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続いては凹版(おうはん)という印刷法に注目です。
ジュラルミンケースに入れられ、厳重に保管されて来たのは・・・ |
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切手の原版です。
大きさはもちろん切手と同じ。 |
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細やかに彫刻された一本一本の線。 |
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かつてよく使われた凹版印刷による切手です。 |
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凹版印刷とは、彫られた溝にインクを流し込んで印刷する方法。 |
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紙に付着したインクがわずかに盛り上がるため、重厚な印象に仕上げたいときに用います。 |
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多くの専門書を著わしてきた研究家の内藤陽介さん。
凹版印刷に、日本の切手の魅力が凝縮されているといいます。
内藤「コレクターの世界は戦前のものとか明治のものなど古いものが貴重だということがありまして、マーケット的には高いものはそれほどないのですが、印刷物としての完成度・クオリティーでいえば世界的にも高く評価されていまして、実際に本当にすばらしいものがいくつもあると私は考えています。」
切手鑑賞、二つ目のツボは、
「小さなキャンバスに彫刻の冴あり」 |
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原版を彫るのは、手作業。
工芸官と呼ばれる国立印刷局の職員が、ひとつひとつ丹念に彫っています。
原版を彫り続け、42年になるベテラン、大浦博美さんです。 |
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使うのは、ビュランという彫刻刀。 |
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それぞれ、刃先の角度が違い、彫る線の太さに合わせて使い分けます。 |
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1ミリに満たない線を彫る、極めて微細な作業。
時には1ミリ幅の中に7本も8本も線を引くことがあるといいます。 |
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少しでも失敗すると最初からやり直し。
熟練した技術が要求されるだけでなく、非常に根気がいる仕事です。 |
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大浦「針とぎ3年、描き8年、ビュラン熟すは18年といわれています。」 |
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大浦さんが22年目に手がけた作品、「なら・シルクロード博」の記念切手。
ラクダの細かい毛並みまでち密に彫られています。
大浦「線の流れですね。その辺をよく見て欲しいですね。よどみなく流れて立体感が出るとか質感が出るとか、そういうところを彫刻師としてはいちばん注意するところです。」 |
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大浦さんには目標とする先輩がいます。
1ミリの幅に12本もの線を引いたという並外れた技を持つ、押切勝造さんです。 |
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その代表作・東照宮陽明門は、手彫り切手最高の作品のひとつだといわれています。 |
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3.6センチ×5.1センチの中に、門を飾る彫刻や金具などが、細部に至るまで表現されています。 |
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押切さんの技術がどれだけすごいのか、今回特別に原版を試し刷りしていただきました。 |
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使ったインクは黒一色。
線の数や太さで陰影を付ける彫刻の技術を分かりやすく見るためです。 |
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軒に突き出して並ぶ、竜の装飾。
細かく線を重ねることで、巧みに立体感を出しています。 |
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逆に、柱の部分では、極力、線を減らすことで軒の重厚さを強調しています。 |
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切手という小さなキャンバス。
そこには、私たちの想像を超えるみごとな彫りの技が隠されていたのです。
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