2019年08月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:踊る

天 蟻の子の小さな嘘に踊る象/夜半亭あぶらー虫さん

宮村典子先生 立派な肩書を持ち、高い地位にあるが故に真実を見過ごしてしまう人間を象に喩(たと)え、弱い立場でつい嘘(うそ)をついてしまう人間を蟻(あり)の子に喩えて、人間社会を痛烈な視点で詠んでいる。力持ちになると気付かないうちに驕(おご)りが始まるのも人間の性(さが)かもしれない。しかし、気付かないところから崩れだすこともある。心細く生きると正義を見失ってしまうかもしれない。句は、比喩を効かして、他のどのような場面にもあり得る人間の姿を映す。

 

地 踊りたくなったら一人でも踊る/アラレさん

宮村典子先生 あれこれと忠告してくれたり、誘ってくれたり、うっとうしいほど世話をしてくれる人がいる。そんな人には「気にかけていただいて有難(ありがた)いですが、ほっといてください」と言いたくなる。が、普通はなかなか言えないものである。
 相手は、善意の押し売りをしているとは思っていないのだから。作者は、「本当にやりたいことは一人でもやる」という芯の強さで自分を守りながら、誰とでも楽しく踊って(行動して)いる気がする。共鳴したい。

 

人 終わらないこの世は仮面舞踏会/かぐや姫さん

宮村典子先生 生きることの難しさへの溜息(ためいき)。人の目を気にしないで、素のままの自分で生きたい……、言いたいことを言い、やりたいことをやって生きてみたい……という思いは誰にもあるが、何より「人間らしく生きる」という自制心を尊ぶ私たちは、無意識の意識で「らしく」を演じているのかも。「我慢」という仮面をつけて、この世の限りを懸命に生きていくしかないのだろうか。なんだか切ない。

 

<入選>

遅刻まで5分前髪踊りだす/汐海 岬さん

フラダンスシニアの笑顔べっぴんに/つれづれさん

ラブレターゴシック体も踊ってる/ゆみさん

白亜紀の恐竜踊る孫の絵で/スイッチさん

マドンナが来ると宴会踊りだす/ほのぼのさん

マネキンもガラスの靴で踊る夢/福村まことさん

踊るまでずっと拍手をし続ける/まゆゆさん

盆踊り炭坑節は外せない/葉ざくらさん

北斎の波にサーファー踊り出す/颯爽さん

イヤホンをつけて静かな盆踊り/さだえばあちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

  「踊る」というお題に対して、動作的(行動)な踊りや、心理的な踊りを寄せていただきましたが、もう一工夫欲しいなという作品が多かったですね。 そのままを書いてしまうと味が足りません。川柳にも調味料が必要なのです。料理と同じですね。調味料の匙(さじ)加減で、不味(まず)かったり美味(おい)しかったり。自分だけの味(オリジナル)を出すために、自分だけの川柳調味料(好奇心)を探ってみてください。天・地・人はとてもいい味が出ています。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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