2018年10月26日

【みえDE川柳】 お題:楽

天 散り終えて桜並木は楽になる/十六夜さん

宮村典子先生 着想的にシーズンオフにも思えるが、作者の内にずっとある想(おも)いなのだろう。「桜並木」の使命に人生を重ねてみるとき、課せられた任務を果たし終えた後の、なんとも言えない安堵(あんど)感がひしひしと伝わってくる。比喩の的確さが見事で頷(うなず)くばかりである。

 

地 気を楽にするため今日も窓を拭く/デコやんさん

宮村典子先生 言われてみればなるほどである。気持ちが落ち着かずにイライラする時は、何をしても治まらない。確かに、そんな時は何も考えずに窓を拭くといいかも。不思議に無心になる感じを私も味わったことがある。気付きの発見をさらりと書いて〈なるほど〉と思わせる川柳になった。

 

人 生命線楽な方へと伸びてゆく/久実さん

宮村典子先生 掌(てのひら)には、運命線、感情線、頭脳線、そして生命線がある。どれも当てはまるような気もする句のようだが、「生命線」としたのは、生かされて生きる命の道を、出来れば「楽」に長生きしたいという作者の願望だろう。誰もの願いに通じる。

 

<入選>

酒二合飲めば今夜も楽天地/ゆきちさん

もういいかい楽になりたい鬼の声/ワン吉さん

楽になる域へ脱皮がまだ足りぬ/橙葉さん

冬眠に備えて楽なゴムパンツ/スイッチさん

三年目気楽な顔になってくる/汐海 岬さん

楽な方へ楽な方へと傾ぐ首/恵美さん

楽をしてより楽なこと考える/花キャベツさん

重病と言われてやっと楽になる/小松崎有美さん

透明になって気楽に翔んでいる/まゆゆさん

楽々と母を背負っている涙/神無月さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

  「楽」というお題に対して「楽しい~」という表現や、音楽家、神楽、管楽器、田楽等々、字結び(漢字一字が課題の場合、その意味に関係なくその字で熟語を作り、句中に詠み込むこと) が多くありました。字結び不可と添えてなかったのでやむをえないのですが、今回は「楽(らく)」の意味からの発想で、自分自身にとっての実際的な楽、又(また)、心理的な楽を表現した作品をいただきました。
 今後、お題に留意したいと思います。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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