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研究内容紹介

1.7 メディアトランスポート技術

 MMT(MPEG Media Transport)技術を次世代地上放送の多重伝送方式として適用するための研究開発、および4K・8KライブコンテンツのIP配信の実証や端末間同期技術を用いた新たな視聴体験の提示など、MMTによるIPマルチキャスト配信技術についての研究を進めている。


次世代地上放送の多重伝送方式

 次世代地上放送の実現に向けて、地上放送の伝送路符号化方式に適合するIPパケット多重化方式と、SFN(Single Frequency Network)を実現するためのSTL(Studio to Transmitter Link)/TTL(Transmitter to Transmitter Link)区間のIP伝送方式を検討した。検討結果を仕様としてまとめるとともに、再多重化装置を試作し検証を行った(1)。具体的には、熊本県の人吉・水上実験局において、再多重化装置の出力信号を商用IP網で複数の変調装置へ伝送し、信号内の制御情報で同期制御を行うことで、IP伝送によるSFNが構築可能なことを確認した。また、次世代地上放送におけるモバイルサービスの品質向上を目指して、移動中など放送波を受信できなくなったときにモバイル通信での受信へとシームレスに切り替えて番組視聴を継続できる放送信号補完方式を提案し、フィールド実験(図1-9)により実現の可能性を示した(2)(3)
 これらの研究の一部は総務省の委託研究「地上テレビジョン放送の高度化技術に関する研究開発」を受託して実施した。



図1-9 補完機能の有無によるフィールド実験の様子

MMTによるIPマルチキャスト配信技術

 8Kスーパーハイビジョン放送の普及促進に向け、ケーブルテレビ局などのクローズドネットワークでのIPによる再放送や、放送と連携した関連コンテンツのIP配信に適用することを目指して、MMTによるIPマルチキャスト配信技術の検証を行った。2017 NHK杯国際フィギュアスケート競技大会のライブコンテンツを用いた配信実験では、4K・8Kコンテンツを複数の配信事業者へ低遅延で同時配信できることを確認した。また、MMTの特徴である絶対時刻のタイムスタンプによる高精度同期方式の応用例として、複数の受信端末間における時刻合わせと同時に映像を表示するタイミングの調整を行って、複数のIPマルチキャスト配信されたコンテンツを時間のずれなく表示する端末間同期技術を開発した。技研公開2017、CEATEC JAPAN 2017およびNHKサイエンススタジアム2017において本技術を応用した体験型コンテンツ「どーもくんのどたばたレース」を展示し、新たな視聴体験の提供が可能であることを示した(4)


 

〔参考文献〕
(1) 青木ほか:“次世代地上放送におけるIP多重化方式の一検討,” 映情学年次大,14C-1(2017)
(2) Y. Kawamura et al.:“Field Experiment of Hybrid Video Delivery Using Next-Generation Terrestrial Broadcasting and a Cellular Network,” IEEE International Conference on Consumer Electronics 2018, pp.173-174(2018)
(3) 河村ほか:“次世代地上放送モバイルサービスにおける放送通信連携の検討と試作,” 映情学年次大,14C-4(2017)
(4) 河村:“MMTを用いた端末間同期技術,” ケーブル新時代,Vol. 14, No. 7, p.47(2017)