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未来の放送を拓く
山田 宰/NHK 放送技術研究所所長†
†現在,パイオニア(株)常務執行役員研究開発本部長
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昨年6月に当所では「技研中長期ビジョン 〜夢の実現に向けて〜」を公表した。そこでは,放送をめぐる社会状況,メディア状況,視聴者の意識の変化を見通した上で,将来の放送がどうなるか,またそのために技研はどのような研究に取り組むべきかということについて述べている。ここでは,将来の放送の技術的な動向や当所の中長期ビジョンについて紹介する。
最初に,放送サービスの歴史とNHK 技研のあゆみを振り返り放送の歴史を概観する。次に,中長期ビジョンの内容である21世紀の技研による研究開発について紹介する。
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How do People Make Sense of New Media?
Byron REEVES/Director the Center for the Study of Language and Information Stanford University
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How do people make sense of new media ?(いかにして人は新しいメディアを理解するのか?)
NHK やこの会場においでの技術者の皆さんは,さまざまな情報を手に入れるための技術を現実のものとしました。この新しいメディアによって「何でも,いつでも,どこでも」が実現し,マルチメディアが日常生活に浸透し始めています。
我々の,約20年間にわたる人とメディアの関係の研究結果から,人がメディアに接するとき,人に接するのと同じような接し方をする場合があることがわかりました。そこで私は,人と人との関係として,心理学的に得られている知見を,人とメディアの関わりに適用できると考え,いくつか実験を行いました。
例えば,人には「本人からその人自身に関することをたずねられたら,礼儀として誉める」という心理学的規則がありますが,コンピューターに対しても,同じ反応をするという結果が得られています。これは,コンピューター科学を学ぶスタンフォードの学生でも,アジア,欧州など国が違っても同じ結果が得られました。すべての人に共通に,機械の外見にかかわらず,無意識に,自動的に現れる反応なのです。
メディアには,顔や声があったり,インタラクティブに反応したりするなど,人に近いところがあり,人間の脳は21世紀になっても昔ながらの反応をするわけです。さらに同じ画像でも画面の大きさ,PC とTV のようなメディアの役割による先入観,居間と書斎の違いのような環境などによって,異なる印象を与えることがわかりました。また,ロボットを使ったインターフェース,動画像,人物画像を用いた対話型インターフェースなどが有効であり実際の人の社会的反応と同様の効果が得られることが確認されています。
マルチメディアの世界の変化は劇的なものです。しかし,その研究にあたっては,人の社会的な反応について考慮していくことが重要です。
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次世代データ放送サービス
石川 浩一/マルチメディアサービス
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2000年12月に開始されたBS デジタル放送では,高画質,高音質のハイビジョン放送に加えて,マルチメディアサービスであるデータ放送サービスが開始された。データ放送では,番組案内や最新のニュース,天気などの情報を,簡単なリモコン操作で得ることができる。また,双方向機能を利用したクイズ番組への参加なども可能であり,テレビは「見る」だけのテレビから「見て使う」テレビへと進化した。
2003年放送開始予定の地上デジタル放送では,その放送方式としてフェージングやマルチパスに強いISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式が用いられる。この放送方式の特長を生かした新たな放送サービスとして,家庭の中での受信を対象とした放送に加えて,移動中での受信や,小型の携帯型受信機向けの放送が考えられている。データ放送については,BS デジタル放送のデータ放送記述言語であるBML(Broadcast Markup Language)の機能を拡張して,インターネットへの接続機能やGPS(Global Positioning System )などの外部機器と連携するデータサービスの検討が進んでいる。この結果,さらに地上デジタル放送で
