2022年08月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:網(あみ)

天   絵日記に網よりデカイかぶと虫/田舎のマダム さん

橋倉久美子先生 一読、片手に虫取り網、片手にカブトムシを持ってニコニコ顔で立っている子どもを描いたクレヨン画が浮かんだ。もちろんカブトムシは、虫取り網や自分の顔、頭上で輝く太陽よりも大きく描かれている。添えられた絵日記の文字も、マス目をはみ出していることだろう。夏休みも終盤の今にぴったりの句である。

 題の「網」が、名脇役となってうまく生かされている。「デカイ」も、「大きい」では音数が合わないために探した言葉かもしれないが、子どもの喜びや自慢気な表情が浮かんでくる、うまい言葉選びになった。

地 ごみ置場網にカラスの思案顔/磯の香り さん

橋倉久美子先生 「ごみ置場」「網」「カラス」「思案顔」と、名詞だけを助詞でつないだ珍しい作りの句だが、すっきりとまとまっており、情景も十分伝わってくる。

 カラスは、良くも悪くも人間に最も身近な鳥のひとつ。大きいし、その辺りを歩いている姿もよく見かけるから、顔つきまで見えてしまうことも少なくない。それだけに「思案顔」もいかにもありえそうで、小首をかしげてごみ置場の前にたたずむカラスの姿が目に浮かぶ。でも、賢いカラスは網をめくりあげることだってあるらしいので、どうぞご注意を。

人 通信の網で息苦しい地球/戴 けいこ さん

橋倉久美子先生 人間の生活そのものが地球に負荷をかけているのは、もはや言うまでもないことである。具体的にはエネルギーの消費やごみの排出などがすぐ頭に浮かぶが、通信網が地球を息苦しくしているとは、意表を突かれた。

 しかし、実際に指一本で世界とつながることのできる現実を考えると、細い糸で何重にも取り巻かれた、まるで繭の中にいるような地球が頭に浮かび、確かに息苦しい気持ちになった。

 

<入選>

遊園地網が子どもを待っている/アナログ さん

漁網の破れ見つけた幸運な魚/火の鳥 さん

張り巡らした網に噂が引っかかる/久実 さん

網目からこぼれるように忘れ物/ちょこべえ さん

法の網潜るためにも学ぶ法/かりんとう さん

金網で守られていた反抗期/汐海  岬 さん

網棚に短命嘆くスポーツ紙/福村 まこと さん

冷房を効かせた部屋に張る網戸/近江 菫花 さん

鉄道網次第に穴が広くなり/瑠珂 さん

義理堅い鮭を迎える定置網/牛美 さん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子 先生

 344句のご投句をいただきました。少し難しい題だったようですが、逆に様々な発想の句があったように思います。「水切りネット」「園芸ネット」など、「ネット」の句もありました。題との関わりとして問題はなく、入選候補の句もありましたが、結果的に「網」という言葉を使った句ばかりになりました。

 「網(あみ)」と「綱(つな)」は紛らわしいので、あえて題にふりがなをつけたのですが、手書きのご投句には書き間違いもありました。川柳は短いだけに、1文字1文字に重みがあり、没の原因にもなりかねません。誤字、脱字、送り仮名の間違い、変換ミスなどがないか、もう一度確かめてからご投句ください。わかり切っていると思う言葉でも、辞書を引いて確かめることも大切です。

 

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:21:03


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