旅館がコロナで"ヒマ"だからダンスしたらバズった件
旅館の従業員が、音楽に合わせてキレッキレッのダンスを披露。
新型コロナウイルスの影響で“ヒマ”だからとTikTokで公開した動画がまさかの100万回再生!
なぜ動画はなぜバズったの?そして、動画に込めた思いとは?
苦境の旅館、起死回生の舞台裏です。
(津放送局 記者 周防則志)
“ヒマ”だから始めたTikTok
「ヒマでぼーっとしていてもしかたないし。自粛で、気持ちが下がっていく中で、皆さんに元気を届けられたらいいなと。1本あげてダメだったら、やめとこうくらいのそんな軽い気持ちで始めましたね」
TikTokで初めて動画を公開した時のことについて、「鳥羽ビューホテル花真珠」のおかみ、迫間優子さんは、そう語りました。
例年、伊勢神宮への参拝者など年始のシーズンは多くの観光客が訪れますが、新型コロナウイルスの影響で激減。
当時は、愛知県などで緊急事態宣言が出ていたこともあり、宿泊客は去年の2割程度に落ち込み、焦りも感じていたという迫間さん。
でも、お客の皆さんも旅行に行けず、つらい思いをしているはず。
そんな時だからこそできることは何か、そう考えた中でたどり着いたのが、TikTokだったといいます。
公開後すぐに100万回再生
最初に動画を投稿したのはことし2月。
ホテルの男性従業員3人が音楽に合わせて軽快に踊る動画でした。
公開するとすぐに「ホテルのスタッフと思えないほどかっこいい!」と話題に。
ほんの数日で100万回再生を超え、バズったのです。
「公開して1時間で数千、時間が経つごとに、数万、数10万とどんどん増えていったので驚きましたね。ここまでバズると思っていなかったので、うれしさとこれからへの不安が入り交じったような気持ちでした」(迫間さん)。
“動画見て来た”という客も!
その後、感染状況がいったんは落ち着き、3月から5月の大型連休にかけては予約の埋まり具合も次第に回復。
しかし、感染状況が悪くなると、また宿泊客は減ってしまう、その繰り返しだったといいます。
そうした中でも、TikTokの動画は着実にお客に届きつつあるとといいます。
この日も、「TikTokを見て来た」という女性が宿泊に。
「今、旅行先を調べるのって、大体TikTokかインスタグラムなんですよ。TikTokで見たスタッフさんがいるかなと思って。一緒に写真を撮りたいなと思っていたのでよかった」とのこと。
TikTokがきっかけでファンになったという人が泊まりにくることも少なくないと言います。
こうした1つ1つの反響が、スタッフのモチベーションにもつながっています。
「TikTokなど、ネットで寄せられる感想も嬉しいですけれど、直接泊まりに来てくださって、言葉をかけてもらえるのはありがたいです。動画が集客に結びついているなと実感しますし、何よりご覧になった皆さんに元気を届けられているんだなと思うと、やりがいを感じますね」(フロントスタッフ 加藤皓信さん)
地域全体で盛り上がる
鳥羽ビューホテルでは、旅館業のすそ野の広さも知ってもらおうと、新たなチャレンジも進めています。
地元の養殖業者や、清掃業者、それに地域の観光地…。
旅館は、それだけで成り立つことはできず、地域のいろいろな産業や働く人たちと関わっているからこそやっていける存在です。
旅館だけのPRをするのではなく、地域全体を盛り上げていこうと、地元のさまざまな人や施設とコラボした動画を作り始めたのです。
アフターコロナを見据え
今回、従業員たちが訪れたのは、鳥羽水族館。
伊勢志摩地域を代表する観光地のうちの1つです。
スナメリやジュゴンなど、観光客にも人気の動物たちと一緒に動画を撮りました。
さらに、この日は、鳥羽市のお隣、伊勢市の旅館「海の蝶」ともコラボ。
この旅館、実は、鳥羽ビューホテルの取り組みを見て、TikTokを始めたといいます。
「どこの旅館も厳しい状況で、気持ちも落ち込んでいると思います。こんな時だからこそ、みんなで協力して旅館どうし、三重県を盛り上げたいなと思ってコラボすることになりました」(海の蝶 スタッフ)
2つの旅館のスタッフもすっかり息が合い、予定していた撮影を終えたときのことでした。
急遽、水族館の従業員も一緒に動画の撮影に加わろうという話になりました。
厳しい状況の中、地域全体で頑張っていきたい。
その場にいたみんなが思いを1つにすることができた瞬間でした。
「コロナ禍が終わった時に、伊勢志摩・鳥羽というのが一番行ってみたい観光地になってほしい」
鳥羽ビューホテルの迫間さんは、そのように語っています。
“アフターコロナ”を見据え、今は、胸躍る動画で魅力を届けたい。
旅館のにぎわいが戻る時を信じ、取り組みは地域を巻き込んで広がっています。
周防則志 2020年入局
“地域の課題を解決する”報道を目指している