前のページへ戻る

ディレクター’sメモ

初回放送日:2018年6月1日(金)

ディレクター'sメモ

これまで「いじめをノックアウト」では、いじめを見て見ぬふりしてしまう子どもたちの〝気持ち″について考えていく回をいくつか制作してきました。(「『3月のライオン』で考える いじめのこと~動きたくても動けないのはなぜ?」「いざというときのために・・・」など ※詳しくはNHK for school 番組HP動画をご覧ください)。今回は、その応用編とでも言ったらいいのでしょうか?見て見ぬふりをしないために、自分ならどんな対応がとれるのか?具体的に考えていくことをねらいにしました。

きっかけとなったのは、取材をした神奈川県にあるクラーク記念国際高等学校、関野亜沙美先生の話でした。

■「子どもたちは、見て見ぬふりしたくてしているのではない。どんな対応をしていいのかわからなくて苦しんでいる・・・」

新しいクラスで仲が良い友達ができはじめると、ちょっと友達同士あだ名で名前を呼び合う機会も増えてきます。親しみをこめたあだ名はいいものの、なかには悪気はないが面白半分でつけられたあだ名でちょっと傷つく友達も・・・。そんな様子を周りの友達が目の当たりにしたとき、どんな対応をしたらいいのでしょうか?

多くの小学生や中学生は学校現場で、「友達が傷つくあだ名でよぶのはやめましょう。」「変なあだ名をつけている友達をみかけたら『そんなあだ名はダメだよ!』と注意しましょう。」と教えられています。子どもたちの中には、少なからず友達が変なあだ名でよばれていることをよくは思っていない子が一定数います。しかし、注意することで、新しくできたばかりの友達関係にひびが入ることを恐れたり、逆に自分が変なあだ名をつけられるようになったらどうしようと心配してしまい、何もできないというのが現実なのです。

関野先生はそんな子どもたちの現実を受け止め「見て見ぬふりは悪いこと、いじめの加害者と同じ。というイメージがありますが、多くの子どもは、傷ついている友達の助けになりたいと思っている。でも、どんな対応をしたらいいのかわからないことに悩んでいるのではないでしょうか。」「『ダメだよ!』と注意する以外の対応方法を考えていく授業がもしかしたら必要なのかもしれませんね・・・」ということで、今回の神対応を考える授業を開いてくれました。

■「自分にいじめの矛先が向くことなく、つらそうな顔をしている友達を助ける神対応」という発問に込めた思い・・・

授業を準備するにあたって関野先生が最後まで悩んでいたことは、生徒たちにどんな問いかけをしたらいいのか?「単にスキルを教えるだけのHOW TO授業では、あまり意味がないと思うんです。「『ダメだよ!』と注意しよう!」がいい例ですが、子どもたちの性格やクラスでのキャラなどによって実はできる対応方法も違ってきます。大事なことは、自分なら何ができるのだろうと考えていくきっかけづくりが大事だと思うんです。」
最終的に関野先生がたどりついた発問は、「自分にいじめの矛先が向くことなく、つらそうな顔をしている友達を助ける」二つの目的を同時に達成する〝神対応″とは何か?という問いかけでした。
子どもたちが見て見ぬふりをしてしまったとき、心の中に抱く2つのキモチ「自分にいじめの矛先が向いたらどうしよう・・・」「でも、つらそうな顔をしている友達を救いたい・・・」を同時に満たす対応方法を考える。想定外の問いかけに生徒たちは、最初は面食らってはいましたが、これまで苦しかった現状をちょっとでも変えることができるのではないかという期待もあり、その後、みな積極的に考えていた姿が印象に残っています。

■十人十色 生徒たちが考えた神対応の引き出し

授業の様子は、番組を見てもらうとして・・・、ここでは、生徒たちがどんな神対応を考えたのか?番組では紹介しきれなかったアイデアを披露したいと思います。

① A男を否定せずに、もっといいあだ名を提案!
A男「ゴリ子が人間としゃべってるぜー!」

生徒①「『ゴリ子』より別なあだ名がいいんじゃない!Bさん、笑顔が可愛いもん!

<理由>まずは、A男の気分を逆なでしないように否定はせずに、もっといいあだ名をつけてあげようよ~と提案する。いいあだ名をつけるために、A男が知らないB子の魅力をさりげなく伝える。

② A男と一緒に、新しいあだ名を考える!
A男「ゴリ子が人間としゃべってるぜー!」

生徒②「名前が間違ってるから誰も返事しないんじゃない?
※そのあと、みんながいないところでA男に直接…。

生徒②「A男さ、B子ちゃん少し傷ついてるかもしれないよ? 
B子ちゃんが傷つかないような新しいあだ名一緒につくってみない?


<理由>2段階に分けて、まずはクラス全員で、変なあだ名を言っちゃいけないような雰囲気をつくる。次の段階で、A男に優しく別なあだ名をつくることを提案。一緒に考えていく。

③ ユーモアで話題を切り替える!
A男「ゴリ子が人間としゃべってるぜー!」

生徒③「はい!モノボケ大会をします!
生徒「イェーイ!
生徒③「箒の先端をいじって、ギターのチューニング!

<理由>あだ名についてふれるとB子さんの傷口を広げるかもしれないので、あえてまったく違う話題にもっていく。男の子も盛り上がる系のモノボケネタをふるのもありかと。

④ とぼけた感じでA男をたしなめる!
A男「ゴリ子が人間としゃべってるぜー!」
生徒④「え? これ、ゴリラに? 見える? だい、大丈夫? 本当に大丈夫? 疲れてる?

<理由>否定をせずに、とぼけた感じでたしなめる。上から目線ではなくなり、A男の感情をさかなでしないですむ。

⑤ B子も巻き込んで、みんなのあだ名を考える
A男「ゴリ子が人間としゃべってるぜー!」

生徒⑤「えっ!ゴリ子? じゃあA男とB子は、私にどんなあだ名つけるの?

<理由>A男とB子をちょっとずつ和んだ雰囲気にしていければ、A男もトゲトゲしいあだ名を吐くこともないと思って。みんなで、お互いにどんなあだ名をつけていくか、おしゃべりをしていく。


生徒たちが考えたアイデアいかがですか?これまで「ダメだよ!」と注意することしか方法がないと考え、動けなかった生徒たちは、それぞれいろいろな方法で自分ができそうな神対応があることに気がついていきました。
ここで考えた神対応が実際の現場ですぐに使えるかどうかは別問題かとは思いますが、今回考えたことがきっかけとなり、自分の行動の引き出しを増やしていくことが、いじめを減らしていくための一歩につながるのではないでしょうか?

最後に、個人的に、面白かったのは、どの生徒の神対応も「誰かを悪者にすることなく教室の雰囲気を悪くさせない」といった点が共通していたところ。いまの教育現場の空気を感じてしまいました。


ページの先頭へ