市立函館博物館 蔵 |
とんぼ玉は、いつの時代も大切な「宝物」です。
北海道函館には、大量のとんぼ玉が残されていました。
アイヌの人々が宝物として、大切に受け継いできた「タマサイ」と呼ばれるネックレスです。 |
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市立函館博物館館長の長谷部一弘さんです。
長谷部「タマサイは女性の大切な宝物。使われているとんぼ玉は、実は18〜19世紀にかけて、中国大陸との交易でアイヌの人々にもたらされたものや、本州からももたらされたもの。」 |
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アイヌの人々は中国の清朝や松前藩などと交易を行っていました。狩猟で得た動物の毛皮などの代価として、このとんぼ玉を受け取っていたのです。
とんぼ玉鑑賞、弐のツボは、
「受け継がれた神秘の力」 |
KOBEとんぼ玉ミュージアム羽原コレクション 蔵 |
古代から、とんぼ玉の模様には特別な意味が込められてきました。
これは、アイビーズと呼ばれる目玉模様のとんぼ玉。
古代エジプトでは、この目玉には邪悪なものをにらみ返す力があるとされ、お守りとして使われました。 |
KOBEとんぼ玉ミュージアム羽原コレクション 蔵 |
交易によって、アイビーズは世界各地へと伝えられました。
中国でも高貴な人々が亡くなるといっしょに埋葬されました。 |
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羽原「アイビーズは、丸の重なり。同心円紋は非常にシンプルだったために、代々、地域を越え、時を越えてつながっていったんだと思います。アイビーズは、とんぼ玉の中のロングセラーですね。」 |
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17世紀のベネチア。アイビーズを受け継いだとんぼ玉が作られ、交易に用いられました。
伝統的なガラス工芸の技術を生かし、宝石並みに価値を持つとんぼ玉を作ることができたのです。 |
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それがトレードビーズと呼ばれるもの。主に西アフリカとの交易で、貨幣の代わりに用いられました。
鮮やかな色と複雑な模様を持つトレードビーズは、アフリカの人々を魅了します。ベネチアの商人は、これと引き換えに宝石や金などを得て、巨万の富を築いたのです。 |
市立函館博物館 蔵 |
アイヌの人々もまた、とんぼ玉の美しさに強く惹かれます。
そして、タマサイを単なるアクセサリーではなく、神聖な宝として扱いました。 |
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光り輝くガラスの玉に、霊魂が宿ると考えたのです。
長谷部「とんぼ玉に霊力が宿るとされ、悪霊から身を守るために、タマサイは熊送りなどの儀式、儀礼のときに女性が身につけた。そして、女性の宝物として、母親から娘へと受け継がれた。」
美しい輝きを放つとんぼ玉。
そこには神聖な力が宿ると考えられてきたのです |