みんなどうしてる? イヤイヤ期

すくすく子育て
2016年7月16日 放送

「公園から帰るの“イヤ!”」「野菜食べるの“イヤ!”」何をするにも「イヤイヤ」の子ども。ママもパパもお手上げですよね。
このテーマでは全国のみなさんからお寄せいただいた、たくさんの“イヤイヤ”を紹介しながら、専門家にお話を伺います。

「すくすく子育て みんなどうしてる?イヤイヤ期」

専門家:
大豆生田啓友(玉川大学大学院教授 乳幼児教育学)
坂上裕子(青山学院大学 教育人間科学部 准教授)

子どもにとってイヤイヤ期とは?

回答:大豆生田啓友さん

イヤイヤ期は、子どもにとって自我が育つ大事な時期です。反抗期とも言いますので、親としては大変な時期ですが、子どもの視点からもイヤイヤ期を考えていければと思います。

回答:坂上裕子さん

イヤイヤ期は、幼稚園や小学校などの大きな社会に出る前に、“自分で”選んだり、伝えたり、行動したりすることを練習する時期ではないかと思います。


イヤイヤ期、親の対応法は?

1歳1か月の女の子の場合

<この服イヤ!>

ママが選んだ洋服が気に入らなかったときのイヤイヤ。
着ている服を「えい!」と脱ぎ捨ててしまう。

<電車イヤ!>

電車の中でぐずりはじめ、いったん途中の駅で降りたときのイヤイヤ。
「次の電車に乗ろうか?」と声をかけても、泣きながらイヤイヤ。

⇒ママの悩みは?
電車の中でぐずったときは、いったん途中の駅で降りて泣き止んだら、次の電車に乗ろうと思っていました。でも、だっこしても、おもちゃをあげてもイヤイヤが収まりませんでした。
これ以上電車を遅らせると、混雑に巻き込まれると思ったため、子どもは泣き止みませんでしたが、そのまま電車に乗せて帰りました。
こういう時はどうすればよいのでしょうか?

気持ちを切り替える方法を子どもに選ばせる

回答:大豆生田啓友さん

電車の中でぐずったときに、いったん降りるというのはとてもよかったと思います。そのようにして、子どもの気持ちを切り替えることが大切です。

気持ちを切り替える方法として、何をするかを子どもに選ばせてもいいかもしれません。
例えば、「ジュースを飲んでもいいし、おもちゃで遊んでもいいし、どれをやってから乗る?」というように、子ども自身に選ばせるとうまくいくことが多いかと思います。

子どもの気持ちを考える

回答:坂上裕子さん

電車などの公共の場でイヤイヤし出すと、親は何とかしなければと、その状況の解決をゴールとして、考えてしまいますよね。
そのときに、状況を解決することではなく、「何でイヤって言っているんだろう」「何で泣いているのかな」と子どもの気持ちを考えてみてください。
子どもの気持ちを考えながら、試行錯誤していくと、徐々に泣き止んでくれるツボがわかってくると思います。
この時期の子どもの成長は大きいため、そのときの子どもの気持ちを考えるプロセスは、意味のある時間だと思います。子どもの気持ちの成長を共有することも大事です。


イヤイヤ対策のために、子どもの競争心をあおっていいの?

2歳の女の子の場合

<ねんねイヤ!>

「ねんねしない!」「まだ遊びたい!」と寝るのを拒否するイヤイヤ。
「お片づけしてねんねしよう」と声をかけると、自分でおもちゃを片づけながらも泣きながらイヤイヤします。


⇒そのときのママの対応
娘は寝る前に必ずトイレに行くのですが、「トイレに行かない!」とイヤイヤします。
そのようなときは、「ママが先にトイレに行っちゃうよ」とトイレの方に行くと、「だめ!私が先!」と押しのけてトイレに行ってくれます。
他にもお着替えをしないときには「妹とどっちがはやいか」と競争心をあおるとやってくれることもあります。

⇒そんなママの悩みは?
イヤイヤ対策として競争心を利用しているが、自分が1番にならなきゃダメだと思ったり、他人を押しのけるような子にならないか心配です。

魅力的な見通しを提示する

回答:大豆生田啓友さん

寝なきゃいけないことをよくわかっているから、片づけてはいる。
でも寝たくないという気持ちもある。
お子さんは自分の気持ちと葛藤しているのです。
このようなときは、魅力的な見通しを提示してあげるといいかと思います。

例えば、「寝る前には何の絵本がいいかな」というように、寝る前にも楽しいことがあると伝えてあげると、子どもが気持ちを切り替える良い後押しになるかと思います。

さまざまなイヤイヤ対策のひとつなら問題ない

回答:坂上裕子さん

イヤイヤの様子を拝見すると、お子さんがイヤイヤしているときに、お父さんがずっとお子さんの背中をさすってあげていました。
イヤイヤをしている子どもは、心の中で戦っています。
そのようなときに、体に優しく触れてもらえると、「自分は支えてられている」と子どもが安心できるので、とてもステキな対応だと思います。

競争心を利用することを気にされていましたが、あまり気にしなくても大丈夫です。
親は、大人の都合で、いつも子どもの要求に付き合うことはできません。
そのため、あの手この手で、さまざまなイヤイヤへの対応を考え出していくことが大切です。
さまざまなイヤイヤ対策のひとつなら、競争心を利用するという手段も問題ないかと思います。

その他のイヤイヤの様子 1歳11か月の男の子の場合

<野菜イヤ!>

好きなものだけ食べて、ニンジンを食べたくないと必死に抵抗するイヤイヤ。
あまりに必死に訴えるわが子に思わずママが笑ってしまうと、ママの笑いにつられて笑顔を取り戻していました。



イヤイヤ期に厳しく対応すると、将来悪い影響ある?

