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File49 枯山水(かれさんすい)


壱のツボ 水無くして水を感じよ


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東京、渋谷にあるホテルのロビー。
その奥に広がるのは、枯山水(かれさんすい)の庭です。

こちら、モダンなたたずまいのレストラン。


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しゃれた、和のテイストを演出するのが、枯山水。
枯山水は今なお、人々をひきつけます。

そもそも枯山水は、室町時代、禅の教えとともに発達しました。

京都で最も古い禅寺、建仁寺(けんにんじ)です。


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枯山水は、水をいっさい使わず、石や砂で自然の美を表現した、日本独自の庭です。

横30メートル、奥行き15メートルほどの空間。
ここに15個の自然石が配置されています。

そして、一面に広がる白い砂・・・。
まずは、この砂に注目です。
禅寺の朝の日課。白砂に幾何学模様を描いていきます。

この砂紋(さもん)、実は、水を表しています。

浅野「白砂に砂紋を描いて、川に見えたり、大きな海に見えたり、あるいは、雲海、人それぞれの心を映し出してくれる、それが枯山水。
水を無くして、水を感じさせる、そういう表現方法が枯山水の特徴。」


枯山水鑑賞、最初の壺は、
『水無くして水を感じよ』。

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まっすぐに引かれた線は、川や海のおだやかな水面(みなも)を表しています。
うねりは、大小さまざまな波の表情です。

水を感じることによって大きな物語が見えて来る、
これが枯山水の醍醐味(だいごみ)です。

大徳寺大仙院の枯山水は、方丈(ほうじょう)を取り囲むように作られています。
建物の裏手にある、細長い庭。
ここに、主石(しゅせき)が置かれています。

主石は、不老不死の仙人が住むという(ほうらいさん)。
島に見立てられた砂盛は、理想の境地を表します。
砂と石が作り出す、絶え間ない水の流れ。
そこには、枯山水ならではの物語が隠されているのです。


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弐のツボ  立つ石に大地の力を感じよ


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次は、石の表情に注目です。

まずは、豊臣秀吉の妻、北の政所(まんどころ)が終(つい)の住処(すみか)とした高台寺 圓徳院(こうだいじえんとくいん) の石組みをご覧いただきましょう。

数々の歴史的な庭園を修復してきた、庭師の北山安夫さんです。

北山「この石組みが力強く感じられるのは、見えないところなんです。
実は石を据えている下が問題なんです。
一番大事なことは地球の内側から出ているんだということ。
石が語りかけてくる、エネルギーを自分がどう感じるかということなんです。」

 
そこで、枯山水鑑賞、二つ目の壺は、
『立つ石に大地の力を感じよ』


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どのように石を立てれば力強く見えるのか、北山さんに実演していただきました。

まずは、石の正面を決めます。枯山水には、自然の石を人の手を加えずそのまま用います。

北山「力強さを感じさせる方が正面になる。裏は小さく見える。」

正面を決めたら、いよいよ、石を立てます。

石を地中に埋めこむ“根入れ”という作業です。


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石を活かすも殺すも、この“根入れ”次第。

根入れを深くして、地中に巨大な石があるように見せるのが、秘けつです。


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さらに、石はほかの石と組み合わせた時、いっそう力強さを発揮します。

圓徳院の主石の石組は、“三尊石(さんぞんせき)”と呼ばれる、3つの石を組んでできています。


真ん中の一番高い石。よく見ると少し傾いて見えます。
それを支えるように、両脇に小さな石が添えられ、全体で大きな三角形の山を形成しています。

このように、石を組むことで、大地に根を張るような安定感が生まれるのです。


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それでは、石の力を存分に引き出した傑作をご紹介しましょう。

東福寺龍吟庵(とうふくじりょうぎんあん)の枯山水です。

昭和の名匠、重森三玲が手がけました。
これが何を表しているかわかりますか?
実は、雲の間に見え隠れする龍の姿を表現しているのです。
地表にのぞく、わずかな龍の背中。
しかし、そこには大地の力を吸い上げた、巨大な龍の姿が感じられるのです。

参のツボ 額縁の向こうに小宇宙あり


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京都、龍安寺(りょうあんじ)。
わずか75坪の枯山水の傑作です。

枯山水は庭に降りず、建物から眺めるもの。
そこには、とっておきの鑑賞法があります。


全国の庭園を巡り、枯山水を研究してきた、作庭家の重森千青さんにうかがいましょう。

重森「ふつう一般的には縁側から見ることが多いんですが、部屋から見た場合も非常におもしろい。」


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ふだんは入れない方丈の中から見る枯山水。
庭が切り取られ、まるで額縁の中の絵画を見ているようです。

というわけで、枯山水鑑賞 最後の壺は、
『額縁の向こうに小宇宙あり』


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東福寺、光明院(こうみょういん)の枯山水。
この庭の景色は、部屋によって眺めが異なります。


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庭の西側の部屋から見た景色。


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そして、北側の部屋から眺めると・・・


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その理由は、石の配置にあります。
庭の中心となる主石から放射状に石が置かれ、どの部屋からもバランスよく見えるように計算されているのです。


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「東福寺 芬陀院」

また、窓を通して見る枯山水もおすすめです。
円窓(えんそう)は、禅の教えで“悟り”を表し、調和のとれた世界を意味します。


重森「円というのは尊いものという意味があるので、円窓を通して見えて来る世界は、理想郷の世界。
尊いものから理想の世界が見えて来るというふうに言える。」


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こちらは雪舟寺とも呼ばれる東福寺、芬陀院(ふんだいん)。
ここの中心もまた、仙人の住む


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縁側から見ても良し、室内から見ても良し。
無限の広がりを感じさせる石の宇宙、それが枯山水です。

今週の音楽

曲名
アーティスト名
My buddy Chet Baker
The St.Vitus dance Horace Silver
Gone Again The Red Garland Trio
Slowly Milt Jackson
All blues Miles Davis
Part 1 :Acknowledgement John Coltrane
Spring is here Bill Evans
Alligator bogaloo Lou donaldson
You go to my head Louis Armstrong, Oscar Peterson
The break through hank Mobley
Pick up sticks Dave Brubeck
I've got a crash on you Nat Adderley
Maiden Voyage Herbie Hancock
Lover man Charlie Parker
Strange meadow lark Dave Brubeck
Blue in green Miles Davis
I've never been in love before Chet Baker
The dude Lem Winchester