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File232 「金沢の着物 加賀友禅」

金沢。
江戸時代、加賀百万石の城下町として栄えた町です。


金沢で独自の発展を遂げた着物が加賀友禅。
特徴は落ち着いた色、そして精緻な絵柄。
鳥や花など自然の情景が日本画のように、細やかに描き込まれています。
加賀友禅は金沢の風土と歴史が生み出したものです。


友禅染めとは、絵柄の輪郭に糊(のり)を置き、それを防波堤の様にして、一つ一つの色が外へしみ出さないようにした技法です。

こちらは、京都で作られた京友禅の着物。
その特徴は、金箔(きんぱく)や刺繍(ししゅう)をほどこした図案調の模様。
着物全体をきらびやかに見せています。

一方、加賀友禅は、金箔や刺繍などの装飾は一切使わず、細やかな絵柄と深みのある色使いで表現されています。

壱のツボ 花鳥の絵柄に写生のこころ

ひとつ目のツボ、
「花鳥の絵柄に写生のこころ」

友禅作家の柿本市郎さんです。
暇さえあれば、外出し、目についた自然をスケッチをしています。

柿本 「やっぱ自然が原点なんですね。
家で座ってても、なかなか(デザインの)案って出てこないですよね。
自然見てますと色んなものが見えますとバックがあってこれがあるというイメージでやれますから、繊細っていうんですかね。
これでもかという・・・手抜きは絶対にいけない。」

真夏も真冬も、暑さ、寒さをいとわず外に出て写生をするのが、加賀友禅作家の基本です。
写生してきた絵を組み合わせ着物のデザインを作ります。

こちらは、ボタンの花をモチーフにしたデザイン。
これに色をのせる時、ある表現の工夫をします。

夜明け前から朝にかけて、移ろう日の光がボタンの花を明るく照らしていく様が表現されています。
光や風などを巧みに取り込み、自然が生き生きと輝く姿を描き出しています。

今に伝わる写生の心。
その代表的な表現が葉っぱの虫食い。
身の回りに息づく自然の姿。
それをありのままに捉える事が独特の魅力となっています。

柿本さんが、懸命にスケッチしているのは、すっかり葉が落ちた真冬の桜の木です。
一体、なぜなのでしょうか?

柿本 「咲いてるのだと花ばっか書くでしょ。
枝ぶりがきちっとしたきつい、ぐっと行ってるところは今の時期でなきゃかけません。
花がこうやって咲いてるんだぞというのは、この枝ぶりが教えてくれるようなね。」

満開だと花に隠れてしまう枝ぶり。
そこまで知り抜いてこそ本当の桜が描けると言います。
たゆまぬ自然の観察があって、まるで着物いっぱいに咲き乱れるような生命力あふれる姿が表現できるのです。



加賀友禅には、連綿と受け継がれてきた写生の心が宿っているのです。

弐のツボ 「曇天の美」を極限まで引き出す技


続いては色彩に注目。
加賀友禅は加賀五彩と呼ばれる5色を基本としています。
(黄土 深緑 古代紫 藍 そして墨。)
加賀五彩は、いずれも地味な中間色。
これをベースに、組み合わせによって何十色もの別の中間色を作っていきます。


京都の友禅染、京友禅と比べてみると・・・
同じピンクでも、鮮やかな京友禅に比べ加賀友禅は淡く落ち着いています。


その理由を柿本さんはこう考えています。

柿本 「気候がたぶんあると思います。沖縄はキラキラと原色が似合うけど、それはもうここらで原色のもの着ると風土に合わない。」

加賀友禅には地味な色をとびきり魅力的に見せる技があります。

ふたつ目のツボ、
「「曇天の美」を極限まで引き出す技」


寺西秀樹さんは友禅作家であり、江戸時代から続く染め師の13代目です。
そこで使われるのが、色に濃淡をつけるぼかしの技法です。

寺西 「ぼかしは優しさを表現しますので優しい模様をより優しく優しさをより優しくという表現が多い。」

もともとシックな色合いの加賀友禅。
これに濃淡のグラデーションをつけることでアクセントにしていきます。


発色の秘密はこちらの友禅流しの作業にも隠されています。
もともとは川で行われていましたが汚染などの影響で現在では多くの場合、人工的に作りだした川の流れで行なわれています。
最大のポイントは自然の川の流れを再現した絶妙なスピードにあります。
流れが速いと、生地がすれ、必要な染料まで流れてしまい、逆に遅いと余分な染料が落ちないため美しい色が出ないというのです。