は,「どこでも見られて,いろいろ使える」テレビへと進化することになる。
本稿では,地上デジタル放送のデータサービスに関し,移動中での受信におけるデータサービスの例として「位置連動型データサービス」,ハイビジョン受信機や携帯型受信機など,さまざまな受信機に対して効率よく情報を伝送するデータサービスの例として「各種受信機向けデータサービス」について検討した結果の概要を紹介する。
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地上デジタル放送の放送波中継技術
中原 俊二/デジタルネットワーク
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地上デジタル放送信号の中継局への無線伝送による配信手段には,親局の放送波を受信しそのまま自局のサービスエリアへ所定の出力で再送信を行う放送波中継と,マイクロ波による別回線を用いるTTL (Transmitter to Transmitter Link )がある。放送波中継は,中継用の新たな周波数が不要なため,周波数の有効利用が図られることとコストの点で有利と考えられる。しかし,親局から中継局までの中継回線にマルチパスやフェージングなどの妨害がある場合,中継局の受信信号の特性が劣化する。このため中継局のサービスエリアを確保するためには,中継局において信号の特性改善が必要となる。
このため当所では,マルチパスやフェージングのある中継回線においても地上デジタル放送の放送波中継を実現するための研究を進めている。本報告では,まず,放送波中継の干渉妨害の種類とそれらを改善する要素技術について述べる。また,中継回線の信号特性の例として,実際の放送波中継のマルチパス,フェージングを測定した結果を示す。次に,中継手法の分類を行い,等化中継方式およびダイバーシティ受信による中継方式を提案する。最後に,提案した方式に基づく試作中継装置による信号特性の改善効果を示す。
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次世代放送衛星のためのフェーズドアレーアンテナ技術
田中 祥次/衛星デジタルシステム
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2000年12月に開始されたBS デジタル放送は,高画質なデジタルハイビジョン放送中心のメディアとして位置づけられている。一方,次世代の大画面,超高精細放送など大容量・多チャンネル放送のための伝送メディアとして21GHz 帯衛星放送が検討されている。21GHz 帯の周波数帯では12GHz 帯に比べ降雨による電波の減衰が大きく,デシベル換算で12GHz 帯の約3倍になるため,降雨により大幅にサービス時間率が低下する。その対処として,21GHz 帯衛星放送では,伝送方式の工夫や降雨による電波減衰(降雨減衰)を補償する機能をもつアンテナを搭載した衛星システムが有望である。
これまでの日本の放送衛星搭載アンテナでは,複雑なサービスエリアの形状に合わせて,できるだけ効率良くかつ均一に電波を放射することを念頭に設計が行われてきた。これに対して21GHz 帯の放送サービスを行う次世代放送衛星用搭載アンテナとして,当所では大型フェーズドアレーアンテナを用いて降雨域のみに電波ビームの強さを増加し,降雨減衰の補償を効率的に行う研究を進めている 。
本稿では降雨減衰を克服するためのフェーズドアレーアンテナによるビーム形成技術について述べる。まず,衛星搭載用の観点からアンテナ方式および放射パターン設計法を検討する。次に,フェーズドアレー給電による1枚反射鏡アンテナにより降雨減衰を補償する放射パターンの設計結果について述べる。
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3次元音響再生
スピーカーアレーによる音像制御
中山 靖茂/次世代符号化
大久保 洋幸/立体映像音響
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当所では,将来の放送システムの1つとして,あたかもその場にいるような臨場感が得られる「高臨場感放送システム」を検討している。映像システムとしては立体映像や広視野・超高精細映像の検討を進めている。一方,音響システムとしては,コンサートホールのような自然で高い臨場感のある音を家庭で楽しめる3次元音響システムの実現を目指して研究を進めている。
