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研究内容紹介

6.1.2 有機撮像デバイス

 放送用3板式カラーカメラと同等な画質を有する超小型単板カラーカメラの実現に向けて、直接積層型有機撮像デバイスの開発を進めている。本デバイスは光の3原色それぞれにのみ感度を持つ3種類の有機光電変換膜(有機膜)と、それぞれの有機膜で発生した電荷を読み出す光透過型の薄膜トランジスター(TFT)回路とをガラス基板上に交互に積層したものである(図1)。
 本デバイスの高解像度化に向けては、画素ピッチの微細化と各色の有機膜の距離によって生じる色ごとの光学像のボケが課題となっていた。2014年度は、画素ピッチを従来の1/2の50μmに微細化したTFT読み出し回路の試作と、各層間の絶縁膜の薄化に取り組んだ。
 透明なアモルファスIn-Ga-Zn-O(IGZO)TFTの微細化については、TFT製作時のエッチング条件の最適化により実現した。さらにオゾンアニール処理を行うことで、有機膜の耐熱温度以下の150℃で、従来に比べて一桁以上のオンオフ比を達成できた。また、層間絶縁膜の薄化については、塗布形成のバッファー層とプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法で窒化間シリコン膜を形成することで有機膜にダメージを与えること無く、3層の有機膜の距離が5.8μmの3層直接積層構造を試作することに成功した(図2)(1)。これにより、有機撮像デバイスの高解像度化への見通しが得られた。
 この研究は、有機光電変換膜開発の一部については埼玉大学と、また、TFT回路の開発については高知工科大学と共同で実施した。

 

図1 直接積層型有機撮像デバイスの断面図
 

図2 試作した3層直接積層構造

〔参考文献〕
(1) H. Seo, T. Sakai, H. Ohtake and M. Furuta:“Stacked Organic Photoconductive Films and Thin-Film Transistor Circuits Separated by Thin Silicon Nitride for a Color Image Sensor,” IEEE SENSORS 2014,pp.1672-1675(2014)