2歳11か月の男の子の場合

<なにもかもイヤ!>

ママが妹のお世話ばかりでかまってもらえないときのイヤイヤ。
ずっとイヤイヤして、「だっこして」と最後に本音が出ました。

⇒そのときのママの対応
自分の気持ちに余裕があるときは、息子が好きなキャラクターの声まねをしたりして、気を紛らわせています。でも、外出先など、気持ちに余裕がないときは、イヤイヤしている息子を引きずって家に連れて帰ることがあります。

⇒そんなママの悩みは?
イヤイヤ期に厳しく対応することで、将来的に何か影響がでないか心配です。

場合によっては厳しい対応も必要

回答:坂上裕子さん

子どものイヤイヤは、「ここまでやったらお母さんが止めてくれるだろう」と、親を信頼しているからできる行動です。

そして、しつけは、自分を守るため、また、他人を守るためにあります。
自分も他人も傷つけてはいけません。このことをしっかり伝えることが大切です。
そのことを伝えないと、子どもは、「いつになったら止めてくれるのかな」と、お母さんが止めてくれるまで行動を続けたりします。
大人でも、「何でもやっていいよ」と言われると、制限がないことが不安になって動けないことがありますよね。

子どものイヤイヤ期も、場合によっては、その行動が自分を傷つける、他人を傷つけることにつながることもあります。そのようなときは厳しく伝えて、行動をやめさせることも必要です。

厳しくしすぎた場合はフォローが必要

回答:大豆生田啓友さん

子どもは、お母さんが妹の世話をしないといけないことをよくわかっています。でも、自分もお母さんにかまってほしいから、イヤイヤ言ってしまう。心が葛藤している中で、「だっこして」という言葉が出てきたということは、子どもが自分の気持ちと折り合える方法を探そうとしているのだと思います。

子どもはお母さんの気持ちをわかっているため、厳しいときがあってもわかってくれていますよ。
そうは言っても、厳しくしすぎたなと思ったら、フォローしてあげることが大事です。
例えば、赤ちゃんのお世話はいったんお父さんに任せて、その間、お兄ちゃんと過ごすようにするというように、時間をつくってあげるといいと思います。


子どもが注意を無視するのは親のまね?

イヤイヤを放っておく対応をしました。すると、それが裏目に出たのか、私のいうことを無視するようになってしまいました。私の対応を見て、嫌なことがあったら無視をすると学んでしまったのかと不安です。
例えば、食事中、椅子に足をあげていたので、足をおろしてと言ったのですが、無視をされます。

(2歳10か月、3か月の男の子をもつママより)

子どもが影響を受けるのは親からだけではない

回答:坂上裕子さん

お父さん、お母さんは、自分の対応を子どもがまねしていると考えがちです。確かに、子どもは親からの影響を受けますが、影響を受けるのは親からだけではありません。成長の過程で親が教えていないことをやったり、覚えたりすることもたくさんあります。そのため、自分の行動が子どもに影響することを、考えすぎなくてもいいのかなと思います。

また、子どもは無視しているわけではないかもしれません。子どもは何かに集中しているときに、横から声をかけられると、声をかけられていることはわかってはいるけど、今やっていることをやりたい、そっちに集中したい、という気持ちが勝ってしまい、しっかり返事ができないこともありますよ。


イヤイヤの対応としての“共感”はどこまでしてあげればいいの?

公園に行ったときに、約束した時間になっても帰りたくないとイヤイヤをし出すことがあります。「そうだよね」と共感をしつつ、日によっては、約束の時間を延長します。
子どもに共感してあげることが大事だと聞くのですが、私の母親からは「甘やかし」と言われます。
どこまで共感してあげればいいのでしょうか?
(2歳10か月、3か月の男の子をもつママより)

子どもの気持ちを認めることと行動に移すことは別物

回答:坂上裕子さん

子どもの要求に応えることが、共感することだと思ってしまいがちですが、気持ちを認めることと行動に移すことは別物です。
子どもからすると、「こうしたかったんだよね」と気持ちをくみ取るような声かけをしてもらうだけでも、お母さんは自分のことを半分はわかってくれているんだなと感じます。
その上で、「でも、これはこういう理由でダメなんだよ」とダメな理由をしっかり伝えると、お父さんお母さんの都合や、世の中の都合というものがあることがわかっていきます。

