【みえDE川柳】 お題:灯る
踏ん切りの尾灯が道なりに曲がる/橙葉さん
何かに迷っている作者。右か左か、それとも善か悪か? 心理的な悩みのような気がする。踏ん切りの尾灯は、中道(妥当)を選び、やっぱりの「道なり」を行く。「人生ってこういうもんさ」と踏むブレーキには少しの諦めと安堵(あんど)感がある。
居酒屋の灯は野武士への応援歌/渡辺勇三さん
「野武士」とは、主君を持たないいわゆるフリーの武士というところ。この句の「野武士」は、頑張っているサラリーマンや庶民だろう。居酒屋の灯は、ささやかに温かく彼らを包み、育てる。いつの世にあっても庶民にとっては大事な場所の愛(いと)しい灯りである。
アラジンの魔法のランプ出るスマホ/ゆずきちゃんさん
スマホを初めて手にしたときのビックリ感を思い出した。不思議だった。スマホはまるで「アラジンの魔法のランプ」のようだと思った。魔法のランプを出してくれるスマホは今や生活必需品として大活躍。着想がユニーク。
<入選>
シクラメン胸に灯して十二月/水たまりさん
一灯の小銭を入れる募金箱/あそかさん
そだねえが人の心に灯をともす/素人さん
ひと言がこころの灯りONにする/清詞薫さん
遠恋を励ますように月灯る/ぢゅんころりんさん
雲切れてスイッチ入れたような月/アラレさん
夕暮れの公園おしゃべりが灯る/汐海 岬さん
父だけが消灯時間守ってる/さだえばあちゃんさん
ひとり居の老人灯す年金日/にった みささん
思い出のページに灯る涙あと/久実さん
宮村典子先生
「心の灯」「母の灯」「屋台の灯」が多く、どれも響き方が今一歩というところでした。上手なのですが、どこかで聞いたような見たような句や、上手そうなのですが意味がわからない句もありました。自分の切実な想(おも)いを込めるとしっかり伝わる句になると思います。また、誰も気が付かないような意外な見付(つ)けを得るように川柳アンテナを磨くことも大事です。来年もご一緒に川柳を楽しめますように……。