No.142 2013年11月発行

ITを活用した 放送の高度化 特集号

※PDFで公開しています。

巻頭言

  • インターネットとテレビ
    亀山渉 早稲田大学理工学術院教授
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    概要
    懐古趣味ではないが,昔の話から始めさせていただく。今から約25年前,大学で助手を務めていた頃,大学構内にIP(Internet Protocol)ネットワークを構築する手伝いをした。それまで,いくつかの通信・コンピューター系の研究室では部分的にイーサネットが導入されていたが,どれも個別での運用であった。そこで,これらの研究室内のネットワークと計算機センターの各種の大型コンピューターをつなぐ構内LAN(Local Area Network)を構築し,研究用のネットワークを整備するのが目的であった。イエローケーブルとも呼ばれた10Base5の太い同軸ケーブルを理工学部構内のいくつかの建物に引き回す作業は業者が行ったが,各研究室のワークステーションをトランシーバーを介して同軸ケーブルに接続し,それらのワークステーションに各種のネットワーク設定を施し,ネットワークの運用と管理体制を構築する作業は助手が担当した。余談であるが,当時のトランシーバーはバンパイアとも呼ばれ,細かな歯がついた金属の口とその口の中心にあるピンによって同軸ケーブルにコンタクトする仕組みであった。ピンを折らず,また,ショートさせずに同軸ケーブルに接続するにはコツが必要で,私はなぜかその作業が大変上手であったので,各研究室のトランシーバーの接続を一手に引き受けたことを記憶している。

解説

  • 放送通信融合の現在と今後に向けた研究の取り組み
    山本真
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    概要
    NHKのこれまでの放送通信融合への取り組みからハイブリッドキャストに至るまでの流れを振り返るとともに,放送通信連携サービスの基盤としてのハイブリッドキャストの位置づけと特徴について述べる。更に,今後の放送通信連携サービスの進展に向けて当所で取り組んでいる研究トピックについて紹介する。
  • ハイブリッドキャストの技術仕様とその最新動向
    武智秀
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    概要
    NHKは,最新ニュース,気象情報,スポーツ,経済情報などをハイブリッドキャスト対応テレビに向けて提供するハイブリッドキャストのサービスを2013年9月から開始した。双方向番組や,オンデマンドで映像を提供するサービスなども順次開始することを検討している。ハイブリッドキャストはHTML5(HyperText Markup Language 5)を使って放送と通信を連携させたシステムであり,多様なサービスが可能な方式である。本稿ではハイブリッドキャストの技術方式の概要および今後の拡張技術の動向について述べる。
  • ハイブリッドキャストアプリ制作・配信システムの開発
    真島恵吾/松村欣司/広中悠樹
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    概要
    放送通信連携サービスの実現と更なる高度化を目指した研究開発を進めている。2013年9月2日にサービスがスタートしたハイブリッドキャストでは,放送番組を視聴しながら,インターネットから取得する放送連動型のWebアプリケーションをテレビで利用することが可能になる。今後,放送事業者以外のサードパーティーからも多くのアプリケーションが提供されることが期待されており,このようなアプリケーションの普及を促進するための基盤技術の整備が求められている。本稿では,放送通信連携サービスの本格的な普及に向けて,当所で開発したハイブリッドキャストアプリ制作・配信システムについて解説する。

