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File43 友禅


壱のツボ 糸目糊(いとめのり)が生む自由な絵柄

友禅とはどんな着物なのか、みていきましょう。 
晴れやかな場で女性たちが着る、こうした、美しい色と柄を染めた着物。それが、友禅です。
世界でも例を見ない、華やかで複雑な染めです。
白い布に、絵のように自在に柄を染める。
江戸時代、友禅染の技法が生まれたことで初めて可能になりました。
時は元禄。京の絵師・宮崎友禅斎(みやざき ゆうぜんさい)のデザインした着物が人気を博したことから、「友禅染」と呼ばれるようになりました。

   

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こちらは、当時の最高傑作のひとつ。
多彩な色を用い、豪華な模様が一面に施されています。


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松と竹の模様をよーくご覧ください。
すべて、白く細い線で囲まれているのがおわかりですか。
このように、白い輪郭線で色を染め分けるのが、友禅染です。
白い線は、「糸目糊」と呼ばれる、糊の跡。これが、友禅染の命です。

友禅・最初のツボは、「糸目糊が生む自由な絵柄」。

白い線の秘密を探っていきましょう。

 

友禅のふるさと、京都。
田畑喜八 (たばた きはち)さん。200年前から友禅染を手がける家の五代目です。


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友禅の制作では、まず田畑さんが着物全体のデザインを決めます。
最初の作業は下絵描きです。
この下絵の線は、いずれ水で洗ったときに消えるものです。

次の工程が、「糸目糊置き」。これが、友禅染の要です。

下絵の線を糊でなぞっていきます。
糊で覆われた部分は、染料に染まりません。
あとで糊と下絵の線を洗い落とすと、糊を置いた部分が白い線として残るのです。


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糸のように細いから、「糸目糊」。
使うのは、この先金(さきがね)です。
細いもので、0.1ミリの線が描けます。
柄によって微妙に細さの違う先金を使い分けます。

駒井「まあ、糊が柄の形を決めてしまいますのでね。筆で描いたときにも太いとこやら、細いとこやらできますわね、絵で。それを、指先で調節しながらやっていくという形ですね。」

この糊の線が、模様の輪郭線となります。
ただ下絵をなぞるだけでは、いきいきとした表情は生まれません。一本一本の線に命を吹き込む技が必要です。


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次は、「色挿し (いろさし) 」。
輪郭線の中を、染めていく作業です。


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糸目糊の線が、染料が外へしみ出すのを防ぎます。今染めている赤は隣のピンクと混ざることはありません。
このため、一枚の着物をさまざまな色で染め分けることができるのです。


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「水元 (みずもと) 」と呼ばれる最後の工程。
ここで、糊や、余分な染料を洗い落とします。

江戸時代に生まれた友禅染。それは、糸目糊の技法によって初めて可能になった、画期的な染め物だったのです。

 

弐のツボ  水がはぐくむ鮮やかな色

それでは今度は色に注目してみましょう。
田畑さんに、祖父の代から伝わる、色見本帖をみせてもらいました。

田畑「これはね、うちの先々代から、ずっと以前から、うちで染めたものを、色本として貼りこんできたわけですね。これはぜんぶ勘定したことはないんですが、何万というより、何十万という色数があると思いますよ。」

一口に「赤」と言っても、じつにさまざま。友禅の作者たちは、微妙な色の表情を追い求めてきました。

田畑「友禅染というのは、森羅万象、あらゆるものを表現できるという力を持ってますのでね。いくらデザインがよくても、色の組み合わせが悪ければ駄作になりますしね。色が生命といってもいいくらいですね、染めは」


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多様な色の染めを支えてきたのが、水。
田畑さんの作品の水元を担当する工房です。田畑家では、昔から、京都の地下水を使うことにこだわってきました。

友禅・二つめのツボは、 「水がはぐくむ鮮やかな色」。


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京都とならぶ友禅の産地・金沢。
加賀友禅として知られてきました。町を流れる浅野川での友禅流しです。
こちらの地染職人・荒木さんは、浅野川の水にこだわってきました。

