香川県特有「ため池」の防災について香川県農政水産部土地改良課次長 飯間勝さんにお話しを伺います。
香川県内のため池は、14,619か所で、兵庫県・広島県に次いで全国第3位。
また、県の総面積に対するため池の密度は1平方キロメートル当たり7.79か所で全国1位となっています。
規模は満濃池などの大規模なため池もあるが、1,000立方メートル未満の小規模なため池は8,600か所もあり、全体の約6割を占めています。
これだけ数も多くて身近なため池ですが、災害時における危険性はどんなところにありますか。
県内のため池は今から300年以上前の江戸時代までに造られたものが多く、これまで幾度も修繕を行ってきたが、老朽化が進んでいるため池も多くみられる状況です。
このため、台風や集中豪雨などの際はもちろん、近い将来発生すると言われている南海トラフ巨大地震などの大規模災害時にも、老朽化したため池の決壊が心配されます。
決壊すると農業施設の被害や家屋の浸水のほか、人命にも影響を及ぼす危険性があります。
過去にため池が決壊したことはあるんでしょうか?
去年相次いだ台風では決壊などの被害は出ませんでしたが、平成16年には台風が日本列島に10個上陸し、そのうち9個の台風の影響により、香川県に大災害をもたらした年でした。当時の凄まじい豪雨を記憶しておりますが、このため、ため池も999か所が何らかの被害があり、そのうち114か所のため池が決壊しました。
そのひとつが観音寺市にある「谷口元庵池(たにぐちげんあんいけ)」。
堤防の奥が本来水がたまっているところです。
堤防の防波堤が20mもあるのにそのうち半分が多くの雨で決壊しました。
決壊すると下流の農地や水路などが大きく被災しました。
ため池が決壊すると非常に大きな災害が発生する可能性があります。
こうした、老朽化したため池の改修のほか、今後30年以内に70%程度の確率で発生が予想されている南海トラフ地震に対する、ため池の耐震化対策も喫緊の課題となっています。
実際に県はどう動いていますか?
ため池改修については、昭和43年度から「香川県老朽ため池整備促進計画」を策定して計画的に、老朽ため池の整備を進めています。
そうした作業の進捗状況はどうなっていますか?
老朽ため池の改修は、昨年度までに3398か所の全面改修を完了しています。大規模ため池の耐震化整備は、これまでに45か所の池の検討が終わり、16か所の池で耐震化を図る必要があると判断されており、26年度から耐震化補強工事を進めているところです。
ニュースでもお伝えすることもあるハザードマップについての取り組み状況はどうなっていますか?
県では、平成23年度から市町が行うハザードマップ作成について支援を行ってきています。これまでに、8市5町で201か所が作成され、ハザードマップを災害から身を守るひとつのツールとして、ぜひ活用していただきたいと思っています。
ハザードマップは、市町ごとに地域の実情に合わせて作られており、「浸水する範囲」や「浸水の深さ」のほか、浸水の「到達時間」や「避難場所」などが記載されているので、迅速な避難行動や、災害時の応急対応に役立つものとなっています。
ハザードマップも含めて、日頃から私たちもため池に意識を向けることが大事なんですね。
東日本大震災以降、住民の方々は沿岸部の津波に関心が高くなっていますが、香川県の場合は、ため池の決壊による浸水も考えておくことが大切です。
県民の皆さんには、ハザードマップを活用して、常日頃から住んでいる地域の災害発生時の行動を正しく把握していただき、もしもの時には、地域でお互いに助けあえる体制づくりを行うなど、是非、被害の回避・軽減に努めていただきたいと思います。