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京都、西芳寺(さいほうじ)。 |

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通称、苔寺(こけでら)として有名な寺です。
大きな池を中心に広がる1万坪以上の庭が苔に覆われています。 |
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ここに生えている苔は、ホソバオキナゴケ、スギゴケなど100種類以上。
すべてが苔の緑に埋め尽くされた幽玄の世界です。 |
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日本中の苔を研究してきた秋山弘之さんです。
秋山「一番の基本は光合成をする一番原始的な植物…ふだんは目立たず重要ではないが、場所によっては環境をそのものを作る大きな要素となっているのがおもしろい所。」
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苔が作り出す世界に日本人は理想郷を見出しました。
苔鑑賞、壱のツボ、
「苔が生み出す理想の境地」 |
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30年以上、京都で苔を生産している竹村公三さんは、意外にも日光がふりそそぐ広大な畑で栽培していました。
竹村「お日さんがあたって、水をぱっとやれる状態にあり水はけが良くないと無理…
木漏れ日っていうかちょっと傘差したくらいの影があると、ほんま一番いい」
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陰を好むと思われがちな苔ですが実は日光が大切なのです。
そしてもうひとつ重要なのが水苔は空気中の水分を吸って生きています。
秋山「簡単な作りなので体の中からすぐ水を失ってしまい乾いた状態になる、夜明け前に朝露を吸うことによって体が新鮮な状態に戻って光合成をする、朝露が大切。」 |
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西芳寺の庭は鎌倉時代末期、禅宗の僧、夢窓疎石(むそう・そせき)によって作られました。
夢窓が造った庭は白砂に覆われた禅の修業の場でした。
しかし、庭はその後戦乱や天災で荒廃していきました。
そして数百年が過ぎた江戸時代になって、庭に苔が生え始めたと言われています。
秋山「せまい谷にあって西芳寺川が流れている、常に空気中の湿度が高い状態に保たれる。苔の生育にとって非常にいい」 |

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寺の横には、豊富な水をたたえた川が流れ、背後には山があり、こうした自然条件が四季を通じて高い湿気を保つのです。
一度は荒廃した庭は、次々と増える苔によって姿を変え美しくよみがえりました。
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人々は苔が一面に生い茂る庭に世俗と離れた静寂の世界を感じ取りました。
庭を作った夢窓疎石の禅の境地にも通じる世界でした。
苔が作りだす神秘の世界、それは日本人が見出した究極の理想郷なのです。 |