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沖縄は、19世紀後半まで、琉球という独立した王国でした。
日本、中国、東南アジアを結ぶ交易の拠点として栄え、独自の文化をはぐくんできました。 |

浦添市美術館 蔵 |
「琉球文化の華」といわれてきた漆器。
琉球へは、中国から漆の技が伝わり、15世紀には漆器作りが始まっていました。
特に、貝殻を漆に散りばめる螺鈿細工が発達します。
ここで使われるのが夜光貝。高貴な輝きを放ちます。 |
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琉球王国は、17世紀初めから中国に仕えると同時に、薩摩藩にも支配されました。
貢ぎ物や輸出品にする工芸品を作っていたのは、「貝摺(かいずり)奉行所」と呼ばれる官営の工房。
貝摺、つまり螺鈿細工こそが琉球工芸の花形だったのです。 |

浦添市美術館 蔵 |
琉球漆器の鮮やかな朱色と螺鈿の組み合わせは、中国の皇帝を夢中にさせました。
優美な尾長鳥。
夜光貝の貝殻を使った精ちな表現です。 |
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現代の琉球漆器を代表する作家の一人、前田孝允(まえだこういん)さん。
前田「夜光貝は世界中の貝の中で、真珠層がもっとも強くてきれいだといわれています。いろんな色がありますので、木は青い部分、花は赤いところ、屋根も赤といった具合に、絵画的に表現していきます。」 |

浦添市美術館 蔵 |
琉球の螺鈿は、夜光貝が秘める虹色の輝きから生まれました。
琉球漆器、鑑賞のツボ、
「螺鈿は海の神秘を映す」 |

| 沖縄本島北部にある漁港。
外間勝吉(ほかまかつよし)さんは潜水を専門とする漁師です。
朝、7時。夜の間、海にもぐって捕った夜光貝を水揚げします。
夜光貝は、種子島よりも南の海にしかいません。
外間「夜光貝は、陸上でいったらカタツムリがはっているような感じで、珊瑚礁(さんごしょう)の上にいます。それを捕まえてくるのです。」 |
| 磨き上げた夜光貝。ゴツゴツした表面からは想像できない真珠色の輝きが現れます。
螺鈿によく使われる鮑(あわび)などに比べて、柔らかな光沢が特徴です。 |
| 真珠層を薄く削って螺鈿の材料にします。
大きめの貝一個から一・二枚しか取れません。 |

浦添市美術館 蔵 |
螺鈿を施した16世紀ごろの机です。
金色の部分は、文様の上に金ぱくをはり付けています。
華やかな螺鈿に金を加えた、ぜいたく極まりない調度品です。 |
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螺鈿材で作品を飾っていく工程です。
色や光沢を見ながら、絵柄にあった部分を切り出します。
しかし、今見えている色のまま仕上がるわけではありません。
漆の上にはると、まったく違う色合いになります。 |

浦添市美術館 蔵 |
18世紀頃作られた黒漆に螺鈿の作品。
この時代、日本の武家の好みに合わせ、黒漆が主流になりました。 |
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金色に輝く牡丹(ぼたん)の花…
光の当たり方によって虹色が浮かびます。
螺鈿の裏に、ごく薄い金ぱくをはっているからです。
数々の技法を駆使して作る螺鈿細工。夜光貝の神秘の光が宿っています。 |