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トヨタテクノミュージアム
産業技術記念館 蔵 |
まずは、ご覧あれ。
クルクルと後転しながら階段を下りるのは、「段返り人形」。
まるで曲芸師のような正確な動きです。 |
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こちらは、「文字書き人形」。
なんと筆で、美しい文字を書きます。
どうです。このりりしい姿。
書いたのは「寿」の文字。
お見事!
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機械仕掛けの「からくり人形」。
江戸時代、最先端の技術を「からくり」と呼びました。
「からくり人形」が人々の前にはじめて登場したのは、寛文2年。
人形師竹田近江(おうみ)が大阪道頓堀で行った「からくり芝居」が人気を博しました。
初めてからくり人形を見た、井原西鶴は、その驚きをこのように書き記しました。
「目口の動き、足取りの働き、手をのべて腰をかがむ、さながら人間のごとし。」
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犬山市文化史料館 蔵 |
それからおよそ百年後に出版された
「機巧図彙(からくりずい)」。
この書物によって、ながらく門外不出だった、からくりの技術が世に広まりました。
その後、さまざまなからくり人形が登場するようになったのです。 |
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その代表がこの「茶運び人形」。
茶わんを乗せると客のもとへと運んでいきます。
茶わんを取ると止まって、じっと待つ。
茶わんを戻すと、元の場所へと戻って行きます。
まずは、そんな人形たちの精巧な動きに注目です。 |
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トヨタテクノミュージアム
産業技術記念館 蔵 |
江戸時代の名品「弓曵童子」。
みずから矢を取り。
しっかりと構えて…。
矢を放つ。
この精巧な動きを生み出したのは、からくり儀右衛門こと、田中久重。
幕末に活躍した天才からくり師です。
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からくり人形師東野進さん。
久重の人形の修復も手がけてきました。
東野「江戸時代のからくりを今の技術でやるのはむずかしいことはない。でもね、ロボットと並べてみなさい。全然味が違う。」
江戸の先端技術を用いたからくり人形。
そこには、素朴な手作りのぬくもりがあります。
からくり人形最初の壺は、
「精密な動きに味わいあり」。
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からくり人形は、どのような仕掛けになっているか…?
ちょっと着物を脱いでいただきました。
部品には、さまざまな種類の木が使われています。
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摩耗しやすい歯車や車輪は、固いカリンや樫(かし)の木。
それも一枚の板ではなく、8枚の扇形の板を継ぎ合わせて
います。
板目を放射状にすることでかかる力が分散し、割れにくい、頑丈な歯車になるのです。
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これ、なんだか分かりますか?
からくり人形の重要な部品…ゼンマイです。
素材は、鯨のヒゲ。
口の中にある、プランクトンなどをこしとるブラシのようなもの。
固くて弾力性に富みます。
このゼンマイが動力となって、人形を動かします。
その仕組みを見てみましょう。
ゼンマイを締め…。
ねじ巻きを外すと…。
ゼンマイが元に戻ろとする力が、人形の動力になるのです。
東野「からくり人形のおもしろさは、ひとつのくじらのゼンマイ、限られた素材で、いかにすばらしい物を作るかです。」
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味わい深い動きを生む仕掛けは、どうなっているのでしょうか?
まずは、発進と停止の仕組み。
茶運び人形は、茶わんを置くと動き出します。
腕と連動するひもが、ストッパーにつながっているのです。
腕を下ろすとストッパーが外れて歯車が回転します。
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次は方向転換。
茶運び人形には、三輪車のような前輪が着いています。
その方向を決めるがこの舵(かじ)。
歯車と一緒に回るカムに連動しています。
回転するカムが一定の場所に来ると…。
舵を押して、前輪の方向を変えます。
しばらくするとカムが外れ、再びまっすぐ進みます。
速度を一定に保つのは、ぶるぶると振れているテンプという装置。
ちょっと止めて見てみましょう。
上の四角い木の部分は重り。
下にある二つの木の部品が歯車に振れることで速度を調整します。
重りが軽いとテンプは、激しく揺れます。
二つの木の部品が歯車に接触する時間が短くなり歯車は早く回転します。
重りを重くすると、揺れはゆっくりに。
木の部品が、歯車により長く接触するため歩く速度は、遅くなるのです。
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こちらは田中久重の「茶酌娘」。
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三つの茶わんを一度に運び、客の前でみずから止まります。
あたかも客をもてなす気持ちを持っているような動きです。
江戸のからくり師たちは、機械仕掛けの人形に温かい心を吹き込みました。
最先端の技術と遊び心。
日本人ならではの感性が、味わい深い、からくり人形の数々を生み出したのです。
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