聴覚障害者が大地震に遭遇したときに、どのような問題が発生するのでしょうか? 今回は、聴覚に障害がある方にスポットを当てて、大地震が発生したときの課題について香川県聴覚障害者福祉センターの太田裕之さんにお話しを伺いました。
(1)情報が聴覚障害者にまったく伝わらないことです。
実際に地震が起こると、防災行政無線などすべて音声のみなので、今のままでは逃げ遅れることにもつながります。
(2)声を出せないので助けが呼べません。
東日本大震災の時にも仮設住宅の申込などの情報が、避難所にいる聴覚障害者に伝わらず、入り遅れてしまった聴覚障害者もいたと聞いています。
震災が起こると、要約筆記者や手話通訳者も被災者になるので、近所の人や周囲の人の助けを求めていかないと、避難所の生活を送っていくのが難しく、サポートが聴覚障害者にまで届きにくい現状があります。
今年3月、聴覚障害者を対象に、防災訓練を実施しました。
今回の訓練では、実際に避難訓練をするというよりも座学を中心に防災の知識を深めるための講義をしました。
耳の聞こえない人の防災意識はまだまだ低いのが現状で、震災の時に自分自身の身を守るための学習の場が重要だと考えたのがきっかけです。
今回の訓練で聴覚障害者の皆さんが作り上げたのが、いざという時に備えるためのマニュアル「防災ハンドブック」です。
中を見ますと、ふんだんに絵を使っています。
実は手話をコミュニケーションとして使用している聴覚障害者には文字だとあまり情報が伝わらないのです。
聴覚障害者は、手話で理解しているので、頭の中も手話で考えています。
だから日本語は外国語と一緒なんです。
震災の時に健常者が聴覚障害者に情報を伝えるためには基本的に文字で伝えるしかありません。
避難所の目立つ場所にホワイトボードなどで情報を簡潔にわかりやすい言葉で伝えることが大事です。
防災ハンドブックでは、聴覚障害者に必要な持ち物が細かく書かれています。
中でもホイッスルが大切だと考えています。
聴覚障害者は声が出せないので、助けを求める時にも必要になってきます。
自分の意思を伝える「コミュニケーションボード」や個人情報が書かれている「個人カード」もあると意思の疎通に便利です。
個人カードには健常者の人が見てもすぐに分かるように、住所や名前、病気などを書いて自分の意思をしっかりと伝えることが重要です。
出来ればいつも持っておきましょう。
行政が行っている防災訓練にも聴覚障害者が参加して、どういう課題があるのかを近所の人に知ってもらい、日頃から聴覚障害者であることを近所の人に理解してもらうことが大切です。
周りの人にも手話を覚えてもらってコミュニケーションがとれるようになればいいですね。