2016年12月16日 (金)【みえDE川柳】 お題:ドラマ
顔の皺だけでドラマが出来上がる/加藤当白さん
老齢になるとほとんどの人の顔に皺(しわ)が出来てくる(まれに、皺のない人もいるが)。額の皺、眉間の皺、顔を掘る深い皺、顔面に広がるクチャクチヤの皺は、それぞれ厳しい人生を越えてきた印のように思えるし、生き方の重さを感じる。皺が人生を語っているのである。発想的にはよくある句かも知れないが、「だけで」「出来上がる」と決めているところに、人間を探り、人間を生きる作者の強い思いがある。
追伸で恋のドラマを終わらせる/汐海岬さん
「追伸」とは手紙などで本文の後にさらに書き加える文で、書き忘れたことや付け加えたいことをいわゆる書き足すこと。書き忘れた気持ちを、そうそう…と緩く書き伝えるものだと思う。この句、別れたいと思いながら何となく行きつ戻りつの想(おも)いを綴(つづ)った挙句に〈追伸、お別れします。〉としたのなら、あまりにもキツイではないか、と言いたいところだが、「追伸」に恋のドラマを絡ませた着想の凄(すご)さを評価する。
真っすぐに行くのも曲がるのもドラマ/きゅうりさん
ひたすら自分に正直に、真(ま)っ直(す)ぐに生きる人生って潔いと思うが、なかなかそういうわけにはいかないのが現世で、その場、その時(とき)の空気を読んで、意思とは別に流れに身を任せる方が良い場合もある。その両方を生き分けていくことこそが上手な生き方かも知れない。どのように生きてもそこには人生のドラマがある。
<入選>
朝ドラで毎朝焦がす目玉焼き/西井茜雲さん
お父さん掴みましたよ遅い春/わんすモアさん
想定外オリンピックに見るドラマ/麦乃さん
トランプのドラマの筋が読めません/福笑いさん
空き家にもドラマがあった散歩道/夏椿さん
同居して筋書きのないサスペンス/あそかさん
迫真の演技で妻は涙ぐむ/やんちゃんさん
深夜便十色のドラマ乗せて発つ/喜屋武白雨さん
ふとん蹴って始まる一日のドラマ/あんころ餅さん
老老介護ふたり芝居の幕が開く/草かんむりさん
宮村典子先生
一番多かったのが履歴書、続いて家計簿に纏(まつ)わるドラマでした。日記帳、朝ドラも多かったですね。とんでもないドラマを期待していましたが届きませんでした。五七五で意外なドラマを創作(フィクション)するのも川柳の楽しさ。聞く人読む人を驚かせたり、感動させたいものです。生きることは筋書のない真実の(ノンフィクション)ドラマです。そのドラマを五七五(川柳)で綴っていけばそれは自分物語になるはずです。命の物語になるはずです。続けよう川柳ですね。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50