クリックで拡大表示 |
まずは、石に刻まれた彫りの美しさに注目しましょう。
長野県・高遠にある楊柳(ようりゅう)観音。
石の硬さを感じさせないしなやかな姿と、柔らかな面持ち。
江戸時代、この地で活躍した石工(いしく)の作品です。
|
クリックで拡大表示 |
手にした壺の表面には焼き物のようなざらついた質感。
|
クリックで拡大表示 |
軽やかにまとった衣の表面には、滑らかな布の流れが。
それぞれ、遠目には分からない細やかな彫りを見ることができます。
|
|
愛知県岡崎市。
観音像にノミを入れるのは、野仏を彫りつづけて28年になる石工・中澤茂政さんです。
|
|
愛知県岡崎市。
観音像にノミを入れるのは、野仏を彫りつづけて28年になる石工・中澤茂政さんです。
長年培ってきた経験で、硬い花崗岩(かこうがん)に表情をつけていきます。
中澤
「衣は非常に軽いものですから、その軽さを表現したり、逆に重たく見せたいものは粗い仕上げをすれば重たく見せることができます。
職人さん一人一人みんな違った個性を持っているので、ノミの入れ方とかそういうものによってすべて違う表情を見せるようになりますね」
|
クリックで拡大表示 |
石に刻まれていくノミの跡が、観音像に豊かな表情をつけています。
野仏鑑賞、壱のツボ。
「肌合いに千の表情」 |
クリックで拡大表示 |
石には「石目」と呼ばれる、割れやすい方向があります。
石工の仕事は、石目を見極めることから始まります。
中澤
「石の肌を触ってみると、こちらがツルツルこちらがザラザラということで・・・。この石の場合、目はこのように走っています。仏さんを作る場合は目に沿って作るので、目に逆らって仏さんを作ろうとすると、首が折れたり破損しやすいものになります」 |
クリックで拡大表示 |
粗く削り出された観音像。
昔ながらの手作業で、衣に表情をつけていきます。
まずは、粗い表面を少しずつ滑らかにします。
|
クリックで拡大表示
クリックで拡大表示 |
使うのはビシャンという道具。
縦横に切り込みが入ったビシャンの刃。
出したい表情に合わせて使い分けます。
|
クリックで拡大表示 |
繰り返し叩けば、凹凸がなくなり滑らかな表面に。
|
クリックで拡大表示 |
逆に、凹凸を残せば、ざらついた重々しい質感を出すことができます。
|
|
続いて使うのはタタキという道具。
衣に流れを出していきます。
細かい線を、流れを出したい方向に沿って深く、丁寧に。
|
|
細かな彫りが生み出す繊維の流れが、衣全体を軽やかに見せます。
ビシャンやタタキによって、石工たちは冷たい石に温かい表情をつけていくのです。
中澤
「僕が生まれるずっと前から石は石としてこの世に存在していたわけで、それを仏様に変えるというおこがましい事は考えていません。これは野に建てられてからやっと仏様になる。年月が経ってやっと仏様になるというものだと僕は思っています」
|
クリックで拡大表示 |
繊細な彫りが施された像は、野に出て初めて命が吹き込まれます。
龍の姿をした倶利迦羅不動(くりからふどう)。
長い年月の間、滝の水しぶきにさらされてきました。
豊かな造形から荘厳さが漂います。
|
|
タタキによって彫られた、天をも突き刺す鋭い剣(つるぎ)。
そこに絡みつく、龍の荒々しい肌合い。
あたかも、この滝壷から出現したかのような龍の姿。
激しい水の音とともに、霊気に満ちた龍のなき声が聞こえてきます。
|