2019年10月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:読む
経を読む真水に戻れそうだから/水たまりさん
人間社会を生き続けるということは、善に傾き、悪に傾きの繰り返し。無垢(むく)な魂は、世の中の垢(あか)をつけて徐々に汚れてゆく。真水が濁水になるように。しかし、人生も終章に近くなるにつれて、人はその汚れを落とし、心を静めて無に還りたくなるのである。「戻れそうだから」は「戻りたい」という作者の祈り。その祈りが胸に沁(し)みてくる。
読心術マスターしたら生きられぬ/さだえばあちゃんさん
表情や動きから、人の心の内容を直感的に読み取る術(すべ)を会得したとしたら……。考えるだけで恐ろしい。心の内を覗いてみたい人がいるとしても、その本心は知らない方がいい。
もし、相手の態度と心の中の想(おも)いが真逆だったりしたら、人間不信に陥り闇を彷徨(さまよ)うことになる。自滅に繋(つな)がるだろう。
ある意味、人を疑わないことが無事にこの世を生きる術かも知れない。
あなた今ぼくを斜め読みしたでしょ/橙葉さん
<あなた今、ぼくを疑ったね><信用してない顔してるよ>を内心に込めて、「斜め読みしたでしょ」と言い放った作者。相手は異性? 仲間? 誰? などと想像が膨らむ。
穿(うが)ちを含んだ会話川柳の味を楽しみたい。
<入選>
サザエさん読んで忘れた胃の痛み/磯の香りさん
下書きを五度読み返しプロポーズ/汐海 岬さん
断捨離へ読み返してるラブレター/久実さん
妻よりも僕の心を読むペット/秋明菊さん
消費税アップの家計読めません/つれづれさん
台風に説教したい「空気読め!」/おーちゃんさん
教科書を読む先生の国訛り/宮のふみさん
読める字の前だけに立つ書道展/西井茜雲さん
読み終えたページにコスモスのしおり/やんちゃんさん
裏の裏読むと人相悪くなる/颯爽さん
宮村典子先生
「読む」というお題は案外作りやすいと思いましたが、意外なものを読んだ作品が少なかったですね。「本を読む」「新聞を読む」「心を読む」「顔色を読む」などの常套(じょうとう)句が多く、そこから、それらをどう読むかの苦心が足りなかった気がします。よくある発想(常套句)だとしても、横から、斜めから、後ろから眺め直すと、言い得て妙な句に変身するでしょう。
多作もよろしいですが、一句を大事に生かす努力も大事です!天・地・人には<苦心>がありました。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50