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File62 独楽(こま)




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それは、日本の原風景。
子供のころ、夢中で遊んだ懐かしいオモチャ、独楽(こま)。
全国各地でさまざまなものが作られました。

これは、青森県津軽地方の伝統玩具「ずぐり独楽」。
雪の上でもよく回るように、軸の先が太く丸みをおびています。


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こちらは、「鳴り独楽」。
胴体を空洞にし、穴を開ける事で、回すと、音が出るようにできています。

平安時代の文献にも登場する、歴史ある独楽です。

日本の独楽の起源は古く、大陸から伝わったとも、国内で自然に生まれたとも言われています。

庶民の間で流行するようになったのは、江戸時代中期。
人々は、季節を問わず、独楽遊びに興じました。

それが、“曲独楽”と呼ばれる演芸にまで発展します。
曲独楽師の息もつかせぬ名人芸は、人々を釘付けにしました。



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江戸時代の曲独楽。
今ではひびが入り、回すことはできませんが、朱と黒の漆で仕上げた気品ある姿は、まさに工芸品と呼ぶにふさわしい美しさです。

独楽は、昔から縁起のいいものとされてきました。
その姿から「お金が回る」。
まっすぐ芯(しん)が通っていることから、「意志を貫く」といった、意味が込められています。


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こちらは、福岡県八女市に伝わる「飾り独楽」。
お祝い事があった時に贈られます。
漆をすり込み、木目を際立たせる、「すり漆」という技法で仕上げています。


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家を建てる際に、梁(はり)に埋めて、家族の繁栄を願った独楽。二つで一組。
主に、京都周辺で広まりました。
このように、日本人は、独楽にさまざまな思いを託してきたのです。

 

壱のツボ 回る姿の寝相を見よ


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まずは、回る姿に注目です。

全国で開かれている独楽回し大会。
子供たちの腕前もなかなかのもの。夢中になる姿は今も昔も変わりません。
指導しているのは、藤田由任さん。
全国を回って、子供たちに独楽の楽しさを伝えています。

こちらは藤田さんが作った、独楽の博物館。
40年以上に渡って集め続けた、8000点ものコレクションが展示されています。

 

藤田「飾ってて見るのも美しいんですけど、回ってこそ独楽なので、やっぱり一本足で、微動だにしないで、まっすぐ回ってる独楽っていうのは、ホントに見ていてきれいだなと思うんですけど。
そういうのを眠っている状態と言うんですけど、やっぱり寝相のいい独楽は見ててほれぼれしますね」


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まっすぐに立ち、眠っているように静かに回る姿。
独楽ならではの美しさです。


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独楽鑑賞、最初のツボは、
「回る姿の寝相を見よ」。


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60年以上に渡って、曲独楽を演じてきた三増紋也さん。
華麗な技を披露するために、なくてはならないのは、一定の姿勢で正確に回り続ける独楽です。
これは、扇子の上で独楽を回す芸。


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江戸時代に作られた曲独楽です。
漆がはがれ、ポツポツと何かが埋め込まれているのが見えます。
実はここに、眠る独楽の秘密が隠されているのです。

数少ない江戸独楽職人の一人、広井政昭さん。
この道、60年の達人です。

材料には、広葉樹のミズキを使います。
硬くて手触りのいい材質が適しているといいます。

まず、木材をロクロに取りつけ、形を作って行きます。
寝相よく回るようにするには、全体を均一に削らなければなりません。


色を付けた後、木の中心に軸をまっすぐ通します。
わずかなぶれも許されない、集中力を要する作業。


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一見、完成したように見えますが…
重心がずれて、まっすぐ回りません。
広井「軸を通した段階で100%大丈夫ということは、まずないです。
1年に1回くらい何もしなくても回ることはありますが、それはもう奇跡に近い」

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広井さんが、おもむろに回っている独楽の軸に、筆を近づけます。

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軸の一部分に絵の具がつきました。

広井「木って言うのは重い所と軽い所があるでしょ。
それで回転をすると遠心力で重い方が上にいっちゃうんですよ。
すると軽い方が下に行きますよね。
だから絵の具を付けると、そこにぶつかるわけですよね。すると、この大体真下当たりが独楽で言うと軽いんですよ」


独楽は回転させると、遠心力で重い部分は上に行く為、軸は、軽い方へ傾きます。
筆を近づけると、軽い部分に絵の具がつくのです。
この絵の具を手がかりに、軽い部分を特定し、バランスを調整します。


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軽い部分に穴を開け、そこに鉛を埋め込みます。
この作業を何度も繰り返し、微妙な調整を加えていくのです。

先ほど、ご紹介した江戸時代の曲独楽。
眠る独楽の秘密は、この鉛にありました。



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丹念に仕上げられた独楽。
回してみると、地面にまっすぐ立ち、一見、止まっているようにも見えます。
独楽が寝相よく眠っている姿です。


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曲独楽師の三増さんは、広井さんが作った独楽を、長年、使っています。
眠る独楽だからこそなし得る、名人芸。

