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鑑賞マニュアル美の壺

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File132 「じゅうたん(絨毯)」

じゅうたんは不思議な魅力を持った織物。
敷くだけで、部屋が洗練され華やいだ雰囲気になります。
じゅうたんが生まれたのは西アジアから中央アジアにかけての砂漠地帯。
歴史は紀元前5世紀ごろまでさかのぼります。
遊牧民が飼ってきた羊の毛を工夫(くふう)して織ったものです。

工夫は表面の毛羽(けば)。
糸を立たせて作る毛羽が、足で踏んだときのふくよかな感触を生むのです。

それぞれの地域やそこに暮らす民族が特徴あるデザインを生み出してきました。
中でもペルシャじゅうたんは草花をモチーフにした無限に繰り返される文様で世界的に知られています。
砂漠という厳しい環境のなかで色彩豊かで複雑な図柄が描かれてきました。

じゅうたんは一枚の絵画として鑑賞できるという東京芸術大学教授の三田村有純さん。

三田村「じゅうたんは絵画でいえば点描画。色糸の一本一本で描いていく芸術だと思う。」

壱のツボ 結びが作る“点描画”

イランから来て30年間、ペルシャじゅうたんを日本で販売してきたダラ・ベヘラヴェッシュさん。
じゅうたんの善しあしはどこを見ればいいのか聞きました。

ダラさん「ぜひじゅうたんの裏を見てください。ルーペを使って結びの数を数えます。」

1センチ四方の中の結び目を数えます。
この結び目が多ければ多いほど手間をかけて織られたじゅうたんなのです。
このち密な結び目こそが文様の美しさを決めるのです。
じゅうたん鑑賞、最初のツボ、
「結びが作る“点描画”」

イラン出身のじゅうたん織師ジャムシドプール・アザデさんに伝統的な手織りの技法を見せてもらいました。

じゅうたんは縦糸に一本一本糸を結んでそれを切りそろえて毛羽を作り出しているのです。

色糸を、使い分けることにより、どんな複雑な文様でも描き出すことができます。

40年以上、じゅうたんの輸入販売に携わってきた大熊克己さん。
自慢の一品は、たて8.2メートル、よこ3.8メートルの巨大なじゅうたんです。
20世紀初頭、イランの王家が所有していたこのじゅうたんは、5人の職人が9年間かけて織り上げたもの。
1100万個の結び目が作り出した壮大な点描画。
じゅうたんには気の遠くなるような時間と手間が秘められているのです。

弐のツボ 文様が特別な空間を作り出す


白鶴美術館蔵

神戸にある白鶴美術館。
日本でも有数のじゅうたんのコレクションがあります。
じゅうたんのデザインには一定のパターンが見られ、周囲を囲んでいるボーダーと、その中のフィールドと呼ばれる部分があります。
このフィールドに何が描かれているのかを見れば、じゅうたんに込められた意味がわかります。

長年、じゅうたんの歴史やデザインを研究してきた、国立民族学博物館名誉教授の杉村棟さんです。

杉村「砂漠で色の少ない場所で人々が身の回りに美しい世界を作り出そうとした、それがじゅうたんです。」

じゅうたん鑑賞、弐のツボは、
「文様が特別な空間を作り出す」


白鶴美術館蔵

フィールドの代表的な文様は「ミフラーブ文様」。
アーチ形の門のようなデザインです。

これはイスラム教の礼拝所の中にあります。
正面にあるアーチ形の壁のくぼみが「ミフラーブ」です。聖地メッカにあるカアバ神殿の方角を表している部分です。
そのミフラーブが描かれたじゅうたんは礼拝のときに使うもの。
聖地メッカの方角にむけて敷きその上で祈ります。
ミフラーブ文様のじゅうたんは敷いた場所を聖なる祈りの場所に変えるのです。


白鶴美術館蔵

もう一つの代表的な文様が「メダリオン文様」です。
真ん中の大きな文様は太陽や宇宙の中心を表しています。
周囲に力強くのびるつる草は生命力あふれる自然を賛美しています。

杉村「礼拝の時には広げたところが聖なる空間に。花柄が美しいじゅうたんはまわりが殺風景な中でも、非日常的な空間を作ることができるのです。」


MIHO MUSEUM蔵

世界で最も美しいと言われるメダリオンのじゅうたんが滋賀県のMIHO MUSEUMに展示されています。 たて6メートル、横3.2メートルの大作。
17世紀初め、イラン、サファビー朝の宮廷を飾っていました。
咲き乱れる花々。狩りをする人。
あらゆる動物たちが画面を埋め尽くしています。


