手ぬぐい、袋、のれんなど、江戸からの伝統的な柄やデザインは今でも人気があります。
こちらの手ぬぐいは、「市松模様」。佐野川市松(さのがわいちまつ)という歌舞伎役者がはかまに用いたことから、その名がつきました。 紺と白が交互に続くシンプルな柄が“粋”とされたのです。
この文様は「青海波(せいがいは)」と言います。弧を描くように組み合わされた大小の曲線。 波が幾重にも連なり、海原が広がります。海や川に親しんだ江戸っ子の好みの柄です。
江戸の伝統的な文様にこだわって、着物の柄を染めている中條隆一(なかじょうりゅういち)さん。
こちらは鹿をモチーフにした柄です。スッキリとした線だけで表された姿が“粋”とされました。
中條「つないで行くとですね、大胆な柄になるんですよ、型はちっちゃいけれども、これをつないで行くと、大きな文様になるんですよ。これは、ものすごい魅力です。」
「江戸の文様」、最初の壺は 『繰り返しに「粋」を見る』
連続した柄を染めるために使われるのは、たった一枚の型紙です。 和紙でできた型紙は、何度も使えるように柿しぶと漆を塗って強くします。一反の生地で、型紙は50回以上も繰り返し使われるのです。
江戸時代には、型紙を使った染めの技術が発達し、人々はデザインを競い合うようになったのです。
染め師の小宮康孝(こみややすたか)さんは、伝統の文様を伝えていくために、江戸時代の型紙を3千点近く集めて来ました。
これらの型紙には江戸っ子の美学が詰まっていると言います。
こちらの型紙は、杉の木立に、落葉が舞っているように見えますが、近づいてみると・・・
この葉っぱのようなもの、実は亀なんです。杉を波に見立て、亀は葉のように描く。
こちらは、桜の花びらの中に水鳥が浮かんでいます。 その水鳥のお腹のところに「青海波」の文様がありますね。
繰り返しの文様にひねりを加える。これが、江戸っ子の「粋」なんです。
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「粋」の次は、洒落と、シャレこみましょう。
祭りは江戸の華。 盛り上がりに欠かせないのが、 そろいの衣装「半纏(はんてん)」。
半纏は江戸の町人たちが祭りや仕事の際に愛用しました。
印半纏に魅せられ、写真を撮り続けている写真家の岩田アキラさん。 印半纏にはどんな洒落が隠されているのでしょうか?
岩田「この腰のあたりの、腰地模様ですね。これが仕事を表しているわけですね。身分証明と同じ意味合い。 4つの花が菱形になっているので、これは植木屋さん。」
印半纏の文様は住んでいる地域も表しています。 この祭り半纏の大紋は「三社」。 浅草・三社祭りの印です。
こちらは仕事の時に着た印半纏。 さて、どんな職人さんがまとっていたのでしょうか?
遊び心にあふれた印半纏。 しかし、それだけではありません。
岩田「江戸っ子の心意気というのが内面的に入っていて、着てる方が誇りを持って自分の職業につ いている。 それで江戸の町を自分たちが支えていると、心意気を表現する力が印半纏の中には含まれているんじゃないかと思います。」
洒落をきかせた江戸の文様。そこには、江戸っ子の仕事への誇りや町への愛情までもが込められていたのです。
最後は凄く小さな文様、「小紋」に注目。
遠くから見ると無地にも見える江戸小紋。しかしそこにも文様が染められているのです。
イラストレーターのわたせせいぞうさんは、江戸小紋の大ファン。 わたせ「江戸の人っていうのは表面はさらりとして、中に粋なところをみせるっていう、独特の文化を生んでいったと思うんですよね。隠すっていうか、全部見せないっていうか、そういうところに美を感じてたんじゃないですかね。」
江戸小紋は、どのように染められるのか。五月女利光(さおとめとしみつ)さんに、その技を見せて頂きました。
使うのはやはり、たった一枚の型紙。これをつないで反物に柄を染めます。
五月女「やってくとだんだん細かくなってきちゃうんですね。最初、こんな大きな柄でも、最終的にはこんなちっちゃくなっちゃうとか。意地の張り合いみたいなところがあります、どうだいこんなもんでっていうような。」
江戸っ子の意地が、こんな細やかな小紋を生み出したんですね。
粋を愛し、洒落を楽しみ、意地を貫く江戸っ子たち。 その心意気が江戸の文様に染められているのです。
Marble arch
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