参のツボ 加賀友禅に家族の歴史あり


加賀友禅を一層美しくしてきたもの。
それは着物に託された人々の願いです。
この日、呉服屋さんに一組のお客さんが加賀友禅を買いにきていました。


結婚を控えた娘さんへ、ご両親からのプレゼントだそうです。
金沢には、娘の成人や結婚を祝って、親が加賀友禅を贈り、その着物を代々受け継ぐ習慣があります。

3つ目のツボ、
「加賀友禅に家族の歴史あり」


金沢市の東茶屋街。
江戸時代から続く金沢の花街です。
元旦から15日までの松の内の間は、この街が最も華やぐ季節。
芸子さんたちによる華やかな舞が披露されます。
新年を祝う気分を盛り上げるため、この間だけ加賀友禅の中でも最高と言われる黒の留め袖を着て舞台にあがります。


茶屋の女将(おかみ)、馬場華幸さんも、やはり加賀友禅の黒留め袖を着て接客にあたります。
実は、この馬場さんが着ている加賀友禅にはある思いが込められていました。

馬場 「主人の両親が作ってくれたもの。向こうの両親からの初めてのおくりもの。着物を来て頑張ってねっていうことだった。これは一番大事な着物。」


結納の時にご主人の両親から贈られたのが、この着物でした。
ここには、花街で自分らしい花を咲かせてほしいという願いが込められています。

馬場 「決意というか頑張らなきゃいかんなというのを非常に強く感じた着物。」


一方、馬場さん自身のご両親から受け継いだものもあります。
結婚式の時に両親からプレゼントされた花嫁のれんです。
この友禅染ののれんをくぐる事で、親の元から巣立ち、嫁ぎ先の人となる・・・という意味を持っています。
両親が娘にかける愛情の一つ~


馬場さんがくぐった花嫁のれんの向かいに7歳になる娘さんのために作った花嫁のれん。
金沢の女性たちの人生をも彩る加賀友禅。
その美しさは、子を思う親の心とともに、変わることなく受け継がれていきます。

磯野佑子アナウンサーの今週のコラム

加賀友禅。憧れです~。
あの落ち着いた魅力の秘密は何なのか、今回よーくわかりました。
加賀五彩の微妙な中間色、とてもすてきでしたね!
その土地の気候にあった色を着ることの意味を知りましたし、土地が文化や美を育むということを改めて気づかせてくれました。
手間をかけて1枚1枚仕上げていく過程を見ると、高価な理由もうなずけますね。
(気軽に手は出せませんが・・・・)
それから、金沢の人たちの意地や誇りを強く感じました。
作り手のこだわり、そして着る人の着物へ託す思い。
花嫁のれんって、本当にすてきな伝統ですね。
ナレーションをしていて、花嫁のれんのシーンでは涙がうるうるしてしまいました。
豪華なのれんで娘を送り出し、これをくぐるともう嫁ぎ先の人になるという区切りの意味合いののれん。
ご両親、花嫁さん、これは感慨深いでしょうね~。
一度その場面に立ち会って見てみたいな。きっと感動で泣いちゃうかも。
こうして書いているだけで・・・、胸が熱くなってきました!

今週の音楽

楽曲名 アーティスト名 使われた場所
(番組開始後)
Moanin' Art Blakey & The Jazz Meessengers 0分2秒
Milestones Miles Davis 1分23秒
So What Bill Evans & Jeremy Steig 1分45秒
Love I've Found You Wynton Kelly 5分40秒
作曲された花と水 菊地 成孔 & 南 博 6分18秒
Polovtsian Danse Alex Riel 1分53秒
Seven Steps To Heaven Miles Davis 9分25秒
Skylark Wynton Marsalis 11分13秒
Nardis Kronos Quartet 13分10秒
My Romance Gary Burton & Makoto Ozone 14分13秒
I'm Old Fashioned John Coltrane 15分13秒
My Song Keith Jarrett 17分30秒
Waltz For Debby Kronos Quartet 20分44秒
Story 松本 茜 23分3秒
My Happiness The Pied Pipers 25分23秒

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