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2021年05月27日 (木)避難勧告が廃止?変わった避難情報のポイント教えます

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「“避難指示”ってどれくらい深刻なの?そう言われても、いつどんなタイミングで避難したらいいの?」

 

そんな風に思ったことがある人もいるのではないでしょうか。

 

大雨などで災害の危険が迫る時は、自治体が避難情報を発表しますが、この情報が5月から大きく変わりました。

 

変更点のポイントなどをわかりやすくお伝えします。

 

(津放送局 石塚和明 記者)

 

レベル3“高齢者等避難”

 

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避難指示などの情報や気象警報は、5段階の警戒レベルにわかれています。

 

図のうち、左側が従来の避難情報、右側が新しい避難情報になります。

 

変更されたところに絞って順番に見ていきましょう。

 

まず、レベル3。「避難準備の情報」が「高齢者等避難」に変わりました。

 

近年の災害では、高齢者の犠牲が後を絶ちません。

 

どんな人たちがまず避難が必要なのか、対象をより明確にすることで、いち早い避難につなげようという狙いです。

 

高齢者や体の不自由な人など、移動に時間のかかる人は、この情報が出た段階で避難を。

 

ただ、このほかの人も避難場所を確認したり、持ち出すものを準備したりといったことを始めてください。

 

そして、危険を感じたら、次のレベルを待たずに自主的に避難を始めてください。

 

高齢者を強調していますが、高齢者のためのだけの情報ではないということに注意が必要です。

 

レベル4“避難指示”

 

続いてレベル4。従来の情報では「避難指示」と「避難勧告」がありましたが、2つの違いをご存じでしたでしょうか。

 

「避難勧告」は避難を開始するべきタイミング、「避難指示」はもうそのタイミングを過ぎていて、身の安全に配慮しながら速やかな避難が必要とされる段階です。

 

ただ、この2つの情報、意味が正しく理解されていないという課題がありました。

 

内閣府が全国の人に行ったアンケートで、2つの情報を正確に理解していたのは、17.7%にとどまっていたのです。

 

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「避難指示」よりも「避難勧告」のほうが差し迫った状態にあると思っている人も少なくなかったようです。

 

そこで、今回、2つの情報が一本化されました。

 

「避難勧告」は廃止され、レベル4は「避難指示」のみに一本化されました。

 

危険な場所にいる人は全員、避難が必要な段階です。

 

これまでの情報では、「まだ避難勧告だから避難指示が出てから避難すればいいか」と思ってしまう人もいたかもしれませんが、一本化でわかりやすくなったのではないでしょうか。

 

レベル5“緊急安全確保”

 

そしてレベル5。これまでの「災害発生情報」では取るべき行動がわかりにくいなどとして、「緊急安全確保」に変わりました。

 

住民がとるべき行動は「命を守って!」です。

 

災害が発生、もしくは切迫している時に発表されます。

 

まだ、危険な場所にいる人は、建物の2階以上や崖の反対側に移動するなど安全を確保してください。

 

あくまで、避難し遅れた人がとる行動であって、避難場所への移動はすでに手遅れになっているおそれがある段階です。

 

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レベル4の段階で、「まだレベル5があるから大丈夫」とは絶対思わないでください。

 

大切なのは日ごろからの準備

 

ただ、災害が迫っているから急に避難する、というのはなかなか難しいかもしれません。

 

日ごろから身の回りにある災害のリスクを確認しておくことが大切です。

 

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洪水で浸水する範囲などが確認できるハザードマップをチェックしておいてください。

 

そして、どこにどうやって避難したら良いのかを調べておいたり、実際に歩いてみたりすることも重要です。

 

東海地方のことしの梅雨入りは5月16日と、平年よりも21日も早い発表となりました。

 

大雨による災害がいつおかしくないシーズンに入っています。

 

日ごろからの備えを進めてください。

 

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石塚和明(2016年入局 鳥取局を経て現職 好きな映画は「ディストラクション・ベイビーズ」)

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:16:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年04月09日 (金)海女さんも 海水浴客も これを見たらすぐ逃げて!

