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研究内容紹介

2.2 立体映像デバイス技術

超高密度空間光変調器の研究

 自然な立体映像を表示することができる空間像再生型の立体テレビを実現するため、電子ホログラフィー用表示デバイスの研究に取り組んでいる。広い視域の立体映像を動画で表示するには、これまでにない微細な画素で構成される超高密度の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)が必要である。当所では、狭画素ピッチ表示デバイスとして、スピン注入型SLM(スピンSLM)の開発を進めている。
 スピンSLMは、磁性体によって画素が構成されており、磁性体の磁石の向き(磁化方向)に応じて反射光の偏光面が回転する現象(磁気光学効果)を用いて光を変調するデバイスである。これまでに、画素を構成する磁性体として、低電流で磁化方向を反転することができるTMR(Tunnel Magneto-Resistance:トンネル磁気抵抗)光変調素子を開発し、画素ピッチ2µm、画素数100×100のアクティブマトリクス駆動スピンSLMにおいて2次元画像を表示した(1)
 2017年度は多画素化を進め、画素ピッチ2µm、画素数1,000×1,000のスピンSLMを試作し、2次元画像表示に成功した(2)(図2-5)。また、画素ピッチの高密度化や多画素化を推進するため、新奇構造の磁壁移動型光変調素子開発に取り組み、ガドリニウム鉄合金から成る磁性細線において、電流誘起による磁壁移動の基本原理検証に成功した(3)。さらに、将来の低消費電力化技術として、電圧制御磁気異方性効果に注目し、ガドリニウム鉄合金を用いて、原理的な限界とされる厚さの数倍以上(厚さ9nm)の膜において、電界による磁気特性の制御に成功した(4)。今後、これら新奇構造を適用したスピンSLMの開発を進める。



図2-5 (a)試作した画素ピッチ2µm、画素数1,000×1,000の2次元スピンSLMと(b)2次元表示画像

光フェーズドアレーの研究

 インテグラル立体ディスプレーの飛躍的な性能向上を目指し、レンズアレーを用いずに各画素から出力される光線を高速に制御することができる光偏向デバイスの研究開発を進めている。このデバイスが実現できれば、広視域と高解像度を両立する立体映像の再生が可能となる。現在、複数の光導波路(チャンネル)から成る光フェーズドアレー(OPA:Optical Phased Arrays)に着目し、電圧で屈折率を超高速に制御できる電気光学(EO:Electro-Optic)ポリマーを適用した素子の設計と試作・評価を進めている。
 EOポリマー光フェーズドアレーでは、チャンネルごとに電圧を印加しEOポリマーの屈折率変化による光の位相を制御することで、出力光ビームの形状と偏向方向を自在に変えることができる。これまでに、8チャンネル構造の光フェーズドアレーを設計・試作し、基本動作を実証した。
 2017年度は、素子の作製工程で必要となるポーリング処理を工夫することにより、素子のEO係数が改善され、位相制御性能が飛躍的に向上した。ポーリング処理は、高温に加熱した素子に対し、高電界を印加することでEOポリマーの分子の向きをそろえる配向技術である。その結果、出力チャンネルピッチ10µmで設計・試作した光フェーズドアレーにおいて、±3.2度の光偏向動作と電圧による位相変化の線形性を実証することに成功した(5)〜(7)(図2-6)。本研究は、情報通信研究機構と共同で実施した。



図2-6 OPAデバイスの基本構造と出力光ビームパターン

 

〔参考文献〕
(1) 青島,金城,船橋,麻生,加藤,町田,久我,菊池:“アクティブマトリクス駆動スピン注入型空間光変調器,” NHK技研R & D, No. 166, pp.28-38(2017)
(2) N. Funabashi, H. Kinjo, K. Aoshima, D. Kato, T. Usui, S. Aso, K. Kuga, T. Mishina, K. Machida, T. Ishibashi and H. Kikuchi:“Magneto-Optical Spatial Light Modulator Driven by Spin Transfer Switching for Electronic Holography,” Proc. of IDW’17, AMD8-2, pp.400-403(2017)
(3) 海老沢,青島,加藤,船橋,久我,秋山,町田:“Gdx−Fe 1-x合金磁性細線における電流誘起磁壁移動特性の組成依存性,” 第41回日本磁気学会学術講演概要集,21pA-14(2017)
(4) N. Funabashi, H. Kinjo, T. Ueno, S. Aso, D. Kato, K. Aoshima, K. Kuga, M. Motohashi and K. Machida:“Voltage-Controlled Magnetic Anisotropy in Tb-Fe-Co/MgO/Gd-Fe MTJ Devices,” IEEE Trans. Magn., Vol. 53, No. 11, p.4003304(2017)
(5) Y. Hirano, Y. Motoyama, K. Tanaka, K. Machida, T. Yamada, A. Otomo and H. Kikuchi:“Optical phased arrays using electro-optic polymer waveguides,” Proc. 9th International Conference on Molecular Electronics and Bioelectronics, P-B-041(2017)
(6) Y. Hirano, Y. Motoyama, K. Tanaka, K. Machida, T. Yamada, A. Otomo and H. Kikuchi:“Beam Deflection on Optical Phased Arrays with Electro-optic Polymer Waveguides,” Proc. 2017 IEEE Photonics Conference, MF4.5(2017)
(7) 平野,本山,町田,田中,山田,大友,菊池:“EOポリマー光フェーズドアレイを用いた光ビーム制御,” 映情学会年次大,24C-4(2017)