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この硯は、千年以上前に中国で作られた「鳳池硯」。
硯の材料として最もよく知られる端渓石を薄く削り、優美な形に仕上げました。 |
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高い脚のついた独特な姿。中国・宋時代の文人が使った「太史硯」です。
材料は、端渓石と並んで尊ばれる歙州石(きゅうじゅうせき)。
はるかな歴史の中で、多様なデザインの硯が作られてきました。 |
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硯研究家の北畠五鼎さん。
硯の良さを味わうには、デザインだけに気を取られてはいけないといいます。
北畠「やっぱり色目ですね。あと紋様というのが出るんです。その変化を楽しむということ」「一個の硯に大宇宙を観照するっていうような、おおげさに言えば、そこまで行きます」 |
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たとえばこの端渓石の硯。
紫色の地に、たなびく煙のような模様が見えます。
天体を思わせる丸い模様は、生物の化石。
こうした石の模様=石紋が、古くから珍重されてきました。
文房具鑑賞・三つ目のツボ、
「硯に大宇宙を見よ」 |
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山梨県西部の雨畑渓谷。
かつては徳川将軍にも献上され、中国の端渓に匹敵するとさえいわれた雨畑石(あめはたいし)が、この山深い土地で、採られてきました。 |
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雨畑石を使って江戸時代から硯を作り続けてきた雨宮家。
13代目の弥太郎さんです。
山から切り出されてきた原石は、色合いも模様もさまざま。
そうした石と作品のイメージをすり合わせ、形を決めていきます。 |
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彫刻家でもある弥太郎さんの斬新な硯。
その造形は、石との対話から生まれるといいます。
弥太郎「一つ一つ個性的な石と向き合いながら、自然のリズムと感応するような形」「硯って言うのは昔から墨をするためだけの道具ではなくて、すりながら心を鎮めるためのものですから、いわば自分の心と向き合うためのオブジェなんです」 |
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硯研究家の北畠さんに、きわめつきの鑑賞法を教えていただきました。
硯を水に浸します。 |
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こうすることで、色合いや石紋がくっきりと見えるのです。
硯の奥深い味わいに、宇宙を感じてみませんか? |