No.136 2012年11月発行

次世代地上放送に向けた伝送技術 特集号

※PDFで公開しています。

巻頭言

  • 無線伝送技術の理解に向けての努力
    髙畑文雄 早稲田大学理工学術院教授
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    概要
     本特集号に目を通される方々の多くは,地上テレビ放送の伝送技術に程度の差はあれ精通されていると判断される。しかし,その内容はあまりにも高度で最新のものであり,正確に理解するためには,相当な知識が必要である。私の研究室に所属する学生は,主に無線通信における物理層に関する研究を進め,研究成果を修士論文や卒業論文の形でまとめることになっている。研究室の学生を観察していると,研究室に配属される学部4年当時には,修士の大学院生が発表する内容はチンプンカンプンで,難しい外国語を聞いている心境であるように思われる。1つには,十数年前からの無線通信の急速な発展により,新たに生まれた多くの難解な技術用語が日常的に使用されるようになったことが挙げられる。研究室において,そのような専門用語を何回となく耳にし,さまざまな発表に興味を持ち,自分で調査するようになると,おのずから知識が増える。その結果,3年間の研究室生活を終え,修士課程を修了するころには,無線の専門家のような顔をするようになる。確かに,いくつかの修士論文には立派な内容が記載され,努力の跡がうかがえる。論文の性格上,特定の目的に焦点を絞るため,狭いトピックに関する知識は深いが,本当に無線通信技術の本質を理解しているかは別問題である。例えば,この特集号の内容をどの程度理解できるかは甚だ疑問である。

解説

  • 次世代地上放送に向けた研究動向
    伊藤泰宏
    PDF ↓概要

    概要
    地上テレビジョン放送の完全デジタル化は,テレビジョン放送における格段の高品質化・ 高機能化をもたらすとともに,公共の資源としての電波の有効利用を促進した。アナログ 放送からデジタル放送へ周波数を再編した結果,アナログ放送で使用していた62チャンネ ル分に相当する370MHzの周波数帯域幅が,デジタル放送では40チャンネル分に相当する 240MHzの周波数帯域幅に圧縮された。その結果,22チャンネル分に相当する130MHz の周波数帯域幅がマルチメディア放送や次世代携帯電話など,新たな無線システムに割 り当てられることになった。当所では,電波の更なる高度な有効利用を目指して次世代地 上デジタル放送の研究開発に取り組んでいる。本稿では,次世代地上デジタル放送用の 大容量伝送技術と高効率な移動・携帯端末用の伝送技術を,外部動向を踏まえて解説する。
  • 次世代地上放送に向けた大容量伝送方式
    村山研一
    PDF ↓概要

    概要
    当所では,次世代の地上デジタル放送でスーパーハイビジョン(SHV:Super Hi- Vision)などの大容量コンテンツのサービスを実現するために,UHF帯の地上波を使っ た大容量伝送技術の研究開発に取り組んでいる。本稿では,偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output:マルチ入力・マルチ出力)~超多値OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)を基本とする固定受信用の伝送技術の基 本構成と次世代地上放送方式の研究に関するこれまでの取り組みと今後の課題を解説す る。

報告

  • 偏波間伝送路特性差による特性劣化の改善策
    朝倉慎悟
    PDF ↓概要

    概要
    偏波MIMO伝送では偏波間の伝搬路特性の違いによって平均ビット誤り率(BER:Bit Error Rate)特性が劣化することが,これまでの計算機シミュレーションや実験で確認されている。そ こで,従来の時間インターリーブと周波数インターリーブの他に,偏波間インターリーブを追加 して行う多次元インターリーブを新たに考案し,その改善効果を計算機シミュレーションを行っ て検証したので報告する。
  • マルチパス環境における偏波MIMO~超多値OFDMの伝送特性
    蔀拓也
    PDF ↓概要

