2016年8月26日

【みえDE川柳】 お題:勝負

天 負けた日の夕陽なかなか沈まない/福村まことさん

宮村典子先生 作者は何かの勝負に負けたらしい。何に負けたのかは読者の想像に任せながら、とにかく今日みたいな不愉快な日は早く終わってほしいと思っているのである。ところが悔しいことに今日の夕陽はなかなか沈まない。そのことに苛立(いらだ)ちを感じながらも、なんとなく切ない、やるせない気持ちで、ずっと沈まない夕陽を眺め、感傷的になっている作者の姿が浮かんでくる。が、この夕陽は作者の心象風景だろう。心理描写が見事。

 

地 型くずれしたまま勝負するプリン/カミナリ雲さん

宮村典子先生 着想がとてもユニーク。味に自信があるから少々型崩れしていても大丈夫というプリンに、人間を重ねてみよう。困難に負けそうになり、よろよろになりながらも人生をあきらめないのは自分を信じることが出来る人。何よりも大事なのは、どんな時(とき)にもチャレンジ精神を持つということだろう。中身で勝負するというプリン(人間)の潔い姿勢に共感。

 

人 負け方も試されている名勝負/アラレさん

宮村典子先生 名勝負とはその時(とき)を輝く者同士の戦いであると思う。全力で戦い、悔いなく負けることこそ敗者の美学である。真剣な負け姿を生む戦いこそが「名勝負」として万人の心に残るのである。力を抜いた戦いから名勝負は生まれない。名勝負とは、実力者のみに課せられた負け方への挑戦かも。

 

<入選>

朝食時会話が弾む金メダル/さだえばあちゃんさん

母校勝ち長期休暇を願い出る/うさぎ物語さん

いざ勝負根性込めて緩い球/デコやんさん

まだ行けるまだ行けそうだ勝負する/E子さん

カツ丼を食べても勝てぬ力の差/磨育さん

誰よりも遠くへ飛ばす梅の種/比呂ちゃんさん

ブランドに負けるなポチは芸達者/西井茜雲さん

青竹を踏んで敬老会に行く/喜屋武白雨さん

言い勝ってみたがだんだん苦い酒/なごみさん

引出しの数が勝負を分けました/森野水車さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今年の八月は、リオオリンピックで盛り上がりました。課題も「勝負」で、オリンピック関係の時事句が多いことを予想していたのですが、意外に少なくて残念でした。「勝負」からの発想は、勝負服が一番多く、囲碁、将棋、腕相撲と続きましたが、いずれも平凡に流れてしまいました。意外な勝負服もありましたが推敲(すいこう)不足の感があり惜しいところ。誰もが考えることだけど、案外誰もが書いていないような「勝負」を入選にしました。川柳を楽しむには、まず日常生活を楽しむことです。そして心を動かすことです。心(気持ち)が固まっていると想いが書けませんからね。いっぱい書いて、それらを一句に纏(まと)めるのも良いでしよう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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