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夢あふれる絵と詩で構成された「コドモノクニ」。
絵の中に文字をどうレイアウトするのかも、画家たちの腕の見せどころでした。 |
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東京、文京区の弥生美術館には、画家・武井武雄の原画が保存されています。
子どもたちが望遠鏡を通して見ている景色が、しゃぼん玉のようにリズミカルに配置されています。 |
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よく見ると、風景が描かれた円の中心に、コンパスを使った跡と思われる穴が空いていました。 |
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ところが、円の描かれていない部分にも穴が。
一体、なぜなのでしょうか? |
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原画に、完成した絵本を重ねてみると・・・
穴があった位置には文字がレイアウトされていました。
余白に空けられた穴は文字と絵をどうレイアウトするか画家が試行錯誤した跡に見えます。 |
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弥生美術館 学芸員の堀江あき子さんです。
堀江「コドモノクニという雑誌は絵を重視するために大判につくられました。そのため、このようにさまざまな画家がユニークなレイアウトに挑戦することができました。」
レトロな絵本、三つめのツボは、
「文字と絵のコラボレーションを楽しむ」 |
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西洋の絵本によく見られる文字のレイアウトは、文章が四角い枠の中に入れられ、絵と分離されているのが特徴。 |
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「コドモノクニ」も創刊当時は西洋の絵本にのっとり、絵と文字が分かれていました。 |
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しかし、創刊から少し経つとレイアウトに変化が。
絵の中に文字を取り入れる試みがはじまったのです。 |
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この絵は一見、文字が上に寄せられ、バランスが悪く見えますが、実はここがポイント。
右端に描かれた少女の視界を遮らないようにしているのです。 |
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こちらは、文字が壁の模様のようにレイアウトされ、絵と、みごとなコンビネーションを見せています。 |
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この作品は、絵本を超えて、もはやグラフィックアートの世界。
チュウチュウとハテナの文字が絵の中で遊んでいます。 |
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絵本作家の五味太郎さん。
この時代の作品のレイアウトに触発されるといいます。
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特に、五味さんを魅了したのが、絵本「たべるとんちゃん」。
初山滋が、昭和12年に発表した作品です。 |
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食いしん坊の豚、とんちゃんがおいしいものを食べる旅にでかけるというこのお話。その斬新なレイアウトは読む人の常識を気持ちよく裏切っていきます。 |
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右から左へ読むかと思えば今度は左から右へ。
読みにくくたってお構いなし。まさに思うがまま、自由自在です。
五味「こんなレイアウトまずいぞっていうぐらいな感じぐらいに自由ですよね。」 |
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五味さんが特に感心したのがこのV字型のレイアウトです。
五味「僕も文字レイアウトでは考えるタイプだけどこりゃやったことはないな、と。ちょっとね、おれたちもね、自由と思っていてもねかなりしっかりしてなくちゃいけないなあってことを刺激されますよね、この世界は。」 |
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ちなみに、このお話、レイアウトだけでなく、内容も斬新。
最後は、おいしいものを食べて丸々太ったとんちゃんが、とんかつ屋さんに買われてしまうのです。
子どもの個性や想像力を引き出すために作られたレトロな絵本。その輝きは今でも失われていません。 |