婦 45歳)

「家ではパソコンデスクの前に座る場所さえあればよかった。その時は彼氏もいなかったし、誰も来ないと思うと誰も見ないからいいか、みたいな感じで。」
(看護師 31歳)

大企業の社員、主婦、看護師、公務員…。ゴミをため込んでしまっていたのは、もともとは普通の暮らしをしていた人々だった。ゴミの向こう側に、過労やストレス、希薄な人間関係など、今の社会が抱える問題が見えてきた。

ゴミ屋敷の住人には一人暮らしが目立つ。都内のゴミ屋敷に暮らす80代の男性宅を訪ねた。中学校の元教師だというこの男性は、かつて妻と3人の子供たちと暮らしていた。ゴミをため始めたのは定年後のこと。重い心臓病を患い、思うように体を動かせなくなったことがきっかけだった。ちょうど子供たちの独立の時期が重なり、その後、妻とも別居。広い二世帯住宅に一人きりとなった男性はゴミを片づける気力を失ってしまったという。
「若いときは、子供と一緒に住めるようにと一生懸命家を大きくしたんだけど、今となっては負担ですよ、家自体が。二階なんか上がったこともない。歯がゆいとあんたたちは思うだろうけど、何にも出来ないの。老いては消え去るのみで、早く言えば死ぬのを待ってるんだ」。

どうすればゴミ屋敷の問題を解決することができるのか。大阪府豊中市では、民間の福祉団体や市の職員、市民ボランティアが一体となって、3年前「ごみ屋敷リセットプロジェクト」(現・福祉ごみ処理プロジェクト)を立ち上げていた。これまでにおよそ50軒のゴミ屋敷を解決。再びトラブルが起きたケースがなく、その実績が全国的に注目されている。プロジェクトが重視するのは、ゴミをためた人に社会との「絆」を取り戻してもらうこと。「孤立」がゴミ屋敷を生み出す原因だと考えているからだ。「ゴミの片づけ自体は手段にすぎない。どうやってその人と接していくのか、ということがメイン」だと語る福祉団体の専門員。ゴミは一度に片づけず、家を何度も訪れる。長期的に様子を見て信頼関係を築くためだ。さらに、片付けには市民ボランティアにも参加してもらい、代わる代わる声をかける。失われた「絆」を結び直す地道な取り組みが行われていた。

取材が終盤に差しかかった頃、元中学教師の男性が住む家で、行政による撤去作業が行われた。近所からの苦情を受け、自治体が男性を説得したという。5時間にわたる作業で出たゴミは4トン。しかし、家の内部はまだゴミに埋もれていた。男性が部屋の中の片付けには同意しなかったためだ。「部屋の中まで頼むことはない。俺の家は俺だけしかいない。苦情を言う人も来ないし、ほめる人もいない」。撤去作業を複雑な表情で見つめる男性はそう漏らした。

キャスター日記