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黒漆にまき絵をあしらった茶道具入れです。
金色の丸い模様は「雪輪(ゆきわ)」と呼ばれる平安時代から用いられてきた雪の文様です。 |
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雪輪と草花を組み合わせて柄にした布です。
雪輪は、ふんわりとした雪のイメージを感覚的に表すデザインとして使われてきました。 |
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ところが、江戸時代後期、雪の結晶から生まれた「雪華(せっか)」文様が登場します。
当時の人々にとって、はじめて目にする形でした。 |
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雪の文様がついた品々を集めている骨とう商の高橋雪人さんです。
高橋「雪華文様はどこにもなかった新しい文様。これが自然の中にあったことは人々にとって驚きだった。粋(いき)だし、花のように美しいし、完璧な文様です」。 |
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雪華文様を身にまとう女性の姿を描いた浮世絵です。
雪華文様は、江戸の町で大ブームとなります。
二つ目のツボ、
「自然が生んだ完璧なる造形美」 |
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現代の染織作家の岩下江美佳さんも、雪華文様に魅せられ、作品に取り入れてきました。
岩下「天からの贈り物を、文様として身にまとえるのはすてきなこと。夏物に雪の文様を染めると、人々を涼しい気持ちにさせる効果があります」。 |
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岩下さんの新作の帯です。大きな雪輪の上に、雪華文様がひらひらと舞い降り、モダンな感覚を与えています。 |
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雪華文様の生みの親は、「雪の殿様」と呼ばれていた古河藩主・土井利位(どいとしつら)【1789-1848】。 |
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土井利位は、雪の結晶をヨーロッパ製の顕微鏡を使って20年以上観察します。
そして、「雪華図説(せっかずせつ)」という本にまとめます。この雪の結晶のイラストが、雪華文様として広まっていきます。 |
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土井利位に詳しい古河歴史博物館学芸員の永用俊彦さんです。
永用「蘭学(らんがく)の影響のもと、土井利位は雪の結晶を精確に描きました。多大な好奇心を持っていた江戸の人々にとって、魅力的な素材だったと思います」。 |
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江戸時代後期を代表するまき絵師、原羊遊斎(はらようゆうさい)の手になるざん新なデザインの印ろうです。 |
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武士の命といわれる刀にも、雪華文様があしらわれています。
武士から町人まで、雪華文様が流行しました。 |
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昭和初期、土井家の夫人のために仕立てられた着物です。
絞り染めと刺しゅうで描いた豪華な雪華文様がちりばめられています。
その完璧な造形は、まさに天からの贈りものです。 |