2021年2月26日

【みえDE川柳】 お題:紙

天 ちり紙を連れて繰り出す春の街/汐海 岬さん

橋倉久美子先生 季語を用いることが原則の俳句と違い、川柳は季節に関わる約束事はない。とはいえ、あまりに季節外れの句は場違いな印象を受けるし、今の季節ならではの実感句は訴える力が強い。
 この句は一読、花粉症の句とわかる。「春の街」に「繰り出す」といううきうきした場面なのに、「ちり紙」をまるでお供のように「連れて」行かなくてはならないというギャップがおかしい。「ティッシュ」ではなく「ちり紙」という古風な言い方も、アンバランスな雰囲気を際立たせている。季節を詠んで成功した句である。

 

地 折り紙が折られるままに身をまかせ/せいじさん

橋倉久美子先生 折り紙の句はたくさんあったが、折る立場や、折り上がった鶴、だまし舟などを詠んだ句が多かったように思う。ものの立場になって考えてみるのは、川柳を作るうえでのテクニックの一つだが、この句は、今まさに折られている最中の紙の立場で詠んでいるところがユニークである。
 「折られるままに」とか「身をまかせ」という言葉から、この折り紙が無抵抗に折られていることが察せられる。本当はお雛様に折られたかったのに、かぶとになってしまったのかもしれない。

 

人 壁紙を替えて臨んだWEB会議/ごん太さん

橋倉久美子先生 新型コロナ流行に伴い、ここ1年ほどで仕事や会議、飲み会から墓参りまで、「WEB○○」や「リモート○○」が一気に広まった。在宅で様々なことができる利点がある反面、人とのふれあいの減少や在宅続きによるストレスなどの問題点もわかってきた。期せずして私生活をのぞかれてしまうのもその一つ。自身のカメラ映り以上に、背景に気を遣った人も多いだろう。
 実際の壁紙かネット上の壁紙かはわからないが、作者は新しいものに替え、心機一転して大事な会議に臨んだのだ。現代性のある句である。

 

<入選>

包装紙つまらないもの引き立てる/茶唄鼓さん

紙吹雪撒かれた後の大仕事/ウクレレみっちゃんさん

のし紙が祝う気持ちを助演する/柳原良彦さん

検査日は共に緊張紙コップ/風船さん

新聞紙天ぷら載せて役目終え/かりんとうさん

上質紙うまそうに飲むシュレッダー/猫原えみさん

細部まで四角四面の方眼紙/福村まことさん

もう一度飛べる気でいる再生紙/水たまりさん

請求書になると威張って見える紙/三重ちゃんさん

人生を紙一枚で区切られる/船岡五郎さん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子先生

 

 493句ものたくさんの投稿をいただきました。題が「紙」という身近なものだったので、作りやすかったのかもしれません。いろいろな紙を入選としましたが、この他にもノート、半紙、手紙、色紙、紙芝居、紙おむつ、吸い取り紙など様々な紙が詠まれていて、私たちの生活に紙が欠かせないことを改めて感じました。
 少し残念だったのは、「神対応=紙対応」「神頼み=紙頼み」のような、「神」と「紙」をひっかけた句が何句かあったことです。「川柳イコールおもしろいもの」という先入観から、しゃれを句にする方がいらっしゃいますが、川柳は言葉遊びではありません。笑いは川柳の大切な要素ですが、単に言葉で遊ぶのではなく、暮らしや社会の中に潜んでいる、ちょっとした気付きやおかしさを探してほしいと思います。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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