お次は、刀の刃を独楽が渡ります。
刃を、寝相よく伝っていく様は、圧巻。
独楽の最も美しい姿が、ここにあります。

   

弐のツボ 玩具を超えた色彩美

今度は、色に注目しましょう。
江戸時代、独楽は子供の目を引くため、さまざまに色づけされました。
そんな鮮やかさにひかれ、500個以上の独楽を集めているという方がいます。

町田「独楽には、形の美しさ、色の美しさ、回した時の色彩の美しさ、そういうものがあるんですね。
私みたいにコレクションするには独楽を飾って、その色彩の美しさ、それが一番大事だと思うんですね。
子どものおもちゃを超えた芸術品としての独楽がたくさんあるんですね」


独楽鑑賞、二つ目のツボは、
「玩具を超えた色彩美」




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江戸時代、特に多く用いられたのは、朱色。
疫病などから身を守る厄よけの色とされていたからです。

こちらは、江戸の町に伝わってきた、華やかに色付けされた独楽。


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『江戸五色』と呼ばれる、五つの色が使われています。

江戸五色は、長寿を授け、災いをはらうと言われる伝統の色。
一つ一つに意味があります。
赤は、健康。黒は、力。黄色は、富。緑は、豊作。
そして、紫は、高貴なものの色。

この色の組み合わせに、子供の健やかな成長を願う気持ちが込められているのです。


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一方、こちらは京都の独楽。
公家の女性たちが遊んだ雅(みやび)な京独楽と呼ばれるもの。
質感も独特です。


京独楽職人の中村佳之さんに、作り方を見せていただきました。


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材料となるのは、木ではなく、なんと着物の生地。
京都ならではの優雅な染め物や織物を細く裁断し、幅をそろえていきます。

これを軸にのり付けし、巻きます。

配色や模様の取り合わせによって、得も言われぬ色彩美が生まれるのです。


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用いるのは、京都を代表する西陣織や友禅など。
あでやかな生地が、より一層、美しさを引き立てます。


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回すと、生地の柄が溶け合い、新たな色彩が立ち現われます。
玩具を超えた見事な独楽の色彩美。
たんのうして頂けましたか?


参のツボ からくりに江戸っ子のしゃれ


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江戸に伝わる独楽には、ユニークな仕掛けが施されてきました。
江戸独楽職人の広井さん。伝統的なからくり独楽も手がけてきました。

こちらは、ヤジロベーの両腕で独楽を回すと、殿様が陽気に動き出すユーモラスなもの。




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遊園地の乗り物のようなこちらは、イノシシたちが、一斉に回り始めます。


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独楽を回す事で、人形の手を上下に動かす仕掛け。
おいしそうに、そばをすすっています。


広井「本来おもちゃっていうのは楽しいもの。
その楽しさを追求すると結局笑う、笑っちゃう、そういうのをテーマとして、その中でやっぱり江戸っ子ですので、粋な、しゃれたものを作るように心がけています」


独楽鑑賞、最後のツボは、
「からくりに江戸っ子の洒落」



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こちらのからくり独楽は、独楽を回すと、下にいる蛇が音を立てて動き出すという楽しい作品。


作ったのは、独楽職人の小宮耕生さん。
江戸以来の伝統を受け継ぎながら、新しい仕掛けのからくり独楽を作っています。


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今や、日本はもとより、海外でも高い評価をうけているからくり独楽。
その魅力は、何と言っても、自分で独楽を回し、作品を動かすということ。
まるで、そこに命を吹き込むような、心躍る瞬間です。



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からくり独楽には、昔からちょっとした風刺や、作り手の思いが込められてきました。

こちらは、平和をテーマにした
小宮さんの作品。


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小宮「江戸独楽もたかが玩具ですけど、大衆の文化だと言うことが非常にポイントで、日々の喜びや悲しみや苦しみを風刺の精神で笑い飛ばすというところに特徴があります。
したがって我々は、その技術を受け継ぐものとして、そういう精神も受け継いで、現代的な今日の作品に吹き込んでいくことが大事なことと考えている」



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独楽は、古く懐かしいだけの玩具ではありません。
江戸っ子のしゃれや風刺の精神が今も受け継がれているのです。

今週の音楽

曲名
アーティスト名
It Could Happen To Me Buddy DeFranco
Sleep Chico Hamilton
St. Thomas Sonny Rollins
It Never Entered My Mind Miles Davis
The Pearls Wynton Marsalis
Opus And Interlude MJQ
Blues For Django And Stephane Stephane Grappelli
If I Were A Bell Miles Davis
I Wish I Knew Lee Morgan
Autumn In New York Buddy DeFranco
Minority Art Pepper
Vendone MJQ
Waltz For Debby Bill Evans
Bass On Balls Buddy DeFranco
Deep Creek Wynton Marsalis
The Morning After Chico Hamilton
Stardust Nat King Cole
But Not For Me Buddy DeFranco