ホーム 研究内容 ニュース 刊行物 アクセス

研究内容紹介

5.5 映像認知解析

 8Kスーパーハイビジョン(SHV)の広視野視聴環境に適した映像の制作を支援するため、映像の大きさや動きなどの特徴と主観的な好ましさや不快度との関係を明らかにする研究を進めている。


好まれる映像サイズの測定

 大画面での視聴に適した映像の特徴を明らかにするために、映像の大きさの好みについて心理実験を通じた研究を進めている。2017年度は、風景・人物・物体などのさまざまなSHV映像を大型ディスプレーに映した場合に、好ましいと感じる映像の大きさを心理実験によって計測し、表示された映像の特徴との関係を調べた。映像の特徴については、主な被写体と思われる領域や映像全体の印象などを主観評価実験によって調べ、その特徴量を分析した。その結果、好ましいと感じる映像の大きさは、映像中の主要な被写体の実世界での大きさと強く相関することが明らかになった(図5-7)。さらに、映像全体から感じる「力強さ」や「広がり」の印象を定量化した指標とも相関が高くなることが示された(1)。今後は、ディスプレーの大きさや観察距離などがどのように影響するのか、調べていく。



図5-7 映像の大きさの好みに関する心理実験の結果

動揺映像分析技術

 動きの大きな映像(動揺映像)は、大きな視野角で視聴すると酔いのような不快感を生じることがある。このような映像を分析することにより、視聴時に生じる不快感の程度(不快度)を推定する技術の研究を進めている。2017年度は、対象をSHV映像まで広げ、複数の動揺領域の目立ちやすさ(誘目度)とその位置関係により、認知される画面の揺れの大きさ(動揺認知量)と不快度がどう変化するかを心理実験で調べた。その結果、動揺認知量と不快度は、ともにSHVの視野角で飽和傾向が表れていること、動揺認知量は動揺領域の誘目度、位置のいずれの影響も受けないが、不快度は誘目度の高い動揺領域の影響が支配的で、その距離が離れるほど不快度が低くなることが明らかになった(2)
 これらの知見に基づいて、動揺領域の時空間周波数成分や位置関係など、映像の物理的な特徴量から動揺認知量と不快度を推定するアルゴリズムを改良し、一般映像を用いた検証実験を実施してこのアルゴリズムによる推定値の妥当性を検証した。


 

〔参考文献〕
(1) M. Harasawa, Y. sawahata and K. Komine:“The factors affecting preferred physical size of high-resolutional moving images,” The Visual Science of Art Conference 2017, Berlin, Aug(2017)
(2) 蓼沼:“広視野動揺映像における動揺認知量と不快度,” 映情学技報,Vol. 42, No. 4, pp. 93-98(2018)