BS デジタル放送で実用化された5.1チャンネルサラウンドステレオは,従来の2チャンネルステレオに比べると臨場感も高く,映画音響との互換性があるなど現時点では優れた方式である。しかし音場の再現という面では十分とは言いがたい。3次元音響を実現するにはホールや会場に特有の残響音などの「音場空間」の再現や発音体までの奥行き感や距離感などの「音像の距離感」の再現が必要である。
当所では音像の距離感をスピーカーよりも近くに定位できる「スピーカーアレーシステム」と音場空間を方向別の反射音を考慮して再現する「バーチャルリアリティーオーディオシステム(VRAS :Virtual Reality Audio System)」の研究を行っている。
本稿では,2章で次世代放送システムにおける3次元音響再生に関する統一的な考え方を,3章で「音像の距離感」を再現するスピーカーアレーシステムについて説明する。また,4章で「3次元音響再生」の一手法として今回試作した,スピーカーアレーとVRASの連動システムについて紹介する。
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超高精細映像システム
金澤 勝/立体映像音響
菅原 正幸/立体映像音響
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ハイビジョンは高い臨場感を目指した放送メディアとして開発され,デジタル放送の開始に伴い普及が進んでいる。当所では,ハイビジョンなど放送メディアを担う映像システムの開発を行っているが,中長期の将来を展望すると,臨場感のみならず没入感や立体感も生じさせる放送メディアが求められる。これを実現する映像システムが,超高精細映像である。
ハイビジョンは画面高さの3倍の距離から見るように設計されており,そのときの画面を見込む視野角は水平で約30 °である。画面を見ることによって引き起こされる臨場感は,視野角とともに増加し,水平約100°で飽和することが報告されている 。また,高精細な静止画を用いた評価実験により,大画面ではハイビジョンよりも広い視野角が好まれることが示されている 。画面を見込む視野角を広げると,視距離が相対的に短くなり,その視距離において画素構造が見えないよう超高精細映像にする必要がある。
このように,超高精細映像システムは,非常に高い臨場感を引き起こす放送メディアを実現できる。さらに,超高精細映像は,番組制作において背景画像などの素材としての利用も可能であるとともに,超高精細映像で制作した番組をハイビジョン番組や現行の525本方式の番組などへ変換することも考えられる。このため当所は,将来の放送メディアとして有望な超高精細映像システムの実現に向けて研究を進めている。超高精細映像システムの基礎研究のため,当面の目標として水平の視野角100°以上を可能とする,走査線4000本の映像システムを検討している。
今回,走査線4000本を有する撮像・表示装置およびそれらに付随するフレームメモリーなどの装置を試作し,視野角110°の表示で高臨場感のイメージを実現することができたので報告する。今回の試作は,伝送装置や長時間の記録装置などを含んでいない。また,現時点で利用可能なデバイスの制限などにより,開発した機器の性能は,上記の目標を十分に満足するものではない。このように現在は,超高精細映像システムの構築に向けての基礎段階である。今後,この試作システムを用いて,必要となる走査線数や他のシステムパラメーターを検討していく。
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映像検索のための顔画像認識技術
サイモン クリッピングデル/ヒューマンサイエンス
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放送の多チャンネル化により,質の高い多くの番組を制作する必要性が高まっている。コストを削減した番組制作環境の実現が期待されている。一方,コンピューター,データベース,通信ネットワークなどの技術的発展により,分散している映像素材に容易にアクセスできる環境が整いつつある。今後,新たに撮影した素材に加え,大容量のアーカイブに保存された映像を再利用して番組を制作するスタイルが普及するものと考えられる。このような制作環境で効率良く番組を制作するためには,目的のシーンを撮影素材またはアーカイブからすばやく,かつ正確に見つけ出す必要がある。
そのためには,意味のあるインデックス(例えば「AさんとBさんの対話」,「EUの蔵相会議」など)を付与することが不可欠である。必要なシーンを探すとき,意味のあるインデックスがあると膨大な映像素材から高速に検索できる。現在,放送済みの番組をアーカイブに登録するとき,番組の要約テキストも検索用として登録している。しかし映像内容の特定シーンを見つけ出すためには,シーンごとのインデックスを必要とし,そのような多数のインデックス付与を手動で行うのは現実的ではない。このような理由から現在,映像への自動インデックス付与に関する研究が世界中で盛んに行われている。
