|
奈良県にある栄山寺。
この寺の鐘は、銘のすばらしさで知られています。
|
|
銘とは、鐘が作られた由来やご利益などを記したもの。
書家や僧がしたためた文字を写し取っています。
|
|
この銘の特徴は、立体的に浮かび上がっていること。
厚みを持たせた重厚な趣。輪郭が際立つ、力強い表現です。
|
|
鐘に記された文字の美しさにひかれ、研究を続けてきた鈴木勉さんです。
鈴木「偉いお坊さんの書いた字は何か力強い。それが深みなんですよね。その深みを金属の上に表現するのは非常に難しい。文字を立体的に表現できれば、陰影の強弱によって、その『深み』を人に伝えることができる。」
|
|
釣り鐘鑑賞、弐のツボ、
「銘の陰影に筆遣いを見よ」
|
|
こちら、称名寺の鐘には、栄山寺とはまったく違う方法で銘が記されています。
この銘は、直接、刻み込まれたもの。
鐘が出来上がった後、たがねで削って書かれています。
|
|
紙の上に書かれた、流れるような筆遣いを金属の上にみごとに再現しています。
|
|
力を入れて書かれた部分は溝を深く太く、
力を抜き優しく筆を運んだ部分は、溝を浅く細く─。
|
|
日本最初の禅寺として知られる、鎌倉、建長寺。
この寺の鐘にもみごとな銘が書かれています。
|
|
「人」という文字の右払い。
書き始めは細く、厚みもありません。
一方、払う直前、筆を止め、力が込められた部分は、太く厚く表現され、払いの先端へ一気に収束しています。
|
|
こちらの文字で最も力を込めて書かれているのは、丸で囲んだ部分。
|
|
線の力強さを表現するため、太く厚くするだけでなく、上の部分をあえて薄くしています。
技術と計算が生み出した、独特の表現です。
|
|
一文字一文字、ていねいに記された銘。
そこには、筆で書かれた文字の息遣いがみごとに写し取られているのです。
|