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「皆さん!急いで逃げてください!!」

 

ライフセーバーが周囲の人に声をかけ、赤と白の格子模様の旗を左右に大きく振ります。

 

海にいる人に津波の危険を視覚的に知らせる「津波フラッグ」です。

 

去年、運用が始まりましたが、なかなか普及が進まないといいます。

 

いったいなぜでしょうか。

 

(津放送局記者 石塚和明)

 

 “津波フラッグ”とは

 

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津波フラッグは、気象庁が視覚的に津波の警戒を呼びかける手段として定めている赤と白の格子模様の旗です。

 

大津波警報や津波警報、それに津波注意報が発表された場合、海岸でライフセイバーなどが振ったり、建物に掲示したりします。

 

海水浴場などで泳いでいるときに、この旗を見かけたら、すぐに海から離れて高い場所に避難する必要があります。

 

きっかけは東日本大震災も普及進まず

 

導入のきっかけは、東日本大震災でした。

 

津波の警戒を呼びかける音声が聞き取りにくい海岸付近で亡くなったとみられる人がいたほか、岩手、宮城、福島の3県では、聴覚に障害のある人の死亡率が障害のない人に比べて2倍高くなったのです。

 

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そこで気象庁は、去年6月から「津波フラッグ」の運用を始めました。

 

ただ普及は進んでいません。

 

気象庁がことし2月までに、海水浴場のある全国446の市町村を調査したところ、「導入している」と回答した市町村は63で、全体の14%にとどまりました。

 

新型コロナウイルスの影響で、自治体の担当者と打ち合わせができなかったことなどが影響しているといいます。

 

三重県内では海女さんも避難

 

三重県内ではどうでしょうか。

 

主要な海水浴場がある沿岸部の市や町に問い合わせてみました。

 

このうち熊野市では、市内にある2つの海水浴場に導入済みで、津市と鈴鹿市、志摩市ではことしから導入予定だといいます。

 

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しかし、それ以外の多くは「導入するか検討段階」という状態です。

導入を決めている中でユニークなのが志摩市です。

 

海女の数が全国で一番多い三重県ですが、志摩市でも海女の素もぐり漁が盛んです。

 

そこで、海水浴場だけでなく、漁場の近くにも導入することにしました。

 

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また県内では啓発に向けた取り組みも進められています。

 

去年8月、鳥羽市の海水浴場では、津波が来るという想定で避難訓練が行われ、その際に津波フラッグが活用されました。

 

フラッグは、海水浴場を管理する町内会と漁協が独自に購入して導入したといいます。

 

“導入難しい”自治体も…

 

一方で、導入が難しいと話す地域もあります。

 

例えば、県南部の尾鷲市では南海トラフ巨大地震が発生した場合、早ければ津波が5分ほどで到達するところもあります。

 

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市の担当者は「旗を振る人も危険ではないか」として、導入は現実的ではないとしています。

 

気象庁も、安全が確保されない場合は必ずしも旗を振ったり、掲示しなくてもよいとしていて、難しい問題です。

 

“まずは存在を知って”

 

音声の聞き取りにくい海岸で、どう警戒を呼びかけるか、地域の実情にあった対応が求められますが、まず進めなくてはいけないのが認知度をあげることです。

 

せっかく導入されても、何の意味があるのか伝わらなければ意味がありません。

 

そこで先月、気象庁と日本ライフセービング協会が共同で啓発動画を制作しました。

 

津波フラッグの役割や、導入された経緯などがわかりやすくまとまっていて、日本ライフセービング協会のYouTubeチャンネルなどで閲覧することができます。

 

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こうした動画なども活用し、津波から1人でも多くの命を守るため、津波フラッグの存在を家族や友人など、周りの人たちにもぜひ知らせてください。

 

 

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石塚和明(2016年入局 鳥取局を経て現職 好きな映画は「パルプ・フィクション」)

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


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