No.154 2015年11月発行

視覚障害者向けバリアフリー放送技術 特集号

※PDFで公開しています。

巻頭言

  • テンデルとコエーデル
    東京女子大学 教授 小田浩一
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解説

  • 視覚障害者向け情報提示技術の概要と放送への応用
    近藤悟
    PDF ↓概要

    概要
    日本でテレビ放送が始まってから60年以上が経過した現在,デジタル放送によって,映像や音声だけでなくさまざまなデータも提供されるようになった。インターネットやスマートフォンなど,個人が情報を取得・発信できる技術も普及し,流通する情報の内容は各個人のニーズに合わせて多様化している。それらの技術により,多くの人々の生活はより豊かに,便利に,安全になったと言えるが,これらの情報の主流は,今でも,人の視覚に対して提示される映像情報である。映像情報は,一覧性に優れており,時間とともに変化する情報の表現にも向いているとされるが,視覚に障害のある人にとっては障壁が高い。映像情報を,視覚に障害のある人にいかに伝えるか。少しずつではあるが,そのバリアを下げる技術が研究され,提供されてきている。本特集号では,視覚障害者向けの情報提示技術として,現在研究を進めている高速話速変換技術や触覚ディスプレーなどについて紹介する。その前段として本稿では,これまでにテレビ放送の世界で実現してきた視覚障害者にとってのバリアフリー放送技術について概観するとともに,現在研究を進めている「人間の触覚に対して立体物の形状や硬さを伝える技術」にも触れる。
  • 視覚障害者向けバリアフリー音声提示技術の研究動向
    今井篤 / 都木徹(NHK エンジニアリングシステム)
    PDF ↓概要

    概要
    本稿では,放送メディアにおける視覚障害者向けの音声提示技術の研究動向を解説するとともに,これまでにNHKが取り組んできた「人にやさしい放送技術」のうちの視覚障害者支援技術として,適応的話速変換技術の開発と,その実用化に向けた具体的な取り組みについて紹介する。

報告

  • 韻律に寄与する音響特徴量を用いて高速再生音声の聞き取りやすさを改善する話速変換技術
    今井篤 / 清山信正 / 都木徹(NHK エンジニアリングシステム)
    PDF ↓概要

    概要
    近年,マルチメディアコンテンツの楽しみ方が多様化している。また,障害者や高齢者のニーズを動機として,放送字幕のように音声が文字化されたり,本や雑誌が音声化されてオーディオブックになるなど,全ての人に対するメディアアクセスの利便性が向上している。しかし,音声は時系列情報であるため,内容の一覧性に乏しく,斜め読みのような欲しい情報への効率的なアクセスが難しいという課題があった。そこで本稿では,斜め読みの代替手段として,音声を高速に再生した場合でも発話内容が聞き取りやすい話速変換方式を提案する。一般に発話速度(話速)に関する人の聴取能力の上限は3倍速程度とされているが,韻律に基づく緩急を与えることにより,同じ3倍速の再生時間でありながら,内容の聞き取りやすさが大幅に改善することを確認したので報告する。
  • 視覚障害者向け触覚ディスプレーによる振動提示技術と力覚誘導提示技術
    清水俊宏 / 坂井忠裕(NHK エンジニアリングシステム) / 半田拓也
    PDF ↓概要

    概要
    視覚に障害のある人に図形やグラフなどの情報を音声のみで理解してもらうことは非常に難しく,伝える場合に時間も要する。このような2次元空間に配置された情報を手や指の触覚に対して提示するための装置として,触覚ディスプレーが開発されている。本稿では,触覚ディスプレー上に表示されている図形ごとに振動周波数を変え,それを触ったユーザーが振動周波数の違いを手がかりにして図形を区別する振動提示技術について報告し,データ放送の地震・津波情報への応用例を紹介する。また,視覚障害者教育では,しばしば晴眼者である介助者が視覚障害者の手や指を誘導して,触図として表示されている図形の輪郭やグラフの線をなぞらせることがある。この手法により,重なり合って表示されている個々の図形や交差している複数のグラフの特定の形状を理解させることができる。当所では,視覚障害者の手や指を図形の輪郭やグラフの線の上に機械が誘導してなぞらせることで,介助者の誘導と同様の効果が得られる力覚誘導提示技術を開発した。評価実験によってその有効性を確認したので,併せて報告する。
  • 触覚に対する物体の形状と硬さの表現技術
    半田拓也 / 清水俊宏 / 坂井忠裕(NHK エンジニアリングシステム)
    PDF ↓概要

    概要
    美術品の造形のような視覚的な情報を,視覚に障害がある人に言葉で表現して伝えることは難しい。また,物体の硬さや材質感など,映像での表現が難しい情報をテレビで伝えるときは,その物体を触った人が主観的に感じ取った印象を言葉で表現している。そこで,これらの情報を人の触覚へ直接提示することができれば,言葉を介するよりも正確に視覚に障害がある人に形状を伝えることができるだけでなく,多くの視聴者に硬さや材質感などの新たな情報を,より忠実に伝えることができる。本稿では,物体の3次元形状と硬さを非接触で計測する装置と,物体に触ったときに皮膚に伝わる力の分布刺激を指先に提示する装置の開発,ならびに,物体の形状と硬さを遠隔地に伝達するシステムへの応用について報告する。本システムを用いて実物体の形状と硬さを計測して提示し,2014年のNHK技研公開で多くの来場者に体験していただいたところ,「理解できる程度に形状と硬さが表現されている」という感想が得られた。

研究所の動き

  • レンズ不要なインテグラル立体テレビの実現に向けた光偏向型表示素子 PDF ↓概要

    概要
    当所では,将来の放送サービスの実現に向けて,インテグラル立体テレビの研究開発を進めている。インテグラル立体は,特殊なメガネをかけずに,見る位置に応じた自然な立体像を楽しむことができるという特徴がある。
  • 22.2マルチチャンネル音響ラウドネスメーターの開発 PDF ↓概要

    概要
    現行のデジタル放送では,番組間の音量の差を無くすために,番組ごとのラウドネスレベル(主観的な音の大きさに対応した客観的な推定値)をそろえている。NHKは,8Kスーパーハイビジョン放送においても,番組ごとのラウドネスレベルを測定する技術の開発を進めている。今回,5.1chサラウンドまで対応する既存のラウドネス測定法(ITU-R*1勧告BS.1770-3)を22.2マルチチャンネル音響(以下,22.2ch音響)用に拡張し,その妥当性を検証するとともに,勧告の改訂に寄与した。

発明と考案

  • 2015年7月~ 2015年8月 PDF

論文紹介

  • 論文紹介 PDF

  • 研究会・年次大会等発表一覧 PDF