荒木 「昔から加賀友禅というのは水の芸術、水がどうしても必要、川に育てられたといってもいいくらいなんですよ。」

京都の地下水、金沢の川の水、それはどのような水なのでしょうか。

二つの水と、市販のミネラルウォーター。京都市産業技術研究所で、水の成分を調べていただきました。

染めに適しているかどうかは、水の硬度と、鉄分など金属の含有量が決め手となります。
調査の結果、京都と金沢の水は、カルシウムやマグネシウムの含有量が少ない「軟水」でした。硬度が高いと、染料が溶けにくいなど、染めの作業には不向きです。 
また、京都・金沢ともに、「鉄分を含まない」という共通点があることがわかりました。
鉄分は、染料と結びついて色をくすませるため、鮮やかな色が出にくいのです。

主席研究員・谷「職人さんの目といいますか、その感覚というのはすごく鋭いものですから、おそらく私たちが見てあまり気がつかないような差でも、おそらく敏感に感じられることだと思います。」

 

 


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金沢市立中村記念美術館 蔵

加賀友禅の人間国宝・木村雨山 (きむら うざん) による振り袖。


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四季の花や、鳥たちの姿が極彩色で染められています。

友禅の華麗な色。それは、ゆたかで良質の水に育まれてきたのです。

参のツボ まとって魅する華やかさ

加賀友禅作家の鶴見保次 (つるみ やすじ) さん。
デザインを考える際に、必ず等身大の着物の形にしてみます。


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まとったときの柄の大きさや位置を、的確につかみたいからだといいます。

鶴見「着物って言うのは、着た時の着姿が大事だからね。絵画だったらこれでバランスがとれているけど、着物の場合は見えないとこと見えるとこがあるでしょ。お尻がこの辺にあたるんですよ。この線が例えばこう来たら、流れとしてはきれいかもしれないけど、実際着ること考えたら、ちょうどお尻にこの線がかかると、気持ちよくないでしょ。」

鶴見さんは、着たときに最も美しく見える、柄の配置を考えていたのです。

鶴見「芸術品扱いされるより、着てもらった時が一番うれしいんでね。飾っとくもんではないのでね。」

友禅・最後のツボは「まとって魅する華やかさ」。

 

東京・日本橋のしにせ百貨店。
華やかな 友禅の着物が並びます。さまざまな色や柄。この中から、どうやって自分に似合う一枚を探せばよいのでしょうか。
売り場を訪れているのは、中島さん親子。 
ベテラン販売員の相馬さんに、娘の怜子さんに似合う一枚を選んでもらいます。

 

まずは、色から。
怜子さんが好きだという水色から着てみました。


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しかし、この淡い水色は、どこかさびしげな印象。そこで、鮮やかな水色を当ててみました。
着物だけ見ると、とても華やかですが、怜子さんの場合は、少し顔が沈んで見えます。




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今度はピンクを着てみます。
このほうが、怜子さんの雰囲気に合うようです。
顔が、ほん糊と明るく見えませんか?
全身を包み込む着物にとって色選びは何より大切。地の色によって顔の印象がずいぶん変わります。

相馬「とにかく着ていただく。洋服の世界とは違うので、鏡の中の自分を見て、この色が似合うんだという再発見があるはずなんですね」


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次のポイントは、柄。

赤い橘 (たちばな) の模様。そして紅葉 (もみじ) の模様。
地色が同じ、この2枚を比べてみましょう。
紅葉の着物は、柄の色が地味なため、若い怜子さんにはさびしい印象です。
そこで、赤い橘の柄を当ててみると・・・
ほら、ぱっと顔が明るくなりました。


色と柄が織り成す、友禅の美。
それは、着る人との調和によって一層輝きを増すのです。

今週の音楽

 

曲名
アーティスト名
AS TIME GOES BY STEPHANE GRAPPELLI
MOONLIGHT IN VERMONT JONNY SMITH
SATIN DOLL THE THREE SOUNDS
SEVEN MINDS JIMMY PONDER
ITS ALL IN THE GAME DINAH SHORE
MEMORIES OF YOU EDDIE MILLER
EASY LISTENING BLUES OSCAR PETERSON
ROSE ROOM ALBERT NICHOLAS
I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL NINA SIMONE
SWEET LORRAINE JIMMY NOONE
DEED I DO STEPHANE GRAPPELLI
GEORGIA ON MY MIND DAVID MATTHEWS
MY FUNNY VALENTINE DAVID MATTHEWS
DOLORES FRANK SINATRA