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研究内容紹介

6.1 次世代撮像技術

3次元構造撮像デバイス

 超多画素と高フレームレートを両立する次世代のイメージセンサーの実現に向けて、3次元構造撮像デバイスの研究を進めている。本デバイスは、受光部と信号処理回路をそれぞれ形成した後に積層して作製し、受光部直下に画素ごとの信号処理回路を集積した構造を備えている。この構造は、全画素並列に信号処理を行えることから、画素単位でデジタル化した信号を出力することが可能になり、画素数が増えても高いフレームレートで信号を読み出すことができる(図6-1)。
 2016年度までに、画素並列動作と画素内への集積を可能とした雑音低減回路を考案するとともに、受光部と信号処理回路を接続する埋め込み電極の微細化技術、信頼性の高い積層プロセスなどの要素技術を開発した。
 2017年度は、画素をアレー化し、320×240画素、画素サイズ約50µmの撮像デバイスを試作した。デバイスの設計にあたっては、画素内や信号読み出し経路に電流増幅バッファを配置することで、画素から安定してデジタル値を出力できる回路構成とした。製作プロセスでは、2016年度に開発した要素技術により直径5µmの埋め込み電極を1µm以下の位置合わせ精度で接続することに成功した。試作した撮像デバイスは、画素並列信号処理の特長を生かし、96dBの広いダイナミックレンジで16bitの出力を実現した(1)(図6-2)。
 この研究は、東京大学と共同で実施した。



図6-1 3次元構造撮像デバイス


図6-2 試作したデバイスの入出力特性

増倍膜積層型8K固体撮像デバイス

 8Kなどの次世代放送サービスでは、カメラの高解像度化、ハイフレームレート化により、撮像デバイスの1画素当たりに入射する光量の低下が課題になる。この課題の抜本的な解決に向けて、低電圧で電荷増倍作用が得られる光電変換膜(増倍膜)をCMOS回路上に積層した固体撮像デバイス(図6-3)の開発を進めている。2017年度は、増倍膜を構成する結晶セレン膜の暗電流低減に取り組むとともに、増倍膜を積層するための8K CMOS回路の試作を進めた。
 結晶セレン膜で発生する暗電流は、セレンの結晶性と密接な関係があると考えられることから、X線回折法による結晶性の評価を行った。その結果、膜はがれ防止のために挿入しているテルル層の結晶状態が、セレンの結晶性の良否に影響を与えていることが明らかになった。そこでテルル層の結晶状態を改善する新たな成膜法を開発することにより、印加電圧の上昇に伴う暗電流の増加を抑制した(図6-4)(2)
 増倍膜を積層するためのCMOS回路では、過度の電界集中による膜欠陥の発生等を防ぐために、画素電極とその周囲との段差をできるだけ小さくする必要がある。試作した8K CMOS回路では、最大で約900nmの表面段差が生じていたため、画素電極の周囲に絶縁膜を形成し、研磨による平坦化処理を施した。その結果、積層面の表面段差を5nm以下に低減できることを確認した。



図6-3 増倍膜積層型固体撮像デバイスの構造



図6-4 結晶セレン膜による増倍作用を評価する素子の構造(a)と暗電流特性(b)

高S/N単板カメラ用有機光電変換膜

 小型・軽量で機動性に優れた超小型単板カラーカメラの実現に向けて、有機撮像デバイスの研究を進めている。本デバイスは光の3原色(赤、緑、青)それぞれにのみ感度を持つ3種類の有機光電変換膜(有機膜)を積層したものである。有機撮像デバイスでは、積層した有機膜の下層へ入射光を透過させるため、それぞれの有機膜を挟みこむ電極を透明にする必要がある。これまでに、各色の有機膜の性能向上に取り組み、緑色用有機膜を透明電極で挟みこんだセル(光透過セル)で80%の量子効率が得られている。2017年度は、青色および赤色用光透過セルの高効率化を進めた。
 青色用光透過セルでは、光電変換材料として耐久性に優れた正孔輸送性の新規材料を選択するとともに、光吸収により生成される電子―正孔対の分離を促進する目的で、電子輸送性のフラーレンC60を5%添加した。また、有機膜の上に透明電極を形成する手法には、有機膜へのダメージを抑制できる電子ビーム蒸着法を適用した。試作した光透過セルでは、約6Vの印加電圧において最大77%の量子効率を得た(図6-5)(3)。青色用光透過セルの研究は日本化薬(株)と共同で実施した。
 また、赤色用セルについても材料の見直しを進め、光電変換材料として電子と正孔の両方の輸送性を持つサブナフタロシアニンを用いた光透過セルにおいて、約11Vの印加電圧時に赤色領域で最大80%の量子効率が得られた(図6-5)(4)。2016年度までに開発した緑色用と併せ、光の3原色全てにおいて光透過セルの高効率化を実現した。



図6-5 青色および赤色用光透過セルの量子効率

 

〔参考文献〕
(1) M. Goto, Y. Honda, T. Watabe, K. Hagiwara, M. Nanba, Y. Iguchi, T. Saraya, M. Kobayashi, E. Higurashi, H. Toshiyoshi and T. Hiramoto:“Fabrication of Three-Dimensional Integrated CMOS Image Sensors with Quarter VGA Resolution by Pixel-Wise Direct Bonding Technology,” 30th International Microprocesses and Nanotechnology Conference(MNC 2017),9A-9-2(2017)
(2) S. Imura, K. Mineo, K. Miyakawa, H. Ohtake and M. Kubota:“High-efficiency and low dark current crystalline selenium-based heterojunction photodiode with a high-quality tellurium nucleation layer,” Proc. of the IEEE Sensors 2017, B3L-C, pp.1140-1142(2017)
(3) 高木,堀,堺,清水,大竹,相原:“透明電極で挟んだ青色用有機光導電膜の特性改善,” 映情学冬大,22C-2(2017)
(4) 高木,堀,堺,清水,大竹,相原:“赤色に感度を持つ高効率な光透過型有機光導電セルの製作,” 第65回応物春季予稿集,20p-A204-6(2018)