No.164 2017年8月発行

技研公開2017 講演・研究発表 特集号

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はじめに

  • NHK放送技術研究所長 黒田 徹 PDF

  • 技研公開2017より PDF

基調講演

  • 2020年,その先のテレビへの期待
    株式会社インフォシティ 代表取締役 岩浪剛太
    PDF ↓概要

    概要
    2010年のNHK 技研公開で私が行った特別講演においては,インターネットにおけるクラウドの登場,iPhone など新しいネットワークデバイスの胎動などを踏まえ,本格的な「ユーザーの時代」の到来について考察した。その後,世界の移動体通信契約数は世界人口を超え,多くの人々が高性能な超小型コンピューターであるスマートフォンを持ち歩き,常時通信ネットワークでつながっているという時代となった。2017年現在,自身の能力を拡大させたユーザーはまさに時代の主役となり,多くのビジネスはもちろん世界の社会構造にまで変化をもたらそうとしている。ユーザーの能力拡大の原動力となったモバイルネットワークは,2020年に向けて次の段階へ進化しようとしており,世界各国で5G(第5世代)モバイルネットワークの研究開発が始まっている。本格的な5G時代を迎えると,初めてユーザーにとって全くストレスのないネットワーク環境が実現するかもしれない。超高速・大容量化,超多数接続,超低遅延などの要求に応える5Gは,これまでにない多様なデバイスやアプリケーションを生み出していくと考えられる。また,同時にIoT(Internet of Things),人工知能などのデジタルイノベーションも加速度を増し,それらの技術革新を享受した新しいアプリケーションが誕生している。これらの動きが,さまざまなビジネスや産業の在り方にも大きな変革のインパクトを与え,今後,これまでの枠を超えた産業リミックスによる新業態の登場なども期待できる。2020年代には,ビジネスや社会のイノベーションが進展する中で,それらの恩恵を享受するユーザーの「テレビ」に対する期待値も大きく上昇するのではないだろうか。高まるユーザーの期待に応え,進化するデジタルイノベーションを生かした「テレビ」,そしてそれを支える「放送技術」の拡大に大いに期待するところである。
  • VR,AR,UHD+ … 今後50年のテレビの進化は予測できるか?
    EBU(ヨーロッパ放送連合)技術顧問 デビッド・ウッド
    PDF ↓概要

    概要
    時の経過とともに視聴者は,より高画質・高音質で,その人にとって便利なテレビを期待するようになるものである。また同時に,私たちの社会の人口構成も変化している。個人がメディアの消費に充てる時間は増え続けており,今日の若者の中には,労働や睡眠の時間よりもメディアを消費する時間の方が多い人もいる。50年後までに西欧世界の人口の40%が65歳以上となり,巨大なメディア消費者となる。技術革新はこれにどのように適応し,対応することができるだろうか。EBU(European Broadcasting Union:ヨーロッパ放送連合)では,放送事業者が直面する技術革新の課題の中で,最も重要と思われるものを明らかにした。具体的には,UHDTV(Ultrahigh-definition Television),VR(Virtual Reality),AR(Augmented Reality),MR(Mixed Reality),次世代オーディオ,クラウドの利用,5G(第5世代移動通信システム)の将来性,ビッグデータの活用,コンパニオンスクリーン(セカンドスクリーン),ハイブリッド放送,スマートラジオ,インターネットCDN(Content Delivery Network:コンテンツ配信ネットワーク)の改善,ICT(Information and Communication Technology)プログラムの制作と配信,セキュリティー対策の向上などである。これらの重要課題は,私たちの新しいメディアの世界を形作っていくツールである。私たちはそれぞれについて価値判断ができるのか。その答えは歴史が教えてくれる。今日存在するメディアの多くは,ここ数十年間に登場したものである。NHK 技研の元所長でもあった藤尾博士がハイビジョンを最初に考案したのは1964年のことである。NHK技研などから学ぶことで,私たちは今日のシステムが今後のメディア環境に適用できるかどうかを問い,それに従ってこれからの数十年間の技術を予測することができる。これから先のテレビは,ますます映像と音声の没入感が増し,便利になっていくと考えられるが, 基本的なことは変わらない。私たちが技術を使って出来事を伝えたり,人々に笑いや涙,喜び,感動を与えたりといったことは,これからも決して変わらない。願わくは,私たちが最新技術を用いて,これらのことをもっとうまく行えるようになれば良いと考えている。

研究発表

  • テレビ映像における顔認識技術
    河合吉彦 ネットサービス基盤研究部
    PDF ↓概要

    要約
    近年,人工知能(AI:Artificial Intelligence)を活用した映像解析技術や,機械学習,ビッグデータ解析などの技術が大きく進展し,放送やネットサービスへの応用に期待が高まっている。当所では,番組制作の高度な支援やアーカイブス映像の有効活用を目指し,テレビ映像の内容に関するさまざまな情報(メタデータ)を自動付与するための映像解析技術の研究を進めている。本研究発表では,テレビ映像に映る人物が誰であるかを判別するための顔認識技術を紹介する。セキュリティーゲートなどにおける顔認証に比べ,テレビ映像では照明条件や顔の向き,出演者の表情が大きく変動するため,十分な認識精度を得ることが難しいという課題がある。そこで本研究発表では,目鼻や口などの大まかな位置関係を考慮した画像特徴や,細かな領域から求めた画像特徴を段階的に統合していく手法を利用することで,変動の大きいテレビ映像においても高精度に人物を認識できる技術を紹介する。
  • 番組制作システムのIP化に向けた技術開発
    小山智史 伝送システム研究部
    PDF ↓概要

    要約
    IP(Internet Protocol)ネットワークの大容量化や処理速度の向上など,IP技術の性能改善が進み,放送の分野でもIPネットワークを用いて番組制作スタジオを構築するための研究開発や技術標準化が行われている。番組制作スタジオをIP化することで,複数の映像信号や音声信号などを多重し,ケーブル本数や機器数を削減することができる。さらに,リモート制作や機器の共有,自動制御といったこれまでになかった新しい機能の実現が期待できる。当所でも,IP技術の活用により柔軟なシステム構築と効率的な運用が可能となる番組制作スタジオの実現を目指して研究開発を進めている。本研究発表では,IP化により得られるメリットについて整理した上で,当所で開発を進めている技術として,複数のスタジオ間で機器を共有して番組制作機能の柔軟な拡張を実現する「リソースプロバイダー」,IP回線を利用した8K伝送を可能 とする「8K信号IP変換装置」,FPU(Field Pick-up Unit)をIP化して高速ファイル伝送や送り返し・連絡系伝送を可能とする「スマートFPU」について紹介する。
  • 実用的なフルスペック8Kカメラの開発を目指して
    中村友洋 テレビ方式研究部
    PDF ↓概要

    要約
    フルスペック8Kスーパーハイビジョンは,8K映像規格の最上位のパラメーターを持つ映像システムであり,具体的には,RGB(赤・緑・青)ともに3,300万画素のフル解像度,フレーム周波数120Hz,階調12bit,広色域表色系,ハイダイナミックレンジ(HDR:High Dynamic Range)の各条件を満たす。当所では,フレーム周波数120Hzに対応した撮像素子や,今後の8Kカメラの基準となる3板式フルスペック8Kカメラなどを開発してきた。また,カメラの小型化とフルスペック化の両立を目指して,1億3,300万画素撮像素子を用いた単板式ポータブルカメラシステムを開発した。本カメラシステムは多画素の撮像素子により,これまで3板式でしか実現できなかったフル解像度を初めて単板式で実現した。本カメラシステムのフレーム周波数は60Hzであるが,走査線を2ラインごとにスキップして2倍のフレーム周波数で読み出すインターライン走査により,120Hzでの撮影にも対応した。本研究発表では,これまでに開発した8Kカメラの概要と,実用的なフルスペック8Kカメラの実現を目指した今後の研究開発の方向性について説明する。また,1億3,300万画素撮像素子を用いた単板式ポータブルカメラシステムの撮像素子の概要と駆動方法,ライン補間手法,撮像特性の評価結果などについて説明する。
  • スポーツ番組を解説する「音声ガイド」生成技術
    熊野 正 ヒューマンインターフェース研究部
    PDF ↓概要

    要約
    当所では,試合のスコアやゴール・反則などのリアルタイムデータから音声による解説「音声ガイド」を自動生成する技術の研究を進めている。本研究の目標は,2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて,視覚障害者がテレビの中継番組をより楽しむことができるようにすること,またインターネットで配信されるすべての競技映像について,音声による解説を自動制作し提供できるようにすることである。リオデジャネイロ(以下,リオと略称)オリンピック・パラリンピックの期間中には,大規模な音声ガイド自動生成実験を実施した。本研究発表では,音声ガイド自動生成の研究の目的と,解説放送サービスと音声ガイドとの違いを説明した後,リオオリンピック・パラリンピックで実施した検証実験の概要とリアルタイムデータODF(Olympic Data Feed)の特徴について述べ,音声ガイド自動生成を実現する技術を紹介する。最後に,実用化へ向けた技術的課題を挙げ,今後の展望を述べる。
  • 空間認知特性に基づいた自然なインテグラル立体表示技術
    澤畠康仁 立体映像研究部
    PDF ↓概要

    要約
    当所では,次世代の放送サービスを担う新しいメディアとして,インテグラル方式による立体テレビの研究に取り組んでいる。インテグラル方式は,特別なめがねを必要とせず,あたかもその場に物体や空間があるかのような,自然な立体像を表示できる。本方式は,高精細ディスプレーとレンズアレーを組み合わせ,多方向の光線を再現することで立体像を表示する。しかし,実際に再現できる光線の数には限りがあるため,特にディスプレー手前や奥の像がぼやけてしまうことがある。すなわち,奥行きの深いシーンの高画質な表示に課題がある。そこで,現在の放送で見られるような奥行きのある多様なシーンを,インテグラル立体テレビでも高画質で違和感なく立体表示するための研究を進めている。ものの長さや大きさを高精度に測る測定器とは異なり,人は必ずしも実際のものを正確に知覚・認知するわけではない。本研究発表 では,人の空間認知特性を概説するとともに,その特性に基づきインテグラル立体テレビで再現できる奥行きの範囲を仮想的に拡大することで,奥行きのあるシーンを自然かつ高品質に表示できることを紹介する。
  • 高色純度緑色有機ELデバイスの研究開発
    深川弘彦 新機能デバイス研究部
    PDF ↓概要

    要約
    スーパーハイビジョン映像システムでは,現行放送では表現できない,より鮮やかな色も忠実に再現できる広色域表色系が採用されており,この広色域の表示に適したディスプレーの実現が求められている。有機EL(Electroluminescence)ディスプレーは,優れた応答速度と高いコントラスト比が特徴であるが,発光波長の広がりが大きいため色純度が十分ではなく,特に緑色有機ELデバイスの高色純度化が課題となっていた。本研究発表では,デバイス内に用いる有機材料を抜本的に見直すことで,現行の有機ELデバイスに比べ発光波長の広がりを大幅に低減し,加えて理論上の上限に近い発光効率を実現できたことを紹介する。さらに,光学シミュレーションの結果を基にデバイス構造を工夫し,デバイス内の電極間における光の干渉を利用することで,高色純度化を妨げる発光成分を抑制でき,有機ELデバイスとしては極めて色純度の高い緑色発光が得られたことを紹介する。

シンポジウム

  • AIで広がる公共放送の可能性
    ネット時代の視聴者が求める“テレビ”とは
    フルスペック8Kスーパーハイビジョンの魅力を探る
    PDF

研究所の動き

  • 8Kスーパーハイビジョン映像の長期保存を目指したホログラムメモリー技術 PDF

論文紹介

  • 論文紹介 PDF

発明と考案

  • 2017年3月〜2017年4月 PDF

研究会・年次大会等発表一覧

  • 2017年2月~ 2017年4月 PDF