子どもにも、お母さんの気持ちは伝わります。子どもの要求に応えられないときは、お母さんとお子さんとで、お互いに気持ちを伝えあうことで、良い落としどころをみつけてください。
子どもの要求に応えられるときは、応えてあげるといいと思います。

きぜんと対応すれば子どもにも伝わる

回答:大豆生田啓友さん

お母さん自身が、子どもに共感したい気持ちと、親の都合を優先したい気持ちとの間で揺れていると、それを子どもは察知します。そして、お母さんの気持ちが揺れている間は、まだイヤイヤを言っても大丈夫だろうと思います。

お母さんが「もう帰らないといけないから帰るよ」と、きぜんと対応すれば、子どもにも伝わります。そうしてあげないと、子どもが自分の気持ちを切り替えられません。
メリハリが大切です。きぜんと対応することは、子どもの気持ちの切り替えにもつながるため、とても大事なことだと思います。


虫を殺したり死なせたりする子ども、どうしたらよい?

息子は虫が大好きでよく捕まえてきます。でも「つぶしちゃえ」などと言って殺してしまうこともあります。また、「逃がしてあげよう」と言っても「イヤ」と言って虫かごに入れっぱなしで死なせてしまいます。どうしたら良いでしょうか?
(5歳の男の子をもつママより)

回答:大豆生田啓友さん

今の子育て環境の問題が何かと言うと、親の目のない、外でそのような経験をする機会が少なくなっているということです。
5歳であると、虫に関心をもって、場合によっては、「こうやったらどうなるかな?」と思うことは発達上おかしなことではありません。
私自身も子どものやることを見ても見ないふりをしたこともありますが、全て親が教えたり答えなきゃいけないと思う必要もないかなと思います。

回答:坂上裕子さん

命ってなんなのかを教えることはとても難しいことです。
いろいろな体験を通して、時間をかけて学んでいくことだと思うので、パパママがこう思うよ、などの気持ちは伝えつつ、あまり理解させることを急ぐ必要はないのかなと思います。


すくすくポイント
「園に行きたくない!」イヤイヤ期の子ども、専門家ならどう声かける?

発達心理が専門で、子育て支援活動を通して現代の親子関係を見つめている、坂上裕子さん(青山学院大学 教育人間科学部 准教授)のイヤイヤ期の対応法を紹介します。

これは、約8年前、坂上さんの息子さん(2歳ごろ)が、絵合わせカードに夢中になり、保育園に行きたがらなかったときの対応法です。


「もう1回!」と絵合わせカードに夢中な息子さん。

そこで、坂上さんが、
「そろそろ保育園に行かなきやいけない時間なんですけど~⋯?」と優しく声をかけると、
「ヤダ!ヤダよ!」「もっとやりたいよ!」と、ぐずりだしてしまいました⋯。

そのとき、坂上さんは息子さんにこのように声をかけました。

「もっとやりたいよね。ママもね、できればやらせてあげたいんだけど⋯ごめんね」
「そろそろ時間がないんだなぁ~」

そのように声をかけられた息子さんは、本格的に泣き出しそうに⋯。

すると、坂上さんは、

「ねぇ悲しいねぇ、もっとやりたかったもんねぇ」
「じゃ、この絵でどれが一番好きだった? この中ではどれが一番好きなの?」

と話題を変更。

すると、

「これ!」と好きな絵を泣きながら答えたのです。

「あ!パトカーが好きなの! じゃ、パトカーの次に好きなのはどれ?」
と、引き続き、息子さんに質問を続ける坂上さん。
質問をしながら、カードを片付けはじめます。

「じゃ、今一番乗りたいのはどれ?」と、質問を続けていると⋯

「(カードを)しまって!」

なんと、自分から片づけてと言ったのです。

これを聞いた坂上さんが、
「あ!おりこうだね~じゃ今度新幹線に乗りに行こうね」と声をかけると、
「新幹線!」とうれしそうに言う息子さん。

「ね!今度新幹線乗ろうね!」と返すと、息子さんの方から先生にかけよりギュッと抱きついていきました。

抱きついてきた息子さんを抱きしめながら、
「よしよし、悲しかったね」「でも、えらかったよー」と背中をポンポン。

息子さんのイヤイヤがすっきり収まりました。

★イヤイヤ期の対応のポイント
・共感して子どもの気持ちを言葉にしてあげること
・子どもに選ばせることで、気持ちの切り替えをしてあげること

坂上裕子さんからの一言

いつもこのような対応をしているわけではありません。
5回に1回くらい成功するといいなと思ってもらえると幸いです。
保育園に行く前のイヤイヤは、毎朝繰り返されていたので、ある程度予測が立つということもあり、これはうまくいった例です。

大豆生田啓友さんからの一言

私も自分の子どものイヤイヤ期はうまくいかないことが多かったです。
イヤイヤ期は、必ずしも、「このようにやればうまくいく!」というわけではありません。しかし、うまくいかなかったからといって、自分のやり方が悪かったんだと思わないようにしてください。
いろんな手をうって、子どもの気持ちを探りながらやっていくのが、うまくいくポイントなのだと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです