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研究内容紹介

1.2 AR・VR

 AR(拡張現実)やVR(バーチャルリアリティー)に関する研究を新たに立ち上げ、ARやVR技術を活用して視聴者に新しいユーザー体験をもたらすサービスイメージを検討した。2018年度は、既存の技術を組み合わせて新たな視聴体験を提供する「By AR/VRサービス」と、AR/VR分野でこれまでに導入されていない技術や新たに開発した技術を実装して新たな視聴体験を提供する「For AR/VRサービス」について検討した。


By AR/VRサービス

 2次元映像をARやVRの3次元バーチャル空間に提示する場合に、どのように提示すべきかを検討した。ARグラスの利用を想定した2次元映像の利用形態や提示サイズ、座標系を整理した。座標系は、(a)世界座標系、(b)周囲環境座標系、(c)対象物座標系、(d)手首座標系、(e)頭部座標系、(f)胴体座標系の6種類に分類し(図1-10)、それぞれの利用形態にふさわしい座標系を提案した(表1-1)。
 また、アルファー(不透明度)チャンネル付き全天球映像に注目し、2次元映像から提示すべき被写体を切り抜き、フレームレスで3次元空間に提示する方法を提案した。さらに、アルファーチャンネル付き全天球映像の半径をカメラから被写体までの距離に応じて変化させることで、被写体映像を視差付きで提示する方法を考案した(図1-11)。



図1-10 利用形態に合わせた座標系
表1-1 利用形態の分類と理想的な表示サイズ・座標系

図1-11 アルファーチャンネル付き全天球映像による提示

For AR/VRサービス

 高精細なVR映像を活用した新たな視聴体験を提供できるサービスを検討した。2018年度は検討にあたって必要な高精細VR映像を、魚眼レンズを装着した複数台の放送用8Kカメラを並べて撮影、画像結合(スティッチング)して制作した。この手法により、ヘッドマウントディスプレー等で表示できる没入感の高い映像が得られた。撮影距離やカメラ配置の異なる複数の制作手法で、複数のシーンで撮影実験を実施した。撮影距離については、遠方から近距離まで異なる距離で撮影した。カメラ配置については3つの異なる手法を試行した。2台の8Kカメラを前後逆向きに配置し、360度方向を撮影する方法、および2台の8Kカメラを横に並べ前方に両眼視差のある立体VR映像を取得する手法を試行、検討した。さらに、最大限解像度を高め、かつ放送制作の演出運用の柔軟性を考慮し、3台の8Kカメラを前方水平方向に角度を変えて配置して視野角180度以上をカバーするようなVR映像を撮影する手法を新たに提案し、8Kを超えるVR映像を制作した(図1-12)。今後これらを用いて、高精細なVR映像を用いたサービスイメージを検討していく。



図1-12 制作した高精細VR映像

 

〔参考文献〕
(1) 川喜田,吉野,小出,久富:“3D空間における2D動画の形態に関する検討,” HCGシンポジウム2018,HCG2018-I-1-1 (2018)
(2) 小出,吉野,川喜田,久富:“複数8Kカメラを用いた高精細VR用高没入感映像制作の一検討,”映情学技報,Vol.43, No.10, BCT2019-47, pp.45-48 (2019)