MIHO MUSEUM蔵

荒涼とした砂漠でじゅうたんを敷けばそこは生命(いのち)あふれる楽園。
まさにじゅうたんは魔法の織物なのです。

参のツボ 緞通に和の工夫

日本で国産のじゅうたん、「緞通(だんつう)」が誕生したのは江戸中期、元禄時代のこと。
南蛮貿易でもたらされたじゅうたんを手本にしました。
落ち着いた色づかいと大柄な文様が特徴。
中央に大輪の牡丹(ぼたん)の花を咲かせたデザイン。
ペルシャじゅうたんのメダリオン文様を引き継いでいるようにも見えます。

日本で最初に緞通を作ったのは佐賀、鍋島藩。
「鍋島緞通」は将軍や大名へ献上する品として作られました。
今は佐賀に一軒だけのこる鍋島緞通の工房は、吉島家です。

吉島「日本の場合、畳の上に必要に応じて飾っていった。自分たちの知恵なり適応能力がこの中に見られる。」

緞通には日本の風土や習慣に合わせた様々な工夫がこらされています。
じゅうたん鑑賞、最後のツボは、
「緞通に和の工夫」

鍋島緞通のもっとも大きなちがいは素材。
江戸時代、各地で作られた良質な木綿の糸が使われました。
木綿は高温多湿な日本の生活に適した素材です。

畳の上に敷く“座布団”のように使われたため、毛羽をより長くし、柔らかさを出すよう工夫されました。

緞通は、和室のしきたりに合わせて洗練されていきました。
大きさは敷いたとき美しく見えるように畳一畳に。
端の房(ふさ)を片側だけに残し房の無い方を上座、ある方を下座としたのです。

結婚式など祝いのときには大広間に何枚もの緞通が並べられます。
模様が落ち着いた畳の部屋を一変させ、おめでたさを演出します。

はるか西域(さいいき)の砂漠の国から伝わったじゅうたん。日本人の生活空間にとけ込み新しい魅力を生み出したのです。

今回番組で紹介したじゅうたんは、以下の美術館で見ることができます。
(展示されていない場合もあります)

◆ ミフラーブ、メダリオン文様のじゅうたん
【白鶴美術館】
※6月7日(日)まで!
〒658-0063 神戸市東灘区住吉山手6丁目1-1 TEL/FAX:078-851-6001
開館時間:午前10時~午後4時30分(ただし、入館は午後4時まで)
http://www.hakutsuru-museum.org/index.shtml(NHKサイトを離れます)
◆ メダイヨン動物文絨毯
【MIHO MUSEUM】
※春季特別展:3月14日(土)~6月7日(日)
夏季特別展:7月11日(土)~8月16日(日)
住所:〒529-1814 滋賀県甲賀市信楽町桃谷300
TEL:0748-82-3411 FAX: 0748-82-3414
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時まで)
http://www.miho.or.jp/japanese/index.htm(NHKサイトを離れます)

古野晶子アナウンサーの今週のコラム

ペルシャ絨毯には3つの驚きが隠されています。絵画のような細密な柄が全て手作業で織られたものだと聞いて、ええっ~!と驚き、出来上がるまでに1年も2年もかかっていると知り、また、へー!!さらに値札をのぞいて、ひゃあ~!!!気安くじゅうたんに触れていた手を思わず引っ込めたのは言うまでもありません。でも、よく考えてみると時間と手間をかけて大切に織られたじゅうたんにはそれだけの価値があるものなのです。じゅうたんに対じし、織った人のことを想像すると、辛抱強く続ける根気の大切さを改めて教えられたような気持ちになりました。番組では5人の女性が9年もの歳月を費やして織ったじゅうたんが登場します。9年もかけた大作!!頭が下がる思いでした。

今週の音楽

楽曲名 アーティスト名
 Avaz Shooshtari Earl Hagen
Le jardin de Jenane Gabriel Yared
Blues FM Ronald Baker
Trade winds McCoy Tyner, Bela Fleck
I hear a rhapsody Don Friedman
I hear a rhapsody Don Friedman
Wayne's thang Kenny Garrett
Poverty and its opposite Arve Henriksen
Harlem nocturne Herb Ellis, Illinois Jacquet
Ambition Steve Swallow with Rovert Creeley
Cool struttin' 寺井尚子&松永貴志
Redial Gary Burton
Jazz folk John Avercrombie
West end blues Louis Armstrong
Edda Lee Morgan
The goodbye look Karel Boehlee Trio
Summertime Ray Brown
Sakira 西山瞳トリオ
Le jardin de Jenane Gabriel Yared
Mack the knife Louis Armstrong

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