    概要
    OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)信号はマルチパ ス妨害に対して優れた耐性を持つので,地上デジタル放送ではSISO(Single-Input Single- Output:シングル入力・シングル出力)のOFDMが用いられている。しかし,OFDMには希望 波と妨害波の受信電力の比,すなわち,DU比(Desired to Undesired Signal Ratio)が0dB に近づくと,伝送特性が急激に劣化するという性質がある。そのため,地上デジタル放送の SISOには,さまざまな対策が考案されている。一方,当所では,次世代地上放送の伝送方式と して,偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output:マルチ入力・マルチ出力)~超多値 OFDMの検討を進めている。そこで,マルチパス環境における偏波MIMO~超多値OFDMの伝 送特性を評価するとともに,DU比の小さいマルチパス環境における伝送特性の劣化を軽減する 方法を考案し,計算機シミュレーションを行ってその有効性を検証した。
  • スーパーハイビジョンの地上波伝送実験
    田口誠
    PDF ↓概要

    概要
    当所では,スーパーハイビジョン(SHV:Super Hi-Vision)などの大容量コンテンツのサービ スを地上波で実現するために,大容量伝送技術の研究開発を進めている。これまでに,現行の地 上デジタル放送の伝送方式であるISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting- Terrestrial)を基本として,偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output:マルチ入力・マル チ出力)技術と超多値OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割 多重)技術を適用した新たな伝送方式を検討してきた。本稿では,まず,誤り訂正符号にLDPC (Low Density Parity Check:低密度パリティー検査)符号とBCH(Bose-Chaudhuri- Hocquenghem)符号を適用した試作変復調器を用いて,当所の周辺の市街地で実施した野外伝 送実験の結果を報告する。次に,UHF帯の2つのチャンネルを同時に用いるバルク伝送技術を 組み合わせて伝送容量を更に拡大し,圧縮・符号化したスーパーハイビジョン信号を地上波で伝 送した野外実験の結果を報告する。
  • 時空間符号化を用いた移動受信用のMIMO-OFDM伝送技術
    成清善一/高田政幸
    PDF ↓概要

    概要
    次世代の地上デジタル放送の伝送方式の開発においては,現行のISDB-Tと同様に移動受信用と 固定受信用の階層伝送が可能で,移動受信用でハイビジョン放送ができるシステムを目指してい る。そのために,複数の送受信アンテナを用いるMIMO(Multiple-Input Multiple-Output:マ ルチ入力・マルチ出力)~OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数 分割多重)伝送方式の検討を行っている。MIMO伝送方式においては,各送信アンテナから各受 信アンテナまでの伝搬路特性を個別に推定する必要がある。今回,直交化SP(Scattered Pilot) 信号を用いて伝搬路特性を個別に推定する場合の移動受信特性を,計算機シミュレーションを 行って検討したので報告する。送信アンテナ2本,受信アンテナ2本の2×2MIMO-OFDM の所要CN比は送信アンテナ2本,受信アンテナ1本の2×1MISO(Multiple-Input Single- Output:マルチ入力・シングル出力)~OFDMの所要CN比より4dB改善されること,畳み込 み符号の代わりにターボ符号を用いると更に3dB改善されることなどが確認できた。

研究所の動き

  • スーパーハイビジョンのケーブルテレビ伝送技術 PDF ↓概要

    概要
    スーパーハイビジョンをケーブルテレビで家庭に届けるための研究を進めている。 スーパーハイビジョンはハイビジョンの16倍の画素数を持つ大容量のコンテンツで, ケーブルテレビの1チャンネルでは伝送することができない。そこで,スーパーハイビジョンの信号を複数のチャンネルに分割して, ケーブルテレビの既存の伝送方式を使って伝送することにした。
  • 大震災アーカイブス ~メタデータ補完の取り組み~ PDF ↓概要

    概要
    2011年の東日本大震災では,当初の約1か月間で20,000時間を超える映像が撮影された。 このときの映像を整理し蓄積して,放送やインターネットを通して公開し防災や減災に役立てることは, NHKに課せられた使命であり,2012~2014年度NHK経営計画の4つの課題の1つでもある。 しかし,膨大な映像のどこに何が映っているのかといった内容を全て人手でデータ化していたのでは, コストと時間が大きくかかる。そこで,当所で既に開発していた,映像や音声の解析技術と映像内容の記述情報である メタデータを効率的に作るための仕組みを応用して,人手による作業をできるだけ削減するメタデータ補完システムを開発した。

発明と考案

  • 2012年 7月~8月 PDF

論文紹介

  • 論文紹介 PDF

  • 研究会・年次大会等発表一覧 PDF