No.138 2013年3月発行

ホログラフィー基盤技術 特集号

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巻頭言

  • ホログラフィー技術への期待
    川田善正 静岡大学工学部教授
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    概要
     ホログラフィーという言葉は物体を立体的に表示できる方法として多くの方に知られていることと思う。美術館 や展示会などで目にする,人や昆虫,花などが立体に表示される写真のようなものである。身近なところでは,紙 幣の複製防止技術としても使用されているし,クレジットカードのセキュリティーとしても活用されている。 ホログラフィーは1948年に英国のデニス・ガボールによって発明された。通常の写真では,光の強度,色の情報 が写真フィルムに記録されるが,ホログラフィーでは,それらの他に光の位相情報を記録することができる。つま り,光の情報を「全て」記録することが可能である。ギリシャ語の「holos」が「全て」を意味することからホログ ラフィーと呼ばれている。デニス・ガボールは,この研究業績によって,1971年にノーベル物理学賞を受賞してい る。

解説

  • ホログラフィー技術の放送への応用
    清水直樹
    PDF ↓概要

    概要
    NHKでは次世代の高臨場感放送の実現を目指して,スーパーハイビジョン(SHV: Super Hi-Vision)や立体テレビなどの研究開発を進めている。SHVや立体テレビでは 膨大な量の高速信号データを扱うので,大容量で高速な記録装置が求められている。そ のため,当所では,ホログラフィー技術を利用したホログラム記録の研究開発に取り組 かんしょうじまんでいる。ホログラムでは光の干渉縞を記録するので,大容量化と高速化を両立するこ とができる。一方,ホログラフィー技術を利用した立体映像表示用デバイスの研究開発 も進めている。電子ホログラフィー表示用デバイスでは自然な立体動画を表示すること が可能である。ホログラフィーの視域は広く,複数人で同時に立体動画を視聴すること ができる。具体的には,実用的な視域として30°以上を目指して,画素ピッチが1μm 以下の高精細な空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)の研究開発を行ってい る。本稿では,超大容量記録技術と立体表示用デバイス技術の概要を外部動向を踏まえ て解説する。
  • ホログラフィー基盤技術の研究概要
    菊池宏
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    概要
    次世代メディアの高臨場感放送であるスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision) では,映像を長期間にわたって記録保存するためのデジタルアーカイブが必要である。 更に,スーパーハイビジョンより先のメディアとして,自然で見やすい立体像を表示す ることのできる空間像再生型の立体テレビの研究には,超高密度の表示デバイスの開発 が強く望まれている。当所では,これらの次世代メディアを実現するために,ホログラ フィー技術を基盤とした2つの研究テーマに取り組んでいる。スーパーハイビジョン用 のアーカイブに利用するための大容量・高速のホログラム・メモリーの研究とホログラ フィー立体表示用デバイスである超高密度構造の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)の研究である。本稿では,まず,ホログラフィー技術の特徴を述べ,次に, ホログラム・メモリーと空間光変調器の研究状況を概説する。 1.

報告

  • ホログラム・メモリーの記録密度の向上技術
    木下延博/室井哲彦/石井紀彦/上條晃司/菊池宏/清水直樹
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    概要
    ホログラム・メモリーはデジタル情報を2次元配列に変換した画像(ページデータ)をホログラ ムとして記録する。ホログラムは同じ場所に多重記録できるので,高密度化が可能である。本稿 では,まず,光の入射角度を変えて多重記録する角度多重方式においては,入射角度によって隣 接する2つのホログラムの角度間隔を変える必要があること,一定の角度間隔で全てのホログラ ムを多重した場合には多重数が制限されることを示す。次に,入射角度に対応して角度間隔を制 御する手法について述べ,角度多重数300においても誤り訂正が十分可能な10~4台以下のビッ ト誤り率が得られることを示す。
  • ホログラム・メモリーにおける波面補償技術
    室井哲彦/木下延博/石井紀彦/上條晃司/菊池宏/清水直樹
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    概要
    ホログラム・メモリーでは,データの記録時に照射した光の光重合反応や記録時と再生時の周辺 ひず温度の違いによって記録媒体が収縮または膨張するので,記録されたホログラムに歪みが生じ る。歪みの有るホログラムは記録時と同じ参照光を用いてもデータを忠実に再生することができ ず,誤りが多くなる。この対策として,ホログラムの歪みを光学的に補償し,再生データの誤り を低減する波面補償技術を考案した。本稿では,遺伝的アルゴリズムを用いて参照光の波面の空 間的な位相を制御することで,再生データの誤り率を低減できることを示す。更に,角度多重し たホログラムにおいて,任意の1ページの最適な波面は隣接するページの再生データの誤り率も 低減でき,複数のページを高速に補償できる可能性を見いだした。
  • 巨大磁気抵抗効果を持つ磁性多層膜を 用いたスピン注入型空間光変調器の研究 ~広視域の立体像表示を目指して~
    青島賢一/久我淳/町田賢司/菊池宏/清水直樹
    PDF ↓概要

    概要
    ホログラフィーの立体表示用デバイスとして,画素ピッチ1μm以下の高精細なスピン注入型空 間光変調器(スピンSLM:Spin-Spatial Light Modulator)の研究を進めている。これまでに, 巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magnetoresistance)素子を画素に用いたスピンSLMを開発 しているが,表示用デバイスとして使用するためには光変調度の向上と駆動電流の低減が大きな 課題である。今回,この課題を解決する手段として,光変調層であるガドリニウム鉄(Gd-Fe) 垂直磁化膜の組成制御と中間層にAgを使用することを検討した。その結果,GMR素子の磁気光 学カー効果を増大することができ,光変調度の向上と駆動電流の約1桁の低減に成功した。
  • トンネル磁気抵抗効果を用いた スピン注入型空間光変調器の研究 ~低消費電力の立体テレビを目指して~
    町田賢司/青島賢一/久我淳/菊池宏/清水直樹
    PDF ↓概要

    概要
    ホログラフィーを用いた立体テレビへの応用を目指して,電子のトンネル効果を利用したトンネ ル磁気抵抗効果(TMR:Tunnel Magnetoresistance)素子の研究開発を進めている。低電流で 駆動できるTMR素子を画素とするスピン注入型空間光変調器(スピンSLM:Spin - Spatial Light Modulator)を開発することで,立体テレビの低消費電力化が可能となる。Co/MgO/Co およびCo-Fe-B/MgO/Co-Fe-Bの2種類の磁気トンネル接合膜を適用した垂直磁化TMR素子 をそれぞれ作製し,素子の電気特性と磁気特性を評価した。低電流でTMR素子を駆動するために はMgO中間層の結晶配向性を制御してTMR比を大きくする必要がある。X線回折でMgOの結晶 配向性を測定した結果,Co/MgO/Co接合膜ではMgO(111)面の回折ピークが観測され,スピ ン注入効率の増大に有効なMgO(001)面の回折ピークは検出されなかった。一方,Co-Fe- B/MgO/Co-Fe-B接合膜では,MgO(001)面に平行なMgO(002)面の回折ピークが観測さ れ,間接的にMgO(001)面が形成されていることが確認できた。

研究所の動き

  • ホログラム・メモリーの並列信号処理技術 ~高速・大容量な記録装置を目指して~ PDF ↓概要

    概要
    スーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)は映像信号の情報量が膨大で,その記録装置には高いデータ転 送速度と超大容量が求められている。SHVアーカイブ用の記録装置の実現を目指して,ホログラフィー技術を利用 したホログラム・メモリーの研究を進めている。
  • Hybridcast(R)のためのアプリケーション認証技術 PDF ↓概要

    概要
    放送番組と通信経由(インターネット)で取得したコンテンツを連携させることで,これまでにない魅力的なサー ビスを視聴者に提供することのできるHybridcast(R)*1の開発に取り組んでいる。Hybridcastで通信からのコンテンツ を安全に安心して利用できるようにするためには,不正なアプリケーションの実行を防ぐ仕組みが必要である。そこ で,電子署名を用いたアプリケーション認証技術を開発した。

発明と考案

  • 2012年 11月~12月 PDF

論文紹介

  • 論文紹介 PDF

  • 研究会・年次大会等発表一覧 PDF