報告

  • 視聴者の行動に基づくソーシャルテレビサービスの設計
    有安香子/澤井理枝/中川俊夫
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    概要
    放送番組に関する話題を介した視聴者同士のコミュニケーションを活性化させ,新しい番組に出会うきっかけを提供することを目的としたソーシャルテレビの研究を進めている。インターネットを使い,好きな番組を好きなときに視聴できる番組視聴サービスと,ユーザー間でコミュニケーションのできるサービスを融合したソーシャルテレビシステムteledaを構築し,ユーザーの行動データを解析するために実証実験を行った。これまでに,実験で得られた参加者の行動を解析し,参加者同士のコミュニケーションが,番組の視聴の促進に効果的だという結果を得た。その一方で,コミュニケーションを積極的に取る参加者ほど,システム内で提供される多くの機能の利用頻度(アクティビティー)が高いため,解析結果はアクティビティーの高い参加者の行動に強く影響を受け,アクティビティーの低い参加者の行動が埋没してしまうことも分かった。本稿では,アクティビティーの低い参加者の行動を考慮するために,行動データを参加者単位で詳細に解析した。teledaに実装した検索機能や番組推薦機能の利用パターンの解析結果から,他者の行動に興味を持つユーザーは自らもコミュニケーションを取ることに積極的で,個人向けにカスタマイズされた機能を好むユーザーはコミュニケーションを取ることに消極的であるという結果を得た。併せて,この解析結果を基にしたソーシャルサイトのデザインに関して考察する。
  • ボトルネックを回避可能な並列分散処理手法
    黄珉錫/金子豊/竹内真也/苗村昌秀
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    概要
    並列分散処理システムにおいて,システムを構成する各サーバーに性能差や負荷変動があると,一部の処理フローがボトルネックとなり,全体の処理性能を低下させることがある。本稿では,映像のトランスコーディングなどの処理を対象に,このボトルネックを回避することで,処理時間を保証することのできる並列分散処理手法を提案する。具体的には,並列化した各処理フローのデータ転送に,転送速度の調整が可能なプル型ファイル転送プロトコル(FMFTP)を用い,各プロセスの負荷状況をFMFTPのデータ転送用のキューの状態から推定する。そして,各プロセスの負荷状況に応じて,各処理フローの転送量を制御することで,ボトルネックの発生を抑制する。提案手法を用いることで,各処理フローの転送量を均等とする標準的な手法に比較して,処理速度を向上させることが可能なことを実験で確認した。
  • 映像からのオブジェクト識別技術
    河合吉彦/藤井真人
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    概要
    映像に映るオブジェクトを画像解析に基づいて識別する技術を提案する。提案手法では,フレーム画像をさまざまなサイズの領域に分割し,領域ごとに特徴量を算出することによって,オブジェクトの出現位置や撮影サイズの変動に対して頑健な識別ができるようにする。また,半教師付き学習によって,誤りの少ない学習データを効率的に生成する手法を提案する。オブジェクトの識別に利用する画像特徴については,従来の局所領域における輝度の勾配特徴に加え,より大域的な領域における色特徴やテクスチャー特徴も考慮することで識別精度の向上を図る。映像データセットを用いた比較実験により,提案手法の有効性を確認する。

研究所の動き

  • スーパーハイビジョン単板カメラ PDF ↓概要

    概要
    機動的なスーパーハイビジョン(以下,SHV)の番組制作を実現するために,小型SHVカメラの研究開発を進めている。今回,色分解プリズムが不要で,1枚の撮像素子でカラー映像を撮影できる「単板カラー撮像方式」(以下,単板式)による小型SHVカメラシステムを開発した。
  • 有機撮像デバイスにおける光電変換膜の近接配置技術 PDF ↓概要

    概要
    一般的なカメラは,プリズムもしくは,カラーフィルターを用いて,入射光を青,緑,赤の3色(光の3原色)に分解することで,カラーの映像信号を生成している。しかし,プリズムを用いると,カメラを小さくすることができない。また,カラーフィルターを用いると,カメラを小さくすることはできるが,解像度などの画質が劣化するという問題があり,カメラの小型化と高画質化の両立は困難であった。当所では,この問題を解決するために,光の3原色のうち1色の光だけを吸収して電荷に変換し,その他の色の光は透過する3種類(青用,緑用,赤用)の有機光電変換膜(有機膜)と,各有機膜で生成された電荷を読み出す透明な回路とを交互に積層した有機撮像デバイスの開発を進めている。このデバイスを用いることで,プリズムやカラーフィルターが不要になり,小型で高画質なカラーカメラを実現することができる。

発明と考案

  • 2013年7月~8月 PDF

論文紹介

  • 論文紹介 PDF

  • 学会発表論文一覧 PDF

  • 究会・年次大会等発表一覧 PDF