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研究内容紹介

1.2 カメラ

8K 4倍速高速度カメラとスロー再生装置

 スポーツ番組での8Kスローモーションシステムの実現に向けて、高速度カメラ装置、スロー再生装置の開発を進めている。
 高速度カメラについては、フレーム周波数240Hzに対応した撮像素子および撮像装置の開発を進めた。撮像素子は、光学サイズが1.25インチで画素数が3,300万のCMOS撮像素子を新たに試作した(1)(図1-2)。撮像素子の内部には、3段パイプライン方式による積算型アナログデジタル変換器(ADC)を備え、さらにADC回路のばらつきを抑えるデジタルCDS(相関2重サンプル)回路を備えた。これにより、フレーム周波数120Hzでの高画質撮影と、フレーム周波数240Hzを超える(最大480Hz)高速度撮影の両方に対応した。試作した撮像素子を用いて単板カラー方式による8K 240Hzカラー撮像装置を試作した。さらに、色分解光学プリズムを用いた3板式8K高速度カメラの開発にも着手した。
 スロー再生装置については、高速度モノクロ撮像装置とカラーサンプリング4:2:0圧縮記録装置を用いた8K 240Hzスロー撮像実験を行った(2)。また、2016年度に試作した60Hz記録60Hz同時再生装置を改修し、240Hz記録60Hz同時再生に対応した。この装置では、入力インターフェースはU-SDI入力2系統を用いてカラーサンプリング4:4:4に対応し、圧縮回路は60Hzが処理できる信号処理基板を4系統実装し、記録ユニットはSATA SSDの記録ユニットを4系統実装し、それぞれ240Hzに対応した。また外部から汎用のコントローラで制御可能とした。
 一方、既開発のフルスペック8Kスーパーハイビジョン機材(120Hz超小型単板カメラおよび圧縮記録装置)を用いて、2倍速8Kスローモーションシステムを構築し、NHK杯フィギュアなどのスポーツ番組で使用した。



図1-2 試作した1.25インチ高速度撮像素子

フルスペック8K小型カメラ

 小型で実用的なフルスペック8Kスーパーハイビジョンカメラの実現を目指して、1.25インチ光学系による3板式プロトタイプ8Kカメラの開発を進めた。センサー駆動基板、信号処理基板などを4倍速高速度カメラと共用することにより、効率的な開発を図った。
 既開発のフレーム周波数60Hz画素数1億3,300万フル解像度単板カメラについて、インターライン走査(飛び越し走査)により120Hz撮影に対応した。スキップされたラインを動きの有無に応じて適応的に補間することにより、静止部分における解像度特性維持と、動解像度改善の両立を図った(3)
 また、既開発のフルスペック8Kカメラや単板カメラを用いて、屋外でのフルスペック映像収録や技研公開2017でのライブ制作、NHKスペシャルなどの番組協力を行った。


その他のカメラ周辺技術

 将来の普及型8Kカムコーダーの実現に向け、8K映像をAVC/H. 264エンコーダーで1/80に圧縮し、SDカード4枚で1時間以上収録可能な原理検証試作機を開発した。圧縮映像は48dB以上のPSNRが得られた(4)
 オートフォーカス(AF)の実現に向け、像面位相差方式とコントラスト方式を組み合わせたハイブリットAF方式撮像実験装置を開発し(5)、技研公開2017で展示した。
 入射光量を電子的に連続可変できる電子式可変NDフィルターについて、金属塩析出型材料を用いた調光素子を試作した。材料の見直し、駆動回路の工夫により、応答時間(光透過率が初期から1/8に減衰する時間)を3秒まで高速化した(6)
 高彩度の被写体を撮影した際に階調が失われる問題について、その原理を解明し、カメラ内部の信号処理におけるリニアマトリックスとニー・クリップの処理の順序を入れ替えることで階調再現を改善できることを示した(7)
 テレビカメラの2次元的な空間解像度特性をリアルタイムで正確に測定可能なシステムを開発し、NAB Showで展示した(8)
 撮像素子の研究は、静岡大学と共同で実施した。電子可変NDの研究は、(株)村上開明堂と共同で実施した。


 

〔参考文献〕
(1) T. Yasue, K. Tomioka, R. Funatsu, T. Nakamura, T. Yamasaki, H. Shimamoto, T. Kosugi, S. Jun, T. Watanabe, M. Nagase, T. Kitajima, S. Aoyama and S. Kawahito:“A 2.1μm 33Mpixel CMOS Imager with Multi-Functional 3-Stage Pipeline ADC for 480fps High-Speed Mode and 120fps Low-Noise Mode,” 2018 IEEE International Solid-State Circuits Conference(2018)
(2) 梶山,船津,山﨑,安江,菊地,小倉,宮下,島本:“高速度モノクロ撮像装置および圧縮記録技術を用いた8K/240fpsスローモーションシステム,” 高速度イメージングとフォトニクスに関する総合シンポジウム2017, 8-2(2017)
(3) T. Nakamura, T. Yamasaki, R. Funatsu and H. Shimamoto:“An 8K full-resolution 60-Hz/120-Hz multi-format portable camera system,” SMPTE 2017 Annual Technical Conference(2017)
(4) R. Funatsu, T. Kajiyama, T. Matsubara and H. Shimamoto:“Experimental Prototype of SD Memory Card Recordable 8K/60P Camcorder,” IEEE ICCE 2018(2018)
(5) T. Yamasaki, R. Funatsu, T. Nakamura and H. Shimamoto:“Hybrid Autofocus System by Using a Combination of the Sensor-Based Phase-Difference Detection and Focus-Aid Signal,” IEEE ICCE 2018(2018)
(6) 菊地,宮川,安江,島本,持塚,牧田:“金属塩析出型調光素子の制御技術の開発,” 映情学冬大,12C-1(2017)
(7) 野村,安江,正岡,日下部:“HDR/SDR一体化制作カメラにおける色再現改善,” 映情学年次大,34E-2(2017)
(8) K. Masaoka, K. Arai, K. Nomura, T. Nakamura, Y. Takiguchi:“Real-Time Measurement of Ultra-High Definition Camera Modulation Transfer Function,” SMPTE 2017 Annual Technical Conference & Exhibition(2017)