映像の内容を表す記述は「誰が」,「何を」,「している」,「言っている」などの形式となるので,映像から自動的にこのような情報を抽出するためには,顔認識,音声認識,動作認識,顔表情認識,物体認識やそれらを組み合わせた技術が有効な手段となる。
本稿では,自動インデックス付与のための顔画像認識技術について,当所で研究開発してきた顔画像認識プロトタイプシステムの仕組みを中心に紹介する。
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サーバー型放送におけるコンテンツ保護方式の検討
放送コンテンツの多様な視聴と利用を目指して
西本 友成/記録・メカトロニクス
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記録媒体やネットワークの大容量化・高速化が進み,デジタル録画機器や,BS デジタル放送,ブロードバンドインターネットが登場し,高品質な映像や音声などのデジタルコンテンツを楽しめる環境が整ってきた。一方で,劣化することなしにコンテンツを複製でき,ブロードバンドネットワークを用いてコンテンツを不正に再送信される恐れがでてきたため,デジタルコンテンツの不正なコピーや2 次利用を防止するための仕組みを早急に確立する必要がある。また,新しい放送サービスを実現しそのコンテンツの円滑な流通を促進するためにも,デジタルコンテンツの知的財産権保護が重要な課題となっている。
大容量蓄積装置を備えた受信機を利用した新しい放送をサーバー型放送と呼び,ARIB(電波産業会),情報通信審議会やTV- Anytimeフォーラムで規格化が進められている。サーバー型放送は,コンテンツを蓄積することで,放送時間に拘束されない番組視聴や,ハイライト的な番組視聴などの多様な放送サービスを視聴者に提供する。そのため,サーバー型放送の実現に向けて,デジタルコンテンツの蓄積利用を可能とする新しいコンテンツ保護システムが求められている。このコンテンツ保護システムをRMP(Rights Management and Protection)システムと呼ぶ。
本報告では,まずサーバー型放送で求められているコンテンツ保護技術に関する要求条件と解決すべき課題について述べ,当所で開発したサーバー型放送のためのコンテンツ保護システムの概要を述べる。
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超小型・高性能シリコンマイクロホン(IC マイク)の開発
田島 利文/撮像デバイス
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現在放送で使われているマイクロホン(以下,マイクと呼ぶ)は広帯域,高感度などの優れた音響特性を実現している。しかしその製作には,多数の部品の組立や精密な調整などの工程が必要なため,マイクの超小型化や低廉化が困難という問題がある。
このため超小型,高性能でしかも量産性にも優れた次世代マイクの開発が強く望まれており,これを実現するものとして,シリコンを主材料としたコンデンサー型のマイクに注目が集まっている。このマイクはシリコン半導体の微細加工技術を活用して製作されるもので,シリコンマイク,あるいはIC マイクと呼ばれ,国内外で研究が続けられてきた。しかし,シリコン基板の上に良好な特性が得られるダイアフラム(音圧を受けて振動する薄い膜)を形成することが困難であったことなどから,このような諸要求を満たす高性能なマイクは実現されなかった。
当所では,1998年よりこれまでのシリコンマイクの構造や製作技術の問題点を検討するとともに,そのブレークスルーを目指した研究に取り組んできた。その中で,ダイアフラムなどからなるマイクの心臓部(マイクカプセル)を,引っ張り強度が極めて高い単結晶シリコンで一体構造として製作するという新たな考えを導き出すとともに,これを実現するための独自の半導体微細加工技術を開発した。その結果,超小型で音響特性のみならず,信頼性,量産性などにも優れたコンデンサー型シリコンマイクの試作に世界で初めて成功した 。
本報告では,放送用から民生用までの次世代マイクとして関心が集まっている本シリコンマイクの構造,プロセス技術,主要特性などについて述べる。
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ハイビジョン3次元カメラ:Axi- vision カメラ
河北 真宏 /表示・光デバイス
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