今回の防災インタビューは高知大学総合研究センター防災部門の岡村眞特任教授です。
岡村特任教授の専攻は「地震地質学」。その土地の地質から過去に起きた大地震や津波について調べるなど南海トラフ巨大地震の研究を進めています。
南海トラフ巨大地震の規模や香川県での被害について聞きました。
南海トラフ巨大地震の「規模」について、
国の中央防災会議でも様々な議論がされていますが、岡村先生はどれくらいの規模になるとお考えですか。
上限設定は難しいですが、今のところ東日本大震災クラスのものは、たぶん西南日本でも起こるだろうということです。
マグニチュードも非常に難しいんですが、基本的には地震を起こす震源域は、断層面の広さだとお考えください。
宝永・安政・昭和に起きた直近3回の南海地震では香川県の下まで断層は割れていません。しかし最近の研究では、香川県の地下だいたい40キロぐらいのところでも、小さな地震がたくさん起こっています。
そうすると香川県の南部は完全に震源域に、少なくともそういうところでも地震が起こるということが、最近の研究でも分かってきました。
海溝型地震は断層面が非常に水平に近いので、震源域が広がっていると、その深い方にいきます。そしてその深い方の真上には香川県があります。
香川県の真下で地震が起こると、直上というのは横揺れだけでなく、縦揺れも加わり、非常に複雑な揺れをするということが香川県で起こるということが考えられています。
香川県は瀬戸内海に面していて、津波の被害としてはどんなことが考えられますか。
四国の南に比べると、香川県は大きな利点があります。瀬戸内海というのは、地震から津波までの時間が1時間から2時間あります。
しかし東北では色々な失敗例がありました。それは一回逃げますが、1時間も津波が来ないので、もう来ないんじゃないかと思い帰宅したり、学校から自宅に戻ろうとする、そこへこの津波が入ってくるという非常に大きな「時間差の攻撃」がありました。
その時間差攻撃を非常に重要な防災の視点だと思います。
具体的にどのような被害が出るのか地図に書き込んでいただきました。
だいたいその地形を追っていくとどこが浸水域になるかということが分かります。
まずは、琴平電鉄の長尾線は電車の線路に沿って元の海岸渕です。そして高松市役所と県庁と栗林公園と県の中心部、ここがちょうど標高4m越えるくらいでぎりぎりセーフかなってところに立っています。昔から湿地帯だったり埋立地には津波が入ってくる可能性があります。(画像の斜線で書いているところ)
そして外側の新しい埋立地のあたりは少し高いので、ここが島のようになると考えておかなくてはいけません。
いずれにしても低いのは詰田川沿い、それから香東川沿いです。新しい埋立地の標高が高いだけに一回入った津波が、なかなか出ないような地形を持っているというのは高松市中心部の特徴です。 津波防災の一番基本「標高何mのところに住んでいるか」ということです。これが5mならまず津波は来ないと思っていただいて大丈夫です。しかし、4m以下ということが分かっているのであれば、かなりの確率でそこに津波が入ってきて、海水とがれきが入ってくるということを しっかり理解しておかなければなりません。
まずは自分が助かることが全ての基本ですから、自分の家の高さ(標高)がどれだけあるのか、一番基本的な津波の情報にならなければいけません。
どうしても地震・津波となると沿岸部に目が行きがちになってしまいますが、岡村先生は山間部も気をつけなければいけないという考えをお持ちですね。
四国四県の中でも香川県は特異性があります。少雨、雨があまり降らないということで、ため池をたくさん作ってきたんですね。
ただし、今まであまり香川県の方はため池が崩れて大被害にあったという方はそれほど多くありませんでした。
それはなぜかというと過去400年間4回の南海地震というのは全部「冬」に来たんですね。
雨の少ない時期だったので、地下水位も下がっていて、十分に堤防が揺れに耐えられたということが挙げられます。
次は夏の可能性ももちろんあるわけです。田植えの時期だとため池にいっぱいいっぱいの水があるので、当然、内側から圧力もかかり、地下水も上がってくるので、より崩れやすくなっています。そういう悪条件が重なると、ため池堤防が決壊して、下流の町を土石流が襲っていくという、非常に怖い「山津波」という、海からだけの津波ではなく、山からくる津波の可能性も十分に検討して、逃げ方も考えておくということが必要です。
岡村特任教授によりますと、お住まいの地域の標高は、県や国土地理院のホームページで調べることができるということです。