 |
昭和の初めに建てられた和風の邸宅。
玄関脇の部屋に、色鮮やかなステンドグラスがしつらえられています。
松に鶴という、日本画を思わせる図柄。
背景の格子とも相まって、和室にしっくりとなじんでいます。
|
 |
明治以降の日本で、ステンドグラスは国家の権威を演出するという役割を担いました。
一方、豊かな個人の邸宅にも、ステンドグラスは用いられるようになりました。
これは大正時代に建てられた洋館。
居間や書斎など、あちこちにステンドグラスがはめ込まれています。 |
 |
中でも目を引くのが、階段の踊り場にある高さ3.6メートルものステンドグラス。
空を舞う鳩と、法隆寺をモデルにした五重の塔が描かれています。
三つ目のツボ、
「ステンドグラスに和が際立つ」 |
 |
このステンドグラスを制作した小川三知(1867-1928)は、日本人の美意識に合ったステンドグラスを模索しました。
ヒントになったのは、こまやかな線を用いる日本画独特の表現です。 |
 |
ステンドグラスは、さまざまな色のガラスを切り鉛の線でつなぎ合わせて作ります。
ステンドグラス職人の松本健治さんに、日本的な技法と西洋の技法、二通りの方法で、ガラスを組んでいただきました。 |

|
いかがでしょう。
右の方がすっきりとしていませんか?
違いは、ガラスを組む鉛の線の多様さ。
部分ごとに3ミリから11ミリまで4種類の太さの線を使い分けています。
松本「やはり線によってずいぶん違うと思いますよ」「通常ですと海外だと全部6ミリなら6ミリの線で組んじゃうじゃないですか?海外の場合は目の位置で見るってことはほとんどないですから。やっぱり日本の場合、目の位置で見るっていうのが多いですから」 |

|
もう一点、小川三知の傑作です。
中庭に面した丸窓にはめられたステンドグラス。
梅の古木の力強い幹とかれんな花が、太さの異なる線で巧みに描き分けられています。
西洋の教会で生まれたステンドグラスは、いつしかこの国の家を飾る日本の美となりました。 |