(2016年4月18日放送)
4月14日以降、熊本県や大分県を震源に相次いで起きている地震。
県内でも震度3から1の地震が複数回、観測されています。
地震回数の多さに不安を感じている人も多いと思います。
防災担当の廣川記者の解説です。
今回の九州での地震は、活断層が引き起こしたとみられています。この赤い線が、マグニチュード7以上の地震を引き起こす可能性のある活断層です。
この中でひときわ長く連なっている赤い線が、ここ四国を横断している「中央構造線断層帯」という、国内で最も長い断層帯です。
今回、九州で地震を起こした活断層の延長線上にあります。
地質工学が専門の香川大学の長谷川修一教授は、今回の地震は、この「中央構造線断層帯」の先端部分で起きていると指摘しています。
「400年前、1596年に、中央構造線沿いで立て続けに大きな地震がありました。 中央構造線と関係した活断層で起きていると思います。 400年前に動いていないところが動いているということが言えると思います。」
長谷川教授は、九州の地震がこの「中央構造線断層帯」での地震を誘発する可能性を指摘しています。
「400年前は四国の中央構造線はほぼ動ききっている可能性が高い。ただ一部、割れ残りがあるかもしれない。そういうところでは 今後マグニチュード6.5ぐらいの地震はあるかもしれない。それから香川県内では、長尾断層はよく分かっているんですけど、ほかにはっきりした活断層は分かっていません。ずれが小さいと地表に現れない。地震を起こしても地表に現れない可能性がありますので、高松や丸亀とか、 そういう下に活断層が埋もれている可能性は否定できません。 」
長谷川教授は、活断層による地震はどこでも起こりうるとして対策を急ぐように話しています。
「寝ている時に家具の下敷きにならないように家具の固定。寝ているところの安全性の確保ですね。夜中起きたら、逃げるまもなく家具など電化製品が襲ってきます。まず寝室の安全性の確保、そして逃げ道の確保が必要だと思います。南海トラフの前に直下型地震というのは香川県でもあり得るシナリオだと思います。その直下型地震への備えが次の南海トラフへの備えにつながっていきますから無駄になりません。」
いつ起きるか分からない地震に備え、まず、何から備えるか考えることが重要です。
予断を持たずに対策をしておかなければいけないですね。
(2016年4月19日放送)
今回の熊本地震では、14日の午後9時台や16日の未明など夜間に相次いで地震が発生。夜間の地震の注意点と備えを県防災士会の久保雅和会長に聞きました。
今回の熊本の地震は夜間の地震が相次いぎました。夜間の地震の注意点は?
「多くの人が寝ている時間帯。まずは「寝室の安全確保」が第一です。家具やテレビの転倒防止をしっかりとしておきましょう。家具の倒れる側に寝ないようにしてください。枕元には懐中電灯を用意しておきましょう。」
「今回のような直下型の地震だと、緊急地震速報を受信したらもう揺れているので、 揺れ出したら布団をかぶるなどして揺れが収まるまで待ち、身の安全を確保しましょう。」
「寝ているときは携帯電話やスマートフォンなど緊急地震速報を受信できる状態にしておきましょう。」
実際に揺れたら、その後はどう動いたよいのでしょうか?
「揺れが収まったら『避難』を考えなくてはなりません。ガラスや散乱したもので怪我をしないように、衣類や布団などで足を保護することが大事です。
夜間に停電していると、何も見えなくなってしまうため、出口の方向が分かるように、蛍光テープや蓄光テープを張って目印を作るなどが大事です。
避難する際は周囲に声を掛け合いましょう。」
「非常用持ち出し袋は一度避難してから持ち出すようにしましょう。
非常用持ち出し袋は散乱した家の中ではなく、玄関や物置など、外から取り出しやすい位置に用意しておくと良いでしょう。」
今回、停電も広範囲で発生しました。停電に関する注意点はありますか?
「停電に備えて、枕元にラジオ機能がついた懐中電灯を備えておくと良いでしょう。」
「停電中に避難するときは、通電火災を防ぐために、必ずブレーカーを落として避難するようにしてください。」
一番左の画像は、ガラスが飛び散るのを防ぐフィルムです。
「このようなフィルムは高価なため、ラップをガラスに貼るなどでも十分対策になります。中央の画像は家具やテレビなどを固定するための突っ張り棒やマット。右側の画像は、蛍光テープや蓄光シールなどは夜間に光って目印になり、100円ショップなどでも売られています。」
久保さんが枕元においてあるものも用意していただきました。
「手巻きで充電できるラジオ機能がついた懐中電灯。こちらはサイレンも鳴るものです。あと、携帯電話には笛をつけています。閉じ込められたときには、助けてと大きい声を出さずに、笛を吹くことで少ない力で大きな音を出して自分の存在を知らせることができます。」
「さらに、自動車に設置してある発煙筒も活用できます。自動車の車検の際に期限が切れたものをもらっておいて寝室に用意しておけば、今回のような孤立した地域やマンションなど建物内に閉じ込められた場合は、 発煙筒を使うことで、救助されやすくなります。特に夜間の地震の場合は、光や音、煙などさまざまな手段を活用することが大切になってきます。」
(2016年4月20日放送)
地震で大きな被害が出ている熊本県では避難生活も長期化しています。
熊本県の災害対策本部によりますと、熊本県内では、20日午前9時の時点で、660か所の避難所に
10万3380人が避難しています。
そして、避難生活などによる体への負担や病気によって亡くなったと思われる人が、
これまでに熊本県内の4つの市と町で11人(4月20日時点)に上っているということです。
香川県からも高松赤十字病院の医師や看護師などの救護班が4月16日から現地に赴いて救援活動を行っています。
このうち熊本市南区で避難所の被災者に医療ニーズの聞き取り調査を行い、一度高松市に戻った救護班の医師と看護師に現場の状況などについて聞きました。
高松赤十字病院の伊藤辰哉医師です。
未明にマグニチュード7.3の地震があった4月16日に熊本市に入り、避難所で病人や妊婦の数を調べました。
「熊本市内235の避難所のうち、55か所をまわってこいと言われたが、2日間かけて40か所くらいを回るのが限界だった。ぱっとした街なかの様子以上に実際には被害が大きいというのが実感で、一見普通に立っている建物でも余震があれば怖くて家の中では寝られないから避難所に来ていると聞きました。」
伊藤医師とは別のチームで調査にあたった古賀くみこ看護師です。
自治体も把握していない山間部の避難所を訪れました。
「車が入るのがやっとの状況で実際に入ってみたらかなりの家屋が倒壊している状態で、お話しした方の中に右手に包帯を巻いた人がいて、見るとあきらかに骨折をしているくらい腫れていて、近くの病院でみてもらって落ち着いたら整形外科に行ってくださいと言われたが、それもいついけるか分からない、開いているかどうかわからないというのと交通手段がないタクシーは動いていないしバスも動いていないし、どう行っていいか分からないと言われて、という話をきくと大変だなと思いました。」
2人が現地に入ったのは大地震の発生直後。
どこにどれだけのけが人や病人がいるのか正確に把握することが難しかったといいます。
「地元の小さな公民館に40〜50人がいるところもあれば、小中学校では多いところで1000人規模で夜は余震に備えて泊まっています。ただし、ペットがいるとか、小さな赤ちゃんがいると避難した人が逆にまわりに気を遣って中に入れない。中に入りたくても入れない、車に居ざるを得ない人は、(避難所を)管理している人も 駐車場の車は概略でしかわからなくて、体育館の中だけで300人でも車500台あれば1000人は超えているだろうという話で、概略でしか避難所の責任者もつかめていないのかなと思いました。」
伊藤医師は、避難所で医療行為が必要な場合は避難所の責任者に自分からしっかり伝えることが必要だと指摘します。
「最初に避難所に入るときに受付名簿というのを書きますよね。その中に透析していますとか、妊娠第何週ですとか、書くように、自分からアピールしていけば管理者にもつかんでもらえます。私はこうだと避難所の責任者にしっかり伝えることによって、外への発信が一歩前に進むと思います。」
高松赤十字病院の医師や看護師らの救護班は20日に第2陣が熊本県に向い、21日から避難所などに設けられた救護所で被災者の診療にあたっているということです。
(2016年4月22日放送)
地震の発生から1週間(4月22日時点)。住居にも大きな被害が出て、避難生活の長期化が懸念されています。
今回の地震で被災した人の中には、避難所での生活を選ばず、車の中で寝泊まりして過ごす人も多くいます。
(被災者)
「子どもたちも周りに人が多いと寝られない。昨日、子どもが初めて夜泣きをしました。」
小さなお子さんや高齢者がいる家庭や、ペットと一緒と過ごす人など、それぞれの事情があって、やむを得ず車の中での寝泊まり、「車中泊」を選ぶ人が多くいるのが現状です。
そこで今、危険性が指摘されているのが、「エコノミークラス症候群」です。
車の中など狭い場所で長時間、体を動かさずにいると、血のかたまり「血栓」が足にできます。その後立ち上がった際、血流に乗って、血栓が肺に到着し、肺に詰まります。すると胸が痛くなったり、呼吸ができなくなったりして、最悪の場合死に至る非常に恐ろしい病気です。
今回の地震では亡くなる人もいました。
エコノミークラス症候群の注意点と、手軽にできる対策を取材しました。
エコノミークラス症候群について、香川大学医学部の南野哲男教授に話しを伺いました。
エコノミークラス症候群になりやすい人はどんな人なのでしょうか?
「高齢の方、そしてたとえば妊婦さんもなりやすい状況となっています。あと肥満の方、運動不足の方、水分を十分に取れていない脱水の方などがなりやすいと知られています」。
発症する前兆はあるんですか?
「エコノミークラス症候群は足、ふくらはぎのところに主に血の塊ができるんですけども、その血の塊のせいで、痛みとか腫れが出ることがあります。避難生活の状況によって、足に左右差ができたりとか、ふくらはぎを軽くつまんでみて痛みが出るとか、そういうことがあればエコノミークラス症候群の元となる血の塊がある可能性が出てきます。」
どんな対策を取ればよいのでしょうか?
車中泊をしている方も多いが、どんな姿勢を取ることが大切ですか?
「同じ姿勢であることを避けることが最も大切です。30分、1時間のあいだに数分程度の運動をするというのが一番大切かなと考えています。」
「座ったままでもできる運動方法は何かありますか?」
「血液を心臓に返すためには、足の筋肉を動かすことが大切です。 例えば、座った状態で踵を上げたり下げたり、つま先を上げたり下げたりする。 こういう運動を1時間に20〜30回行うことが大事です。また、足の指先でグーを作ったり、チョキを作ったり、パーを作ったりするなど、指先を動かすことも大切。そうした運動に加えて、マッサージしたりや足を軽く叩くなども有効です。」
こうした対策に加えて、予防効果が期待されているのが「弾性ストッキング」。
足に適度な圧力を加える特殊な編み方がされていて、余分な血が足に溜まるのを防ぎ、血行を促進します。
(岡キャスターの試着感想)
「結構ぎゅーと締め付けられますね。これ逆に血が止まってしまってるんじゃないかって思うくらい締め付けられているんですが、
本当にこれが予防に効果的なアイテムということなんですよね。」
「効果があると分かってても、窮屈だということで着用していただけないことがよくあります。窮屈なんですが、医療上の有益性をご理解いただいて、 対象となる方には適切に使っていただきたいと思います。」
医療用弾性ストッキングは、病院の売店や、インターネットで購入することが出来ます。
足の血行をよくすることが特に大切。身近なもので活用できるものはないか、探しました。
(岡キャスター)
「靴下売り場に来ました。こちらにも、足に適度な圧力を加えてむくみを解消する靴下があります。
医療用ではありませんが、こちらでも一定の効果はあるということです。」
高松市内のデパートでは、今回の熊本地震を受けて、こうした商品に関するお客さんからの問い合わせが相次いでいます。
(売り場担当者)
「最近ですと、お電話ですとか実際に来られて、着圧のソックスはありますかというお問い合わせは数件あります。熊本地震を受けて、多くなったかなとは思います。」
美容製品として売られているマッサージローラーも、刺激を与えるのに役立つアイテムです。
スタジオにも用意しました。
こちらが医療用の弾性ストッキング。
通常のストッキングよりもしっかりしています。
入院患者さんなども一日中はいていますが、人によっては足の神経に少し負担をかけたりする場合も稀にあるということですので、医療従事者に一度相談して、サイズがしっかり合ったものを着用して下さいとのことでした。
水やスポーツドリンクという水分補給と併せて、足のケアというのが大事です。
エコノミークラス症候群は、車中泊でももちろんのこと、避難所でも発症する可能性のある病気です。
これを機に、エコノミークラス症候群も考えた備えをしていただきたいと思います。
(2016年4月27日放送)
九州で相次ぐ一連の地震で、熊本県内では4月27日午前9時の時点で3万9700人あまりが避難するなど、被災地の復興はまだ遠い状態です。一方で、震度7を観測した熊本県益城町では、4月21日に「災害ボランティアセンター」が開設され、ボランティアの受付が始まっています。すでにたくさんの人が集まり、支援物資の分別や被災した住宅の片づけなどの仕事に従事しています。
(ボランティア参加者の声)
「以前、神戸とかで経験もあるので、応援に来たいなと思って」。
「ちょっとでも力になれたらうれしいです」。
大型連休も始まることから、香川県内でもボランティアとして被災地に向かおうと考えている方も多いと思います。
どのような準備をして向かい、また何に注意をして活動すればいいか、香川県社会福祉協議会の担当者に話を聞きました。
香川で事前に確認しておいたほうがいいこと、また用意したほうがいいものはありますか。
「まず被災地に入る前に 災害ボランティアセンターの開設状況などについて、ホームページ等を利用して必ず確認をしていただきたいと思います。
ホームページには、宿泊施設・テントが張れないとか、まだ県外の募集をしていないなどのセンターの開設状況による細かな情報が掲載されています。また、ボランティアのニーズの受付状況や受け入れ体制が整っているかどうかなどもそうしたサイトなどで確認できるようになっています」。
ボランティアにはどんな準備が必要なのでしょうか
「まだまだ余震が続いているということもありますので、例えばヘルメットであったりとか、ゴーグルとかマスクについては何が浮遊しているか分かりませんので、ご自身の体調管理というところで身を守るものというところと、足場が悪い場所に入る可能性もありますので、長靴であったりとか、手をけがしないように作業用手袋であったりとかそういった装備はそろえていっていただいたほうがいいかなと思います」。
その他に、忘れてはいけない必要な準備はありますか?
「活動中の事故に備えた用意も必要です。社会福祉協議会のほうで通常のボランティアの方も入っていただける 活動保険というのがあるんですが、今回の震災のような場合については 天災タイプという保険がありますので、そちらのほうに必ず現地に入る前に最寄りの社会福祉協議会で入っていただければと思います」。
実際に現地でボランティアをする上での心構えは?
「被災者の方にとってはそこが生活の場ですので、ボランティアの方にとっては活動の場にはなるかと思うんですが、その生活の場に一歩踏み込むというところはきちんと意識をしていただけたらと思います。必ずしも求められている活動がボランティアの方の思いと一致するとは限らないので、ただ与えられたその活動をしっかりしていただくことで、決してそれが無駄なことではなくて、被災された方お一人お一人のためになるというところで、十分の力を貸していただけたらと思います」。
まもなく大型連休です。ボランティアをしたいという人も増えるのでは?
「今回の大型連休を利用してボランティア活動をしてみようと思う方、たくさんいらっしゃるのかなと思うんですが、今回の熊本地震については長期の支援が必要になってくるかと思いますので、長い目で見てご自身が本当に入れる時期に入っていただく、できる範囲で活動を進めていただくことがいいかと思います。ぜひ長期にわたって途切れることなく支援がされるようにお力を貸していただけたらといいのかなというふうに思います」。
現地に行く上で もっとも準備が必要なのは自分の宿泊場所です。
もちろん自分で準備する必要があるのですが、被災地周辺の施設は捜索活動や復旧作業にあたっている人を優先すべきで、ボランティアは少し離れた場所に宿泊するなど配慮が必要となります。
また、現地はまだ余震が続いていて非常に危険な状況なため、廣瀬さんは「現地でのボランティアは少し落ち着いてからでも決して遅くはない」とも話していました。
いずれにしてもボランティアに行く場合は事前の情報を十分に集めて現地で必要なこと、自分ができることは何なのかしっかり調